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意識? 五十嵐目線  

子供の風邪が悪化しました。


 この正月休み、ほぼ毎日花さんと会っていた。

 花さんは話していて楽しい。

 花さんの家で二人でテレビを見ていて沈黙になっても普通で、会話を強要されない。

 お酒の話をしている時のキラキラした目を見ていると凄く癒される。

 あの、キラキラの瞳で見つめられると彼女のフワフワの髪の毛を撫で回してしまいたくなる。

 やったら怒られそうだからやったことはない。

 花さんは例えるならティーカッププードルみたいだ。

 家の中で幸せそうな笑顔を向けてくる姿は可愛くて餌付けしたくなる。

 もっともっとなつけば良いのに、とか思ってしまう。





「で?お前はあのリスザル女子大生と付き合ってんのか?」


 仕事始め。

 仕事を順調にこなし終えた昼休み。

 志村が俺の前に立ちはだかった。

 

「付き合ってない」


 俺は食堂に向かって志村の横をすり抜けた。


「じゃあ、食事会させろよ」

「絶対嫌だ」


 俺は食堂に向かって歩くスピードをあげた。


「俺はあんな可愛い女子大生とこれから知り合う機会なんて一生無いと思うわけだ!月斗聞いてる?」

「聞かない」


 食堂についた俺は食堂のおばちゃんにA定食をたのんだ。


「女子大生!女子大生!」

「煩い」

「女子大生独り占めとかずるいぞ!」

「独り占めとかじゃない」


 独り占め出来るならしてみたい気はするけど…………

 俺は動揺しないように眼鏡を人差し指で押し上げた。


「あんな可愛い女子大生と仲良くなったら、すぐにでも押し倒したくなるのが男ってもんだろ!」

「お前なんか絶対会わせない」

「あのフワフワの髪の毛に指を滑らせながら組敷きたくなるだろ!」

「警察呼ぶぞお前」


 ハイよって良いながら俺のA定食と志村のB定食をおばちゃんが手渡してくれる。


「志村君、五十嵐君を困らせちゃ駄目よ!」

「違うよおばちゃん!月斗が隣に住んでる女子大生を俺に会わせないって意地悪言うんだよ!」

「おやおや、五十嵐君ケチケチしないの!」


 志村は食堂のおばちゃんと仲よ過ぎて困る。


「女子大生を守るためなのでケチとかじゃないです。おばちゃんもコイツに諦めるように言ってやって下さい!」

「おや、五十嵐君が守りたいぐらい大事な()なのかい?志村君諦めなよ!」

「おばちゃんは俺の味方じゃないの?」

「おばちゃんはイケメンの味方だよ!」


 志村は暫く黙ると叫んだ。


「俺の顔が月斗に劣るってことかよ~」

「志村君諦めな」


 おばちゃんが豪快に笑ってくれて、俺はおばちゃんに頭を軽く下げると空いている席に座った。


「イケメンって羨ましいわ!ムカつく~」

「俺は志村ぐらい誰とでも仲良くなれる方が羨ましいがな」


 志村はおばちゃんにオマケにもらったプリンを先に食べ始めた。

 それ、デザートじゃないのか?

 

「でも、月斗が女に優しいのも珍しいだろ?惚れてんの?」


 志村は真面目な顔を作るといった。

 惚れてる?

 惚れてるかは、よく解らないが特別ではある。


「とられたくないんだろ?」


 とられたくは無い。

 彼女と一緒の時間は俺の癒しだ。

 

「触りたいだろ?」


 髪の毛は………


「人を変態みたいに言うな」

「馬鹿!男なら触りたくなるの普通だろ!健全な男なら普通だ!」


 俺はとりあえず、志村を無視して定食を食べ続けた。

 




 仕事終わり、凄く花さんに会いたくなった。

 チーズか何かつまみを買って、ワインなんか良いかもしれない。

 日本酒や焼酎ばっかりの正月だったし、洋風の酒も喜んでくれると思う。

 俺はデパ地下でチーズの盛り合わせと赤と白のワインを買って家に帰った。

 風呂に入ってゆっくりしてから、花さんの家に向かった。

 呼び鈴を鳴らして暫く待つと、花さんがドアを開けてくれた。


「ツッキーさん、おかえりなさい」

「ただいま」


 花さんはニコニコしながら俺を部屋にあげてくれた。

 花さんも風呂あがりみたいで、良い匂いがする。

 ………

 不意に志村の言葉が頭に浮かんだ。


『触りたいだろ?』


 洗い立てのフワフワの髪の毛。

 素っぴんの顔。

 けして細いわけじゃないけど柔らかそうな足。

 そして………

 流れで見てしまった花さんの胸。

 あれ?ノーブラかな?

 凝視してしまうのをさけるためにお土産に持ってきたワインとチーズを花さんに渡した。


「ワイン!嬉しいです!」


 キラキラの瞳。

 ピョンピョン跳ねて喜ぶ花さん。

 やっぱりノーブラ?

 今まで意識してこなかったけど、花さん無防備すぎじゃないか?

 俺以外の男にでもそんなに無防備なのか?

 それとも、俺に意識して欲しくて?

 

「ワイン飲みましょう!チーズもいっぱい!幸せ~!」


 幸せそうに笑う花さんが俺に意識して欲しいなんて思っているようには見えない。

 たぶん、俺は意識されてないんだ。

 男だと思われてないんだ。

 その時、花さんがこたつのコードに引っ掛かった。

 転びそうになる花さんに手をのばした。

 思わず背後から抱き締めてしまった。

 しかも、なんという事でしょう。

 俺にラッキースケベの神様が訪れるなんて………

 腕の中の花さん。

 俺の手は彼女の胸を掴んでしまっている。

 ヤバイ。

 超柔らかい。

 やっぱりノーブラ。

 何事もなかったように、花さんを立たせ苦笑いを浮かべた。

 内心ご馳走さまだったが、殴られても仕方がない。


「つ、ツッキーさん」

「はい」

「あの」

「はい」

「はしゃいでコケて、助けていただいた上につまらないもの触らせてごめんなさい」


 ?


「触ったなんて解らなかったとは思いますが、ちっパイでごめんなさい!」


 花さんは耳まで真っ赤なうえに目が少しウルウルしていた。

 か、可愛い。


「は、花さん」

「はい」

「あの、言い方はおかしいかも知れませんがご馳走さまです」

「………わ、忘れて下さい!」


 できるかな?

 柔らかい手の中の感触がまだ残っている。

 花さんはちっパイだって言ってたけど、俺の手の中に収まるサイズでちょうど良い感じだった。

 無理だろ?

 ラッキーだった。

 忘れられるわけがない。


「忘れます」

「ありがとうございます」

「時間はかかると思いますが」

「今!今すぐ忘れて~」


 花さんが俺の手をニギニギして感触を忘れさせようとしているのが可愛くて幸せな気持ちになったのは言うまでもない。

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