そんな悪魔よりも狡知な
勘の鋭さが常に自身を生かすとは限らない。
私はあられもない衝撃で床に叩き付けられますと、柔らかい重しを乗せられたような感触が体全体に粘り付いた。
最初の一撃は普通の殴打として……これは、念力?! 術者が近くに――。
抜かった。最初のドロウ・ポケットで倒した4躰の中には、昇降路から落下した者もいました。その残骸がないことに、もっと早く気付くべきでした……! そもそも鎧と死体の数が合いません。びっくりな状況と宝の山に惑わされて、そんな当たり前のことにも気付かないなんて。私ったら、なんてうっかりさん!
ナオさんは貞操のピンチです。もう疾っくに捨ててますけど!
元々動かせない脚はいいとして、両腕も念力で縛られています。素っ裸なので武器も持っていません。
指先だけ動かして近くに転がっているパージ・ナイフを――何者かに折れた脚を掴まれ乱暴に引き摺られ、思わず端なく叫ぶ。
いくら屈強かつマゾっ気がある私でもこれは……!!
「大人しくしててよ。どうせ俺らはここで死ぬんだから」
俺ら?
「俺ら、とは? 貴方だけではなく私もですか?」
未だ足元で判然としない陰に問いかけます。
「この状況で、よくそんなことが言えるね……。さっきあった大きな衝撃でね、階段が崩落したんだよ」
なんだと?
「昇降機は君らが爆破した。階段はない。そして、ここから最も近い地上への出口までは12キロもある。怪我した俺たちが、そこまで移動できる訳がない」
ストリド城の大扉への道は断たれた。東にある市壁外の出入り口のみ。そこに辿り着くのは困難。
「解る? つまり上階への道は、完全に閉ざされたんだよ」
こりゃどうもハッタリじゃねぇな。ガチですか。
「どうせ助けなんて来ない。俺らはここで死ぬんだ。だからさ、折角だから仲良くしよう? な?」
嘘だ。こいつ、てめぇを好き放題めちゃめちゃにしちまったあと殺して、アラベラと動作フレームを盗むつもりだぜ。
そんなこと、教えられなくても解ってます……!
まっ、そうなったら、てめぇともお去らばだな。だけど、次の宿主がこんな弱そうなのっては、嫌だねぇ。グレード・ダウンも甚だしい。
だったらなんとかしな、この無能!
間もなく体に第二の衝撃。私に馬乗りになる陰は、人のものです。
ええい胸を揉むなこの気色悪い!! 勘弁してくれ、男は俺の趣味じゃねーんだ。それは私の台詞です!!
どうすんだよおい! てめぇの操なんざ知ったこっちゃねーが、俺様は気色悪い経験値なんか積みたくねーぞ!! だったらなんとかしなさいよ!! できるならやってるっての阿呆!!
こうなったら奥の手。――くそ、万全の状態ならそんな嫌らしい指、噛み千切ってやりますのに!!
『ドメスティック・ファイア、スターティング。スタンバーイ、スタンバーイ』
妹がよく使っていた術式。神との契約で術式の購入に親族割引が効いたので試しに落としてみたのですが、術系統が違い過ぎて私では使い物にならなかったもの。
『ロックオン、ヒィィイヤッ!』
……一応、使おうと思えば使えるのですがッ!
『ファイアアァウ!!』
バチンと歯痛のような音と光がして、私に乗りかかっていた悪漢が吹っ飛ぶ。瞬間、粘り付いていた拘束が解けたので、手を伸ばして重量がある何かを引っ掴んで陰に向かって投げてやります。
ぼほぉっと、空気と血が袋の中で接触する音がしました。当たったみたいです。その隙にステンド・ファルコンを掴み取り、起き上がったところに――起き上がりませんね。
仕留めた?
「お前、こんな隠し玉があったのかよ」
「別にそう大層なものでは――痛たたた……」
頭がビリビリして吐き気もします。喉の粘膜が持っていかれそう。うー、視界がチラチラしりゅ。
飼火は、任意の空間に雷撃を発生させ物体を破壊する術式。私が得意とする光操作やイリュージョン系の術とは、全く系統を別にします。
系統が異なる術を使い続ければ、脳がその術式仕様に作り変えられる……ね。よく導具もなしで、そんな状態になるまで系統が異なる術を使い続けられますね。どんな神経してるんでしょうか。気持ち悪い。
「だけど凄ぇ威力だな。一撃かよ。副作用を考えても実用に足るんじゃねぇの?」
いやですから、そんな大層なものではありませんし、肉体に溜め込めるエナジーなんて高が知れてる上、私が使っても抵抗が大きくて出力半減……の筈?
悪漢はピクリとも動きません。
確認するために、パージ・ナイフをお口に咥えて、警戒しながら這って近付きます。
……体中の骨がバキバキになってますね。
「ヒトに向けていいもんじゃねぇぞ、これ」
いえ、これはきっと術式に依るものではありません。初めから、こうなっていたと考えるべきでしょう。
「は? いくら魔族でも、初めっから骨が粉状の奴なんかいる訳ねーだろ。スライムとかガス状の奴ならいるが。お前、無理な術式使ったせいで本格的に頭が変になったのか?」
悪魔のくせに察しが悪い奴ですね。こいつは爆風に煽られて昇降路から転落したために、ここにいた訳です。鎧がズタボロの状態なのに、中身が無事な訳がありません。きっと、着地に失敗したのでしょう。となると……どのみち私がやったことに?
「そんな状態で、どうやってここまで移動してたんだよ」
「念力で身体を支えていたのでしょう。小器用な奴です。そして仲間と合流しようとしたら、階段がなかったと?」
「あー、なるへそ。……それが解ったところで、なんかあんのか?」
いえ、特に何も。……全く、なんのために出て来たのでしょうかね、こいつ。
「さてね。これもきっと、神様の思し召しってやつだろ。ゲラゲラゲラゲラ」
この下級悪魔……。
私はまた這って戻り、スーツを手に取ります。水滴が染みてて冷たい。化学繊維ですから直ぐに乾燥するでしょうけど。このスーツ、履いて着るデザインなんですよね……。
くぅ、多少の傷みは快感に変えましょう。どうせ、遊び心を除けば肉体になんてアンテナとスピーカー以上の役割は求めていませんし、少々どうなろうと――。あっ、やっぱり痛いです。痛たた、痛たたたた……。
ファスナーを上げ、ベルトを締めて各部位のドローコードを絞る。少々布地が余っても問題ありません。
まずは脚を支えるために脚部フレームから装着。ケーブルを接続。続いて各部位のアラベラとグラス・パンサーの動作フレームを装着。ケーブルを接続。グラス・パンサーの動作フレームをスーツに固定。
靴を脱ぐ。ボール・スケートを履く。クッション材が湿ってます……(こいつ、水虫とかありませんよね?)。ケーブルを接続。装甲を各フレームに固定。サイズが違うため全身の装甲は装着できないので、ないよりはマシ程度のものですけど、足首周りがないと身体を支えられませんし。
さて、では服を着……腰周りがキツイ。頭も入らない。……私が太いのでありません。おデブは自動鎧です。
服を風呂敷代わりにして、他の鎧から外した発力器やマガジン、パージ・ナイフなどを包んで持っていく。
靴は置いていきましょう。口惜しや。
マル様に買って頂いたものなので、あとで取りに来ます。……焦がしたり、血で汚してしまいましたが。
これでやっと前へ進めます。私は悪漢の死骸を足蹴にして走り出す。
やっぱり速いですね、グラス・パンサーは! 草原の豹の名は伊達ではありません。
しかし気がかりは、奴の言葉。
『さっきあった大きな衝撃でね、階段が崩落したんだよ』
もし、マル様が巻き込まれでもしていたら……!!
ウォーとパットはまだしも……ハートとタリスは上手く合流できたでしょうか。
●
「やぁ、君が僕の死神かい?」
声からすると、若い男のようだ。
「余計なお喋りはやめろ。ここで何を――」
こちらが言い切る前に、男は厚紙を突き破るように咳き込み出す。
「おい……」
「悪いね。ここ、埃っぽいからさ」
態とらしい。
今までは音一つしなかった。見付からないように堪えていたのだとしたら、部屋の明かりを点けてない理由が説明できない。血痕と云い、意図して発見されようとしていたとしか考えられない。
狙いはなんだ? 負傷した状態で部屋の明かりを消し、たった一人でいる意味は。
自爆か?
……だとしたら、そんな奥で壁を背にするよりも、扉付近に身を潜めていた方がいいだろう。部屋の中を伺おうと、こちらが首を室内に入れたときに自爆すればいい。仕留められる保証はないが、確実に負傷させることはできる。
自棄を起こしたか? 馬鹿な行動だとは思うが、考えられなくはない。人がいつも賢明であるとは限らない。だが、自棄で血痕を残すか?
不用意に近付くのも憚られる。
部屋を覗いたとき、一瞬だけ見せたあの眼。こいつは何か企んでる。俺の勘が、そう告げていた。
男は一通り咳をし終え喉を整えると、落ち着いた様子で喋り出す。
「見ての通り、何もしてないよ。置いて行かれちゃったからね」
「置いて行かれた?」
「自決用の拳銃も取られちゃってねぇ。弾が勿体ないんだってさ。あり得ないよね、いくらこの国が金欠だからって――」
「どうでもいいことを話すな。霜降りの公女が何処に行ったのか教えろ」
「せっかちだねぇ……。ちょっとぐらい、話し相手になってくれてもいいじゃないか」
ここまでになると、やや不気味だ。死を恐れていないのか?
「下に降りたと思うよ。地下三階には、地上に直結する階段があるから」
「……ここはまだ地下二階なのか?」
「うん、まぁ、勘違いするのも無理ないけどね。この区画に来るには、階段を4つ降りないといけないから」
……ここが複雑怪奇な迷宮であることは知っていた。それは、この真上に建っているストリド城もそうだが、ここを作ったと思われるネツァルの建国王、ウィツナワの趣味だと言われている。
彼は酷く冷酷な上に、嗜虐的な人物であったらしい。この地下迷宮に囚人を放り込み、怪しい魔術の研究材料にしていたとの伝承がある。逃げ惑う囚人が迷宮で彷徨い、恐怖と孤独に咽び泣く様を楽しんでいたとか……。
まさか、古の魔導師にまでも翻弄されるとはな……。何処までも憎々しい存在だ。
「それで? どうするつもりかな? ここで見逃してくれるなら、君が地獄に堕ちたときに、代言人として召還されてあげてもいいんだけど?」
「命乞いの練習をして来なかったのか? 俺はハシャルの信徒だ。地獄などない」
「大体、同意するよ、それ。方向性は、ちょっとだけ違うけど」
「祈る時間くらいはくれてやる」
「うーん……。その気持ちはありがたく受け取るけど、残念な話、レタリア人には祈る神なんていないんだよねぇ……」
「そうか、なら――」
「本当に残念だよ。君、死神には向いてないみたいだ」
背後に圧。数センチ先からの明確な殺気。
しかし反射的に振り向くよりも早く――
「動くな」
老人の声が、こちらを囚えていた。
●
「つまり、囮になられると?」
「はい」
僕はデコイだ。それもデコイと解らない、目立たないデコイ。
絶対的優位は人を油断させる。
生身で武器も持たず、怪我までしている相手を警戒する人間はいない。
作戦概要は簡潔明快。僕が囮になって、ネサリッシュさんが敵の背後を突く。最優先は制圧。あわよくば鎧の奪取。
「危険ではありませんかな?」
ネサリッシュさんが懸念するように、この作戦にはいくつかの穴がある。
まずは、僕が発見され次第、有無を言わさず殺されるケース。この場合、ネサリッシュさんには強行突破して貰うか、応援が来るまで耐えて貰うことにした。最悪なパターンだ。
「ですけど、完全とは言い切れませんが公算はあります。敵は情報――マル様の行方を聞き出すために、安易に殺すようなことはしないかと思われます。況して、こちらが負傷していれば尚更です。既に無力化されている訳ですから」
それに敵が少なからず頭が回る奴なら、一室だけ明かりが付いていないことで、何かあると勘繰るだろう。仮に自爆を恐れたとすれば、室内に入ってくることはない。そうして近付いて来ない方が、こっちとしては都合が良い。
次に想定されるのは、敵が複数で行動していたケース。敵が単独行動していることは前提条件なので、そもそも作戦が成り立たない。策に依る具体的な対策も不可能なので、このときは諦める他ない。
そして僕よりも先に、ネサリッシュさんの存在が敵に悟られるケース。これは地下遺跡の構造を利用することで回避する。
この階層は、本来なら上下階段までのルートは何通りも存在する。しかし崩落が原因で、確実にそこを通らなければ階段に辿り着けないポイントが存在する。
なら、僕はそのポイントの手前で、ネサリッシュさんは奥で待機すればいい。
敵がそうした地理を、完全に把握できているとは思えない。今回の襲撃が起きた背景には、情報の漏洩があったのは確かなことだけど、もし敵がそれで遺跡の状況を把握していたのならば、ここまで僕らに翻弄されていない筈だ。
最後に、僕が発見されたことを、どうやってネサリッシュさんに伝えるかだ。ネサリッシュさんは、どうしても僕から離れた場所に潜む必要がある。森や林ならいざ知らず、身を隠す場所が限定されているここでは、こちらからは見えるけど向こうからは見えない場所が存在しない。テレパシーでは、瘴気があるため連絡手段として確実とは言えない。
僕ができて、ネサリッシュさんが知覚できる方法……。それが音――咳だった。
アラベラのヘッドギアには集音装置が備わっている。音がした場所の特定まではできないけど、予め何処から音がするのか分かっているのだから問題にはならない。
瘴気で咳の音が変質したとしても、現状下では音は音として伝わるし、また情報量そのものには変化が生じない。音が臭いなどの別種の情報に変質するまでには、相応の時間・距離・瘴気の量が必要だ。
ここまで説明し終えると、ネサリッシュさんはぽつりと呟いた。
「博打ですね」
……正直、綺麗な作戦じゃない。成功には運が絡んでいた。
だから僕は、ぐずぐずのハンカチをポケットから取り出す。
「もしものことがあったら、これを僕だと思っ――」
「不要です」
「……? もしものことがあったら、これを僕――」
「聴こえてます。言い直さなくても結構です」
●
「動くな」と言われて、素直に従う者などいるものか。
グラス・パンサーの加速力と爺の反射神経。どちらが上か試してくれる!
背後の老人に寸鉄を入れると同時、最高速度まで一気に加速にする。
いくら後ろを取ったとしても、自動鎧を腕力で抑え込める筈がない。なら銃器を使って脅したのだろうが、声の老人からでは室内の男も射線に入る。無闇に発砲はできない。
男までは残り1メートルもない。抑え込んで人質に取るなど容易――。
俺は銃声と共に崩れ落ちた。背後から響き渡った衝撃が、鎧の関節を正確に撃ち抜いている。
まさか、仲間がいるのに撃ってきたのか……!?
「タリス!?」
手足が熱い……。床に転げたまま横目で後ろを確認すると、そこには起き上がりながら叫ぶ老人がいた。
今のは、あの老人ではないのか?
「僕は問題ありません。自分で撃って、自分に当てる馬鹿いませんよ。それよりネサリッシュさんの方が……」
何……? しかし、この男は武器など持っていなかった筈。それに銃撃は背後から……。
入り口付近。廊下からは死角になる角に、ハルベルト‐69が浮いている。
まさか初めからそのつもりで。しかし、それでは照準が……。
次回の更新は2016/09/17 16時を予定しています。
※最近、またElonaにハマってしまったので、遅れる可能性があります。
次回「人間の歩みが止まる」からの抜粋。
内容は予告なく変わることがあります。
・防水用シャッターに挟まれたのか、腰の当たりで醜く折れ曲がっている。
・スレイプニル。最大積載量は253キロで22mm砲を標準搭載する、一人乗り戦車とも称される陸上の怪物だ。
・「重いぞ、私は」
・グアナコ。アルパカやリャマのお友達で、やはりこいつも唾を吐く。無礼な。
・退路がないのだ……。奴ら、初めからそのつもりで?
・「トラッシュ・ハウンドなんて、私のスイング・クマーデで叩き壊してくれるわ。ジェンガみたいに!」
・「――墓石には、誉れある死であったと刻んでやろう!!」
・激しく鈍い音と、腕をハンマーで叩かれたような衝撃。
・やっぱり、馬力では相手が上……。
・けど、それだけじゃ、スレイプニルは倒れない。
・「本番はここからだぞ、小僧」
設定だけ先に明かしていくスタイル
魔導
人を魔境へと誘う思想や文句、邪教の教義・行為、淫らな行い、一部の音楽、外法、一種の技術などのこと。また、それらを抑圧しようとする社会への反抗心、反逆心、平和の破壊や常識の否定、神との敵対なども含む。これらの共通点は「世を乱す可能性が高い」こと。
由来は、神話の中で神が禁じた行為や思想、並びに技術。
今作の中核を成す概念なので、作品全体を通して説明する。なお、それが面白さに繋がることなのかと言われれば話は別。
発想の出発点は「魔導師とか大魔導師ってファンタジー界隈でよく使われる言葉だけど、そもそも魔導ってなんだよ」という疑問から。
魔導書
魔導について記された書物。
中でもブルー・ブックは通俗本としての色が強く、表現の自由を盾に検閲から逃れているものが多いが、たまにガチってる(ラリってるともいう)奴が素人向けに書いてあるものも混じっておりヤバイ。
内容は思想や倫理、悪魔崇拝についての衒学的な記述が主体であるが、ならばどうするかという実質的な問題に触れられていると、幻覚剤、瞑想、降霊、催眠術、幻術、ハッキング、ピッキング、お手製銃火器の作り方などなどなど、半歩間違えれば悪用される、とっても便利なお得情報が満載。
元ネタはヨーロッパで流行していた通俗本から。英国枢密院の報告書ではないです。
魔導書
全大陸を繋いでいる地下遺跡について記された書籍。山道や海路、星の読み方、サバイバル技術についても書かれている。それらの情報とともに、魔導に触れている書籍もある。
元は被差別民であるレタリア人が、検閲に引っかからずに広範囲を自由に行き来するために使っていた抜け道の情報をまとめたもの。
密輸業者や密入国者、テロリストのバイブル。
元ネタからして、黒人差別とか言われないかと作者は震えている。
魔導師
上記の事柄に通じている人物。もしくは邪教と罵られることが多いレタリア教、カトフ教、ルカエ教、サナタ教、テイア教の信徒。またはそれらの中でも指導者的立場にある者。
忌まれることが多いが、必ずしも世間から廃絶される存在とは限らない(基本的に、魔導師の存在そのものは宗教の問題であって、法令の問題ではないため)。
当て字に導師が用いられているのは、上記のテイア教以外の宗教が火葬を用いることから。
五大法外
ガズンドオルス神話を基盤に持つ十二宗教の中でも、邪教として扱われている五つの宗教、レタリア教、カトフ教、ルカエ教、サナタ教、テイア教(成立順)のこと。これよりも特に卑しめて言うときに、魔導が使われる。
それぞれが別宗教なので教義や戒律は異なるが、共通しているのは、どのような社会であっても基本的に咎められる行為(殺人、窃盗など)を特殊な事例を除いて是としていないところと、神の存在は認めるが信仰の対象とはせず、ヒトが豊かになるための道具として考えている点(用いる言葉は微妙に異なるがニュアンスは同じ)。
後者の理由が、五大法外と呼ばれる所以。
一般的に、カトフ教、テイア教、ルカエ教、レタリア教、サナタ教の順で、七大宗教側に近いと言われている。
なお、レタリア人は必ずしもレタリア教徒であるとは言えず、先祖がレタリア教徒だったために、その文化的・儀式的要素を民族集団として受け継いできたにしか過ぎない。
そのため、レタリア人は民族でも人種でもなく、世界各地にあらゆる形態で存在している。
七大宗教
ガズンドオルス神話を基盤に持つ十二宗教でも、世界宗教として認められている七つの宗教、リコス教、ラゴ教、ヴェバク教、ハシャル教、クノーエル教、セヌス教、エガリヴ教(成立順)のこと。
共通点は、神を信仰の対象としていること。
一般的に、リコス教(ジル派)、ラゴ教、セヌス教、ハシャル教、クノーエル教、ヴェバク教、エガリヴ教、リコス教(ライ派)の順でアウフに近いとされている。
当惑を集める手
残留思念の採取を行える術式。無料配布されている。
術系統が合わない人でも使用できる(理由はいずれ何処かで書くと思う)。
同様の機能を持つ術式の中では最高の性能を誇るが……。
制作者の意図か性格が反映されたためかは定かではないが、負の属性を持つ思念を集めやすい傾向がある。しかし、これは誤差の範囲と言ってよく、使用者によっても採取しやすい思念の偏りが発生するため、あまり重視する必要はない。
制作者は魔導師であり、この術式と同名の通り名で讃えられている。
なお、この術式には魔導が使われていないので、宗派や教義に関係なく使用できる親切設計……。