理屈では説明できない胸騒ぎ
その会話とはべつに、カイトの声が聞こえた。
「なあ、アリーとなんかあったのか? ヌエ」
それを聞いて体が強張った。アリシアは、あれから唯斗と口を聞いていない。
「べつに……なんでそう思うの?」
「なんとなく」
「それより、カイトはなにも感じない?」
「なにってヌエ……米軍の連中か? ま、不信だな。それ以上はなんとも」
「キオミ、いま何人確保できる?」
唯斗は、予備のピクシードライバーについて尋ねた。
『いま、ちょっとがシフトが狂っていて、調整中』
これ以降のシフトは、予備も含めて米軍の担当になっていた。ピクシードライバー達にもリアルでの生活はあるので、急な予定の変更は難しい。
「もしかして、一人も?」
『一時間で解決できる」
一時間……。
アリシアは、それを尋ねた唯斗の真意を測りかねた。
「ヌエ、どういう意味?」
「さあ、自分でもわからない」
唯斗の言っていることが、アリシアにも理解できる。それは理屈では説明できない胸騒ぎみたいなものだ。
辻褄が合わない、とアリシアの本能が訴えていた。
なにかがおかしい。なに、と聞かれても答えることはできないけれど。
「ねぇキオミ。一台ずつ装備の換装って可能かしら?」
『換装? いったい何に?』
「対戦車ミサイル。その他もフル装備で」
『どうして、と聞いても無駄?』
「そうねちょっと説明できない。あえて言うと、後悔したくないってとこかしら」
キオミは少し思案していた。おそらく、キオミも不安を感じているのだ。ニブい奴は戦場で生き残れない。臆病すぎるくらい慎重でも、まだ足りないくらいだ。
『ヌエは、どう思う』
「……べつに反対する理由がない。そうするべきだと思う。理由はないけど」
『了解、トラッシュから始めて』
唯斗の後押しで、キオミは納得した。アリシア達は、唯斗の直感を信頼している。
危険を嗅ぎ分ける、という一点については、唯斗は一度も、間違えたことがなかった。
 




