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レウコン・シリオ・マルはもうすぐ捕マル。~~もしくは、悪魔のつもりが俺が~~  作者: 骨々
レウコン・シリオ・マルは捕マル訳にはいかないのだ。
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けれど暗がり以外に道はない

 絶対おかしい。こんなに帰りが遅いなんてあり得ない。それに未だに連絡の一つもないなんて、何かあったに違いないわ。

「多分、呼び出した奴が悪さしてるんだろうな」

 ストリド城の御城医長、ベンジーさんが言った。

 彼はハートさんの親友で、その関係からマル様がネツァル公王の庇護下にあったときから、彼女のことを気にかけている人らしい。ストリド城にも、自ら望んで付いて来たそうだ。

 本来なら、こんなプロジェクトに関わるべき人ではないけど、あたしたちの様子から何かあると勘付いて、今は協力してくれている。彼自身、祖父がヴァンドルダム出身であることから、魔導アウフにはそこそこ精通しているらしい。秘匿していた魔導書ブルー・ブックも見せてくれた。

「……! まただ! 今回は爆発音じゃなくて、何かが崩れる音みたい。結構大きいよ」

 2回目の爆発から僅か数分。探知術式を走らせているシュシュが言った。これで地下では、爆発などの大きな事態が少なくとも3回はあったことになる。

 ここはナーバーランドの中心地、ストリド城の地下遺跡へと通じる大扉の前。あたしたちはここで、マル様たちを救援する準備を進めていた。

 と言っても今のあたしにできるのは、ここで指を咥えてガトリーの帰りを待つことしかなく……。

「遅くなってごめんなさい。衛兵の目を盗むのに手間取っちゃって!」

 ガトリーが格納車と補給車を運転して帰って来た。

 ナーバーランドに駐留している兵士の多くは、ネツァル公王の息がかかった者ばかりだ。指揮権はマル様が持ってるけど、その活動は全て筒抜けになる。だから、悪魔召喚実験について知る者は少ないし、知られてはいけない。

 格納車の中には、あたしとガトリーの軽自動鎧ライト・アーマー――ブラック・ペッパーとピーチ・ブラック――と、シュシュ専用重自動鎧(ヘヴィ・アーマー)、ワイルド・マグナムが積まれている。

 ……専用とは言っても、野茨協会ドッグローズ・ソサエティで販売されてるアデュラリアに、ちょっとした改造を加えただけのものだけど。

 シュシュは荘園主ローティン家の嫡子で、ストリド城には小姓として奉公に来ている。ワイルド・マグナムは、そんなかわいいシュシュを心配した彼の父が嫁入り道具として……違う違う、護身用として持たせたものだ。

「本当に、僕も行かなきゃだめかな……?」

「当然でしょ。あんた、マル様たちが心配じゃない訳? 男なんだからグズグズしない!」

「心配だけどさ……。僕、非戦闘要員なんだけど」

「それはあたしやガトリーやベンジーさんだって同じ!!」

「けど……僕、怖いよ」

 シュシュはその身に纏うあたしのメイド服をひらっひらっさせながら、かなりいぢらしく、もっじもじしている。くそぅ、てやんでぃ。男のくせに全く以て似合いやがってこん畜生めぃ……。緊急時なのに、すこぶるめんこくて「きゅん」としちゃったわこんにゃろめぃ。えらいいじましいわ、このぅ、くぬぅ……かなぅ。このままでは心が……このままじゃあたしの心臓が保たぬよっ。

「あんたそれでも……! あの悪闘士スラーンと名高きローティン家の嫡子なの?! セルク人の名折れとか言われて恥ずかしくない訳?! この……この風光明媚ふうこうめいび!!」

 何言ってんだろ、あたし。

「逆ですよ、逆。悪闘士スラーンはセルク人で、名折れはローティンだから」

 ガトリーが細かい修正を入れてくれる。けど、直して欲しいのはそこじゃない。

「ちなみに悪闘士スラーンはハシャル教の自衛組織の成員だから、ローティン家とは無縁だよぉ……」

 どっちでもええわい! そんなこと!!

「ってゆーか早く着替えるの!! ほら脱ぐ脱ぐ!!」

「ええ?! こ、こんなところで――」

「あんた男でしょうが!!」

『スネイキー・ストレイト・ストーカーを起動!』

『対象を認識。実行しちゃうぞっ』

 あたしは黄色く叫ぶシュシュを術式で拘束し、服のすそまくり上げる。本当に、はぁ、かわいいわね、全く、ふぅ……!

 暴れるシュシュを抑え付けて鼻息を荒くしているあたしを遠巻きしながら、ベンジーさんは着替え始めた。男らしいベンジーさんには、駆動外殻のアラベラとハルベルト‐69Hで武装して貰う。

「本当に申し訳ない。若い君たちに、こんな役目を……」

 そうやっててんやわんやしている中、家老のゲイリーさんは何を思ったのか、いきなりあたしたちに向かってそう言い頭を下げた。老人の相手なんてしてる場合じゃないのに……!

「いえ、頭を上げて下さい。ゲイリーさんには残って頂かないと困りますから……。すみません、一番辛いお立場ですのに」

 もし万が一があったら……立場のある人が残っていて貰わないと、後々困るから。ゲイリーさんには辛い役回りを押し付けることになるけど……。

「いやいや、マル様の提案に賛成したのは私だからね。当然の責務だよ」

 当初、マル様の「そうだ、悪魔召喚しよう」と云う突拍子もない発案には、みんな難色を示していた。いつもはマル様万歳で血反吐まで噴出するナオお姉さんでさえもだ。寧ろ、悪魔の危険性を最も強く論じたのは彼女だった。

 けれど普段は気難しいゲイリーさんが、このときばかりはマル様の提案に賛同された。マル様が積極的に何かを提案するのは、三年前のあの日以来、これが初めてだからと……。その声があったから、皆はマル様の大博打に乗ることにしたのだ。

 マル様がネツァル公王の庇護下から離れ、このナーバーランドに来られたのは、三年前の夏。公には一人立ち。理由は本人の意思。実態は厄介払い。

 その年は降雨量も少なくて、みんなピリピリしていた。中央大陸ガズンドオルスの内陸にあるネツァルでは、水は貴重な財産なのだ。

 当時……いえ、今でもマル様のお噂は最悪なものが多い。敵に利する。国家の恥。誇りを失った高貴な奴隷。ちょっとおかしい。ご病気。

 あたしもそんな噂を好む質だし、それは概ね真実なのだろうと思っていた。

 水園都市ネサワルダムでの伝説的な失言から、今日で丁度三年。彼女はこの三年間、流通から外された田舎で堪えていた。ジャンピング・ロッドが今日を召喚日に指定したのは、彼なりの皮肉か、偶然か、それとも運命か……。

 もしこの大博打が失敗すれば、彼女の人生は本格的に終わってしまう。殺されることはないと思う。ネツァル公王は寛大なお方だ。だから余計に彼女は苦しいのだ。もし失敗したら、彼女はこれからの人生で心が動く機会を奪われてしまう。

 それは、なんとしても避けたい。あたし個人の願いだ。だから命に変えても……なんて、マル様はきっとお望みになられないでしょうけど。

 夜明けが来る前に、なんとしてでもマル様を地下から連れ帰らないと。

「ペトラー。どのみち、鎧の着装は中でしかできないんだから、貴女も早くこっちに来て着替えなさーい」

 ガトリーが格納車の荷台から私を呼ぶ。

 仕方ない。私は泣きじゃくるシュシュをゲイリーさんに預けて、格納車の中で自分の着替えを――シュシュの服を鎧に着替えることにした。



「道がないなら……仕方ない。戻って、ナオさんたちと合流しよう」

 その提案はパットのものだった。彼は自分の腕そっち退けで、私の足を治療している。「何を仰ってるんですか。マル様の方が重症ですのに……」と言うことだった。そのお陰で痛みは引いていた。

「いや、いくらナオさんでも、あの数だ……。もう一つの階段を使って、東の出口を目指そう。市壁外に出ちまうが、ここに留まるよりかはマシだ」

「けどナオさんたちって、駆動外殻着てなかったっけ?」

「帝国製のアラベラな。だからって、それで自動鎧リビング・アーマーに勝てるとでも? エガリヴの人喰い狼じゃあるまいし……」

 2人の会話で意識が楽になってきたのだ。さっきまでは意識はあったが心ここに在らず云った状態で、思考も感覚もおぼろになっていた。

 チビ太郎とトラッシュ・ハウンドが戦っていた階段はなくなってたらしい。2人に拠ると、倒れている私を発見する前に酷く大きな音がしたと言うので、おそらくそれが階段が崩れたときの音だろうとのことだった。そのとき、私の意識は途切れていたので気付かなかったが……。

「なぁ、他の者はどうしている? まだ無事か? さっき、向こうから爆発音が聞こえたが、あれはなんだ?」

 ウォーの背中に顔を預けながら問う。自立できなくなった私は、ウォーにぶられていた。

 ナオたちは私を先に向かわせるため、敵の足止めをしてくれていたのだ。その数は二十に近かったと思う。……残りの3人の安否が気がかりだ。

 2人は顔を見合わせ、そして視線を落として黙った。

「……どうした?」

 ウォーがずり落ちてきた私を背負い直して、言う。

「先程の爆発音は……タリスが殉じた音です」

「タリス……タリスマン・コーデルか?」

 一瞬、何を言われているのか理解が及ばなかった。

「はい。あいつは足を負傷して動けなくなったため、敵を道連れに自爆を……」

 そんな……。あの傷は、私を庇って――パンサー系に標準装備されている対人兵装、ステンド・ファルコンを受けてできた傷。

「マル様、お気を落とさないで下さい」

「元はと言えば、奴らのせいです。必ず、この償いは払わせてやりましょう」

 ……彼は、私が9歳のときからの従者だ。とても音楽が好きで、そもそも軍に志願したのも、音楽を勉強するためと云う熱心ぶりだった。そうした本人の希望もあって、比較的安全で地元も近く、まず戦闘が発生しなかろうナーバーランドに、私の侍従武官として配属されたのだ。ご両親も、それを喜んでいた。

 普通、出世からも程遠く、世間体も良くない私の侍従武官になるなど、誰も喜んだりはしない。……それでも、彼は喜んでいたのだ。初めは徴兵されて軍に入り、軍楽隊に憧れて、けど家柄がなくてなれなくて、でも諦めきれなくて軍に残り、だから私の侍従武官になって……。

 楽器とか、あまり買ってやれなかったが、市民の慰問とかこつけてピアノやら木琴やら、みんなで使えるものを城の公衆堂に運び入れて、一緒に楽譜と睨らめっこしながら、指揮者の真似事みたいなこともしてみたりで、そんなときが一番よく笑ってた。

「良い奴でしたよね」

「案外、ひょっこり出て来たりして。幽霊にでもなってさ……」

 ああ、今でもこうやって耳を澄ませば、そのいつも眠たそうなテレパスが――

「申し訳ないけど、勝手に殺さないで欲しいんだよねぇ……」

 テレパスが……?

 暗い通路の先、大柄で肩幅のある男性の陰。

「タリス?!」

「と、ネサリッシュさん!!」

 ネサリッシュ・ハートと、それに負ぶられたタリス。それを見てウォーをパットが騒ぎ出す。

「後生だ! 後生だから成仏してくれ!!」

「死なき死の獣神テイア笞猫フラジェリンよ、我ら麦穂の調べに従います。道を授けた給え。ことごとく招き給え――」

「あのねぇ……。僕は仏に成れる程、まだ行を修めてないよ?」

「罪を示し給え! 死なき死の獣神テイア笞猫フラジェリンよ、我ら麦穂の調べに従います。道を授けた給え――」

「パット、獣神テイア真言マントラ唱えるの、やめて」

 2人はハートの後ろに回り込んで、タリスの顔を繁々(しげしげ)と覗き始める。私もそれに倣った。

「生きてるのか……?」

「うん」

「本当に生きてるの!?」

「じゃなかったらなんなのさ」

「幽霊?」

「足あるでしょ」

「死んでないよな?!」

「しつこいよ」

「偽物じゃないよな!?」

「本物です」

「怪我してない!?」

「足を怪我してます」

「まぁ、んなことより、ナオさんは?」

「おい」

 いつものタリスだ。お人好しで生真面目で、だけどマイペースのおっとり刀で、耳が良くて冷静で、みんなの話も私の話もちゃんと聴いてくれる――

「いくら温厚な僕でも怒っちゃうよ?」

 のに、橡面坊とちめんぼうで優柔不断で、意外に図々しくて度し難くて、頑固で融通が効かなくて気も利かなくて、何より優しいお兄ちゃん的な人だから、心配をかけるのは、本当はマルの仕事の筈だから――

「真面目にやれよ、君ら……。マル様も、もうこいつらになんとか言って下さ――」

 だから怒るのは私の方だ。

「マル様?」

「馬鹿あ! 心配なんかしてないがな! それでも大変なんだぞ! 遺族への見舞金とか葬儀とか、あと、あとっ、なんか色々かかるんだぞ!! 時間とか体力とか、気とか使うし放つしフォースだし! どんよりして何も面白くないし、やる気も出なくて勉強とか手に付かないし――」

「勉強はいつものことでは……」

「だから、だから……こんなことになっちゃって、どうしようって、思ってて、みんなも怪我して、それで君が死んじゃったって、考えたらね、私ね――」

 タリスはハンカチを出して、私の頬をぬぐう。

「そうですね。申し訳ありません、マル様」

「うん……。以後、気を付けるのだ」

「はい。承知しました」

「気を付けろよ、タリス」

「そうだよ、タリス」

「そうですよ、お気を付けなさい」

「感動のシーンに便乗しないで下さい。マル様の涙なんて、貴重なんですから」

「お前……そのハンカチどうする気だよ!?」

「どうもしないよ!! そんな考えが直ぐに浮かぶ君の方が余っ程、おぞましいわ!!」

 私はタリスからハンカチをもぎ取り、鼻をかんだ。

「……あの」

「返す」

「っとまぁ、話が途切れたけど、ナオさんは?」

 ハートが疑問に答える。

「ナオは一人で敵を足止めするつもりらしい。今も交戦中だ」

 タリスはどうにかこうにか、ぐずぐずのハンカチを上手い具合に畳もうと奮闘している。

「んな無茶な」

「今直ぐ応援に行こう」

 そうして気色ばむ若い2人に対して、ハンカチを仕舞い終えたタリスは落ち着きを払っていた。

「待ってよ。僕らが行っても、言葉通り足手纏いだよ。そもそも戦闘の邪魔になるから、僕らはマル様と合流するように言われた訳だし」

「今は我々にできる最善を尽くそう。ナオなら、何か考えがある筈だ」

「って言っても……」

 完全に気持ちを切り替えた私は、ウォーとタリスに指示を出す。

「ウォー、タリス、上と下の状況は解るか?」

「見えません。瘴気が散ってるせいで……」

「時間をかければ、もっと何か拾えるかもしれませんが……」

「ふむぅ……。なら、眼と耳を貸せ。私が解析した方が早い」

 理由は分からないが……さっきまでかけられていたジャミングが、今は解除されてるのだ。この分であれば、2人の力を借りることで下の様子を探ることができるかもしれない。

「はい」

「解りました」

 壁際の床に降ろされた私の両側にウォーとタリスが座る。2人は私よりも大きくて、肩が頬の位置にあった。私は彼らの頭に手を回して、自分の頭に引っ付ける。

 テレパスの伝達には物理的な壁は存在しないも同様であり、その速度は技術力の如何で限りなくゼロに近付けることができる。だが、やはり物理的な距離が近くて損はない。特に、このような瘴気が散っている空間では尚更なのだ。また、テレパスの伝達には物理的な距離よりも精神的な距離の方が重要であると唱える人もいる。

 こう云った、人間を導具として扱う行為は全般的に中世の瑕疵と呼ばれており、国際法や各国の法令で禁止されている。

 それは人権や就労に関する問題も無関係ではないが、それよりも重要な理由から、人々から忌まれ魔導アウフと蔑まされている。

 無理が過ぎると、精神に異常を来す。

 現在の超常学の定説では、超常の力とは個々人の願望から発露はつろする、パーソナルなものだと考えられている。ウォーは故郷を見たいから、パットは命を救うため、タリスは音楽を聴くため、ナオは他者をあざむくため、私なら……難しい本を読むため。

 そうした、自身の望みとあまりに乖離する術を行使し続ければ、精神や人格が術に合わせて作り変えられる。かつての時代は、それが数々の悲劇を生み、多くの殺戮を呼び込んだ。

 今行っている程度の――行使可能な術が分類的に近く、よく見知った身内から直に力を借りる程度のことは、危険性が低いとされているので、法で罰せられはしない。だが、それでも倫理的な理由でいぶかしむ人は多い。

 愛もないのに肌を密着させるのは、世界七大宗教的には端たないらしい。……レタリア教には関係ない話なのだが。

 そもそも、私はこの2人が大好きなのだ。この2人だけではない。父親代わりのハート、心配症のパット、柔和なガトリー、勝ち気なペトラ、かわいいシュシュ、気難しいゲイリー、話し易いベンジー、冷静なホルヘ、放浪癖のあるカマラ、そしてナオ。……だから、誰からも文句を言われる筋合いはないのだ。

「マル様、今恥ずかしいこと考えてませんか?」

「アーモンドの花色が見える」

 ……緊張感なさのは、私の愚かさの象徴なのだ。

 改めて、ウォーとタリスが拾った波動テレパスを解析してみる。瘴気の影響から甚だ変質しており、全く無秩序な構造だ。一切、意味を成していない。

 基本的に、こうしたカオスを解析することは不可能なのだ。解析には初期値を知る必要があるが、初期値を正確に知ることなど不可能だから。

 初期値に少しの誤差があった場合、結果は大きく狂う。それがカオスだ。日常なら無視する――蝶が飛んだ。蛙が鳴いた――程度の誤差であっても、世界は大きな違いを見せる。蛙が鳴いたことが重要なのではない。蛙の鳴き声で震えたやつがいる。その玉突きは私たちには見えないが、自然に取っては確かに存在する。

 通常、瘴気がもたらす変質はランダムだが、実は様々な外的因子で、ある程度の傾向があると言われている。時刻、気温、変質前のテレパスの属性、変質前の物質とその状態、光、熱……。

 これらの中で判明しているものを参考に、瘴気がもたらした変質が、どのようなものだったかを予測し、元の状態をいくつか推察する。

 そうして推察された元の状態は、ときに数千、数万、数億パターンを越えるが、その殆どは意味を成さない無秩序な構造であることが多い。意味を持つパターンは元の状態に近い。我々に必要なのは意味を成すパターンだ。

 こうした作業を術式なしで行えるのが、私なのだ。

 まずは情報の整理。時刻、気温、深さ、暗さ、冷たさ……。大まかでいいので、それら周辺の状況を把握する。次に、それを公式に当て嵌め、瘴気の変質傾向を概算。それを得るべき情報――光景、音、声の凡その推測を立て再度、公式を用いて計算。瘴気の変質傾向と度合いを割り出す。そして最後に変質度合いを逆算し、ウォーとタリスが拾う無秩序な情報に当てる。この作業を変数を変えて、考えられる全パターンを試す。

 この作業の間にも、ウォーとタリスは新たな情報を拾うため、計算する際は最新のものを用いる。

 こうして解読を繰り返して得られたパターンの中から、「完全に意味は成していないが、なんとなく意味を読み取れるもの」を選別して、記憶する。テレパスが齎す情報はアナログな情報であるため、こうした情報を蓄積も、変質傾向の計算と解読に役立つのだ。

 無秩序で全く意味を成していなかった雑音やもやが、ある一定の法則に従ったときのみ、色や形を形成する。その法則が、私が求めている解読キーなのだ。だがこの解読キーは時間経過と共に変化する。

 ……こう考えれば途方もない作業のように思えるが、私に取っては粘土遊びに等しい。意味を成さない形に一定の圧かけ、どうしたときにその形状が意味のあるものになるかを見ているのだ。

奇声を上げる黒鵠スクウィール・ブラックスワン、悪魔だぁああ!?』

『そんな外道を清らかな乙女に抜かしやがるのは、何処のどいつだゴラァ。私はとってもプリチーでビューティフォーなウルトラ可愛い、砂漠の白鷺ちゃんだつってんだろ』

『あと2匹は地獄へ道連れにしてやる。そのタマ寄越しやがれッ!!』

 う、うん。ナオも、元気そうで何よりなのだ!



 なおも、暗闇で擦過音は続いている。音の主を探すのに支障が出るとの判断で、ジャミングはオフにしていた。

「まるで蝙蝠の鳴き声だな」

 双子の兄、セプティマが悠長に呟いた。相変わらず、その無神経さにはあやかりたいところがある。

「おい、お前ら」

 今度は真面目な鍵付きテレパス。ナッシュから指揮を任されたハレディのテレパスだ。奴は通路の最も奥に控えている。

「中央の通路から退避して左右の角を塞げ。俺とネイターヴで階段正面に向かって弾をバラ撒く」

 無駄だと思うけどなぁ……。とは思ってみても、反論する材料はないし、やらない手もない。

 その指示に従い、俺とレムス、フラーは右に、セプティマとヴィンセントは左に退避。防壁シールドを展開し、周囲に不可視の障害物がないことを確認。

「いいぞ」

「こっちもだ」

 俺たちの信号テレパスを合図に、止めどない銃声が響き渡る。閃光が狭い通路を照らすが、見える範囲に女の陰はない。

 しかし、闇に響いていた不気味な擦過音が止んだ。

「死んだのか……?」

「馬鹿野郎。ブラフだ、ブラフ」

 一安心するフラーに対して、俺はんな訳あるかと咄嗟にツッコんだが――

「おし……。セプティマ、行け」

 ハレディのアホは俺を無視し、フラーと同じことを考えたのだろう。

「拒否する」

 しかしセプティマは、その指示にハルベルトを構えた状態で応える。

「んだと……? 日和ひよったか、このクズ。この場で銃殺してやってもいいんだぞ?」

「てめぇの易い作戦に乗れねぇつってんだよ、ハレディ」

 相変わらず口悪いな……。もっと言い方ってもんがあるだろ。

奇声を上げる黒鵠スクウィール・ブラックスワンには、体が半分吹っ飛んでも次の日には元気に戦場を駆け摺り回ってたなんて話がある」

「おいおい、オーギー。んな笑えねぇ噂話にビビってんのか? 真面目ちゃんかよ。所詮は女だろ?」

 煩ぇよレムス。それぐらいおっかないってことを言いたいんだよ、俺は。

「音が止んだんなら死んでんだろうが」

 ハレディもレムスの意気にてられて調子付いたか、さっきよりも語気が大胆になっている。……無根拠な蛮勇だ。

「ならてめぇが行けよ。調子だけは良い奴だな。せめてもう一人付けろ」

「これ以上の損害を出す訳にいくかよ」

「俺は死んでもいいってことか、この野郎」

「……良い度胸だ。なら――」

 俺は慌てて止めに入る。

「まぁまぁまぁまぁ、落ち着こう落ち着こう。俺も一緒に行くから」

「オーギー、横槍入れるな」

 横槍じゃなくて助け舟だよ、この馬鹿。双子を手にかけるなんて、俺は嫌だぞ。

「ケッ、ビビりやがって雑魚が」

 またレムスだ。

「所詮は女だろ? コマしゃ一発だ。俺が行ってやる」

「待て。俺も行こう。……フラーとヴィンセントも来れるか?」

 レムスに呼応し、ネイターヴが2人に問うが、

「おい、勝手に仕切ってんじゃねぇよ」

 ハレディはそれが気に入らなかったらしい。

「なら訊くが、別に構わんよな?」

 ネイターヴの質問にハレディは舌打ちで返答し、八つ当たりとばかりにセプティマに悪態を吐く。

「セプティマ、てめぇはあとで覚えとけ」

「あとがあればいいなぁ。――後ろから飛んで来るのが銃弾だけだと思うなよ、ハレディさんよぉ」

 やめて。もうやめて! 女のことで喧嘩するのはやめて!!

 レムスたちは喧嘩する2人を尻目に角から出て、しゃがみながら進む。焼かれたギヴ、爆破された昇降機、魔導師ルーディットだった染み、そして爆発したハリーを通り過ぎる。スノーは……昇降路から落下したらしい。

 そしてレムスは階段まで辿り着くと、用心のために発砲。――金属の壊れる音だけで、女の悲鳴も血が飛び出る音もしない。

「大丈夫みてぇだな……」

 先頭のレムスがそう言って、階段を降りようと立ち上がった瞬間――

「何処で爆発した!?」

 案の定か。学習しないのかね、こいつら。

「階段前だ!!」

 ……さっきよりも爆風が弱い。残りの爆薬が少なかったのか?

 ネイターヴとフラーは構えていたのか、既に十字路まで下がっている。

退け!」

 それを押し退け、ハレディが通路に向かってハルベルトを構えるが……

「待て! まだヴィンセントが――!!」

 生きてる。だが、ハレディはその静止を振り切り通路に銃弾を浴びせた。

 蹌踉よろめくヴィンセントは防壁シールドを展開するも、ダメージを受けたピンク・パンサーの装甲では10mmを防ぎ切れない。

 銃撃が止み、ヴィンセントの死体と静寂が出来上がると……再び、例の擦過音が響き始めた。

「判断ミスだな、ハレディ」

「……今のはネイターヴの責任だろ」

「ネイターヴ、フラー、被害は?」

 ハレディの言い訳を余所に、セプティマが2人に問う。

「俺はない」

「目がチカチカする」

 つまり無事か。

「レムスは……あれ生きてんのか?」

「生きてたら返事するだろ」

 レムスは爆発時に階段から転落して以後、動きがない。

 これで残っているのは、俺、セプティマ、ネイターヴ、ハレディのグラス・パンサー4躰と、フラーのピンク・パンサー1躰か。

「なぁ……あの女、何処にいると思う?」

 ネイターヴが口にした。

「順当に考えれば、踊り場付近だろ」

「そんな位置から爆薬をこっちにまで放り投げられるか?」

「壁にぶつけてワンバウンドさせれば、なんとか行けるんじゃね?」

「あれ、何かしらの可塑性爆薬だろ? ……バウンドするか?」

 相手がネツァル軍の装備を流用してるなら、多分ドロウ・ポケット辺りだな。

「音からどの辺にいるか分からないか?」

「それで分かるなら、っくに……」

 ハレディの発言に、セプティマは憎々し気に吐き捨てた。しかし、あまりにハレディのアホの立場がなくて可哀想なので、一応意見は拾ってやる。

「俺からだと、左側から聞こえてくるような気がする。フラー、まさか後ろに付かれてやしないよな?」

 と言う俺の疑問にフラーとネイターヴは――

「俺は階段側から聞こえるぞ。結構、遠いと思う」

「俺は正面だ。近い」

 全くバラバラの見解を示した。やはり、反響して判別できないか。

 確か音波の解析に優れていたのは……ああ、ギヴの野郎だったな。こんなのときに死にやがって、役立たずが。帰ったら酒でも奢らせてやらなきゃ気が済まねぇな。

 相談が途切れ暫く沈黙していた間も、擦過音は続いていた。

「考えがある」

 沈黙を破ったのは我が双子の兄、セプティマ・ペラだった。

「フラー、頼まれてくれるか?」

 ハレディは何も言わない。

「断りたいなぁ……」

「ならハレディだ」

 僅かな逡巡。皆がハレディを見る。

「……了解した。どうすりゃいい?」

「あの染みがあるところまで行って、そこでハルベルトを構えろ。但し、まだ撃つなよ」

 2回の爆発で、もはやすっかり焦げてしまった魔導師ルーディットの染み。……こうなったら、ジャンピング・ロッドも哀れに思えてくるな。あんな死に方はしたくない。

 ハレディは黙って、しゃがんだまま移動を開始した。

 そして染みにまで辿り着き、ハルベルトを階段に向けた瞬間――セプティマが飛び出し、ハレディに向かってグラス・パンサーのハンドアックスを投げ付ける!

 が、それはハレディの手前で金属音を立てて空を旋回。

 何があったとハレディが振り返えるよりも前に、俺もセプティマに続いていた。

 足音。切れる空気。微妙な赤外線の歪み。

 奴だ。

 セプティマはそのまま直進して、何かに打つかった。そして姿勢を崩す兄に代わって、俺が奴を抑え込みにかかる。

「オーギー! 引け!!」

 その叫びで咄嗟に引く。

 背中で何かにぶつかった。裏拳を繰り出すと、手応えあり!! このまま押し倒して――。

「退け! 俺が殺る!!」

 ステンド・ファルコンを抜いたハレディだ。馬鹿が……! しかし巻き込まれたくない。俺たち双子は射線外に移動する。

 そして銃弾は壁と床を穿った。ハレディの舌打ちが聞こえたが、まだ終わってはいない。

 そこに突っ込んで来たのはフラーだ。彼は防壁シールドを展開し、空間を薙ぐ。これで……!

 シールド・バッシュの閃光が辺りを包むと奴の……奴の姿がない?

 次の瞬間――

「フラー!?」

 突然フラーは姿勢を崩し、ゆらりと昇降路から転落する。そして俺が伸ばした手も虚しく、下方から弾けるような激しい音がした。

 またこれで振り出し……と思った矢先。

「オーギー、昇降路だ!」

 セプティマの指示。

 昇降路。ナッシュたちが乗り込んだ直後に爆破され、スノーが落下し、先程もフラーを呑み込んだ。壁一面は幾本もの溝に包まれ、爆破された際に途切れたワイヤーが何本も垂れ下がっている。

 そうか、あいつ、こんなところに隠れて……。一瞬気後れたが、直ぐ様ハルベルトを構えて掃射する。

「ぐっ……」

 金属音に混じる女のくぐもった声!

 そのまま近付いて、今度は昇降路の下に向けて銃撃。すると階下から、ドカッと鈍い音がした。

 擦過音は……もうしなくなっていた。

「……殺ったか?」

 ハレディが問う。

「さぁ? これでは死体の確認もできん」

 まぁ、上がって来なければ、そのときは死んだってことだろう。十中八九、一生してる気がするが。

次回は、7月18日の正午ぐらいになるんじゃないですかね多分(濁す


以下、次回「なのに悪魔は嘲笑い出す」から抜粋。

実際の内容とは(略


・けど、んぅ、地下の冷たさが、今は心地良いぃ……。

・「へくちっ」

・瘴気は悪魔召喚に於いて触媒として使用します。故に消費されることはなく、逆に瘴気濃度が上昇することさえあるのです。瘴気は一定の場所に留まらず、他の物質や情報を巻き込んで、増加し拡散する性質を持ちますから、特別なことをしない限り、減少することはない筈ですが……。

・ 黙らっしゃい。思考に割り込むなんて、お行儀が悪いですよ。

・「あのお嬢ちゃんにこんな真似できねぇよ。十中八九、人外の仕業だな。妖怪か物怪か、魔女か鬼か……悪魔だな」

・こんなことすんのは、悪魔じゃなかったら神ぐらいしかいねーな。



兵器の設定


準自動鎧ハーフ・アーマー

駆動外殻の「凡そ誰でも装備可能」という思想を受け継いでいる自動鎧の形態。基礎フレームと動作フレームの分離が簡便に行えるため、即座に動作フレームの流用が可能。

自動鎧は身体の差異から他者への流用が難しい兵器だが、それでは生産体制に支障が出るために開発された。

軽自動鎧ライト・アーマーと混同されることが多い。


軽自動鎧ライト・アーマー

対人を想定して開発されているものが多い。

市街地での活動を基本としており、治安維持組織や軽歩兵による運用が主。また、古代遺跡での活動にも向いているとされている。

反社会的集団や公的機関ではない組織が運用しているのは、このサイズであることが多い。


中自動鎧ミドル・アーマー

軽と重の中間に位置する。性能的にも中途半端であるため、あまり使用されない言葉。

狩りや市街地での優位を確保する際に用いられることがある。他には、これを採用している特殊部隊も珍しくはない。

ギャング映画では、終盤に敵のボスなどが用いて、生身の主人公に倒されるのがお決まりとなっている。それを主人公が鹵獲し、無双する展開もある。

そのために実際に使用される頻度は低いが、最も知名度が高い。マグナム弾のような存在。


なお、軽・中・重には明確な基準はなく、概ね重量や大きさ、装甲の厚さなどで呼び分けているにしか過ぎない。ただし重自動鎧には、鎧級という最大積載可能重量による区分がある。


自動鎧のフレーム

車でいうところのシャーシ。ただし、原動機と判然一体となっているので厳密には違う。

同一のフレームから作られた姉妹鎧でも、装甲や標準装備などの都合から微妙に細部が異なる。

フレームのみでも動くことは可能。



トラッシュ・ハウンド

陸上戦の要が自動鎧になった自動鎧の過渡期に製造されたハウンド系自動鎧。

ハウンドは主に狩猟に用いることを想定したアンダーブリッジ社の自動鎧のブランドだが、これは対鎧まで想定した突撃自動鎧アサルト・アーマー

対人及び対鎧に特化しており、中自動鎧ミドル・アーマーでありながら重自動鎧ヘヴィ・アーマークラスの装甲を持つ。パージ・ナイフ対策のため関節部の遊びはない。両腕にはブラス・ネイルと対鎧銃オン・ザ・アーマーを標準で搭載されている。

重量、機動性、旋回性、燃費の悪さ、積載可能量の少なさがネック。

対人なら力尽くで、ライトやミドルを相手取るときは装甲で攻撃を止めて内蔵装備で木っ端微塵に、ヘヴィ相手なら旋回性で上回るので勝てる、という算段。

他のハウンドが名に付く鎧とは全く性能が異なり、動き回ることは不得手。

なお、この鎧がラスボスとして登場するアクション映画「闇の中」シリーズは、アンダーブリッジ社のライバル会社であるオーシャン・インダストリアルが協賛に入っている。


ハルベルト‐69H

ハルベルト社製の対鎧銃オン・ザ・アーマー。69年モデル。

Hはハンドを意味し、素手での使用を可能としているため。昨今は念力によって銃を操ることが多いため、グリップやトリガーがないノン・グリップ式が主流。

しかし乗っ取りを防ぐために、従来のグリップ式を採用している特殊部隊もある。


グランレイン・リヴェンジャー

グランレイン社製のリボルバー。

事故とリコールが頻発していたグランレイン社が原点に立ち返り、社運を賭けて開発したもの。

リボルバーで初めて、当時の最新技術だったガン・アイを搭載した。

リヴェンジャーの名は伊達ではなく当時は人気を集めたが、今では流行遅れの品。


ガン・アイ

銃に搭載するカメラ。射撃統制システムと連動して照準補正で使用される。出力はテレパシーで直に使用者の脳に映し出すのでディスプレイ不要。(盲目のガンマンとか熱い)

別称として用いられるスワロー・アイは、ユニバーサル・デザイン・カンパニーの商標。


ステンド・ファルコン

オートマチックのアーマーハンド。アーマーハンドは自動鎧サイズのハンドガンのこと。

アーマーハンドにしては口径は小さい38口径。

グラス・パンサーの標準装備で、腿に内蔵されている。使用時は任意で射出して引き抜く。オプションパーツを購入すればピンク・パンサーにも搭載できる。

ちなみにFalconではなくFlacon。



以下、余談。

四話にして未だに主人公の名前が明かされていないのに、登場すらしなくなるという暴挙。そもそも奴は本当に主人公なのかと作者も疑問に思い始めている。というか本当に人なのか。

これ、もしかして主人公はマルなのでは。タイトルにも名前入ってるし(今更)。


まぁ彼がいなかったら話が動かないので、必要なキャラであることに変わりはないんですけどね。

プロットの段階だと、もっと主人公(仮)が活躍する場面は多かった筈なんですけど……。シュシュが可愛くてじゃなくて、自動鎧の設定を懲りすぎたせいで、どうしてもワイルド・マグナムの見せ場を序盤に作りたくなった結果、主人公(仮)の活躍はシュシュに奪われることになりました。

三章か四章辺りには主人公(仮)専用鎧も登場する予定なので、それでなんとか。

いや、もっと先かもしれない。

ともかくその前に、主人公(仮)じゃ後書きを書くのも不便なので、早く名前をどうにかだな……。粗筋に思いっ切り書いてあるけど。


いつになったら戦記物に移行できるんすかねぇ……?

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