人と、人の営みに祝福を
米軍の機動部隊から、アリシアの回線に交代の連絡が入った。技術的問題は解決したので、予定より遅れてシフトに入るとの連絡だった。
もちろん、それはアリシア達を現場から遠ざける為の嘘だ。
社会奉仕活動確定だった。こんどは百時間ではすまない。アリシアは深いため息をつき、声を発した時には、もうスイッチが入っていた。
「シーカー起動。全機、火器統制装置チェック」
【ピクシー】のFCSが起動し、視界を画像解析ソフトのカーソルやコンテナがちらちらし始めた。アリシアの担当すべき警戒範囲は、薄い青の領域で明示された。
シーカーの熱感知素子が、熱雑音を防ぐために冷却され始める。
『目標は、米軍軽機動戦闘車両。無人化車両なので殺害の心配はない。戦意の喪失もあり得ない。機能停止が必要』
キオミの声は、いつも以上に平板だった、かなり興奮しているみたいだ。
「キオミ、「あれ」使う状況じゃない?」
『アリーの言う通り。性能差は明確。溝を埋める必要がある』
「チャーリー、準備してくれる?」
「ええー嫌だぜい。ゲーム終わっちゃうかも。トラッシュにやらせろよぉ」
「オーダーよ。チャーリー」
「……りょーかい」
しぶしぶだけれど、チャーリーは納得した。
アリシアは、全機の生体反応を確認してから、『ハルシオン』の作戦にはつきものの、例のおまじないを口にした。
「人は乗ってないから遠慮はいらないわ。じゃあ、一応、言っておくわね――」
これって、いつも思うんだけど、なんか宗教みたいじゃない?
「行動を開始する……『人と、人の営みに祝福を』、キオミ」
『全機、必要な攻撃を許可する』




