王さまと兵士長
ある晴れた日。
世界のはしっこの治める王さまと兵士長が話していました。
「王さま、報告申し上げます! 遂に目覚めました!」
「なぬっ! それはいかん! 早くあれを用意するのだ!」
「は!」
兵士長はあわてて外へ飛び出し、王さまも部屋でそわそわそわそわ。
やがて兵士長が何やら抱えて飛び込んで来ました。
「王さま、こちらを!」
「おお、これでいける! でかしたぞ兵士長」
「光栄です!」
王さまは兵士から受け取ったものを手に立ち上がるとそれを手に外へ出ていきます。
中には兵士長が一人。静かに見守ります。
ばたんばたん。
がたんごとん。
しゅりん、ずばっ!
「ひぇぇ……」
しばらくして扉が開き、くたびれた王さまがよろよろと部屋へ戻ってきました。
兵士長は肩を支えます。
「次はこの手は使えない……また考えないとな」
「はい」
その時扉が開きます。
「パパァ? またくるからねー」
「お、おー。もちろんだとも」
年頃の娘の機嫌を取るためのプレゼントに同じものは通用しない。
王さまの心は磨り減っていつか倒れてしまうと兵士長は思った。
反抗期の娘は魔王のような恐ろしさを感じる、とある王国の朝でした。