表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/87

たしかに面白くない

 作業自体は簡単に終わった。アリシアとしては、拍子抜けで、むしろフラストレーションがたまったくらいだ。

 キャンプ自警団の戦闘車両は、対戦車ミサイル(フランキスカ)の直撃を受けて、全て炎上していた。


 予め不可視レーザーで標識し、出現した標的コンテナに、対戦車ミサイル(フランキスカ)を割り振っただけ。

 【ファハン】(ドローン)も使って、上空から多目標指示を行ったので、一瞬で攻撃は終わった。延焼が広がらないように、燃料や、付近の建造物を避ける方が神経を使った。


 アリシアたちの熱工学迷彩は、白と黒いレタリングのUNカラーモードをやめて、背景追従モードで稼働していた。カメレオンのように背景に紛れ込んでいて、消火活動であたふたする自警団の兵士に、【ピクシー】の姿は見えていなかった。


 戦闘車両からの炎は、屋根覆いを飲み込んで、黒煙を上げていた。全機のカメラ情報から、複数個所の、慌てふためく様子が見て取れた。陽動としては十分以上の成果だろう。

 バケツリレーを始める兵士がいて、燃え盛る車両を車庫から出そうとする兵士がいた。危険なので、誰か止めた方がいい。


「ぷぷっ」


 その様子を見て、チャーリーが吹きだしていた。確かに滑稽だけど、ちょっと不謹慎だ。だって火を放ったのはアリシア達なんだから。


「あっけないわね」


 とアリシアは言ったけれど、これが完全にコントロールされた結果だ、ということも分かっていた。

 機体の割り振りから、侵入ルート、攻撃位置、注意すべき脅威、唯斗は、グーグルの画像から任務の詳細をお膳立てしていた。

 結果的に、的外れな見積もりはなかった。ハプニングも、ニアミスもなし。一連の行動は、作戦ではなく、「作業」だった。


――ヌエ、これではわたしの立場がない。

 と、キオミがむっとしていたくらいだ。


「つまらない」と、トラッシュがぼやいた。

「たしかに面白くない」と、カイトも同意した。「これはゲームじゃない」

『怪我人が出なかったのは幸い。撤収する』


 キオミは、消火活動を笑うチャーリーに腹を立てているようだ。声が尖っていた。


「キオミ、ちょっと提案なんだけど」

『……今度は、どのような根拠で?』


 諦めムードでキオミが尋ねた。


「人道活動よ。難民キャンプに、防疫スタッフが孤立してる。安否を確認するべきじゃない?」

『アリー。自警団は腹を立てている。今、もし顔を合わせれば、本格的な戦闘になる。難民キャンプに怪我人を出すわけにはいかない』


「それはそうだけど……迷彩があるし。ちょっとだけよ。キオミ」


 キオミはため息をついて、考え込んでいた。


「思ったより火勢が強い。延焼が起こらないか、観測の必要がある」


 唯斗が後押しをしてくれた。ナイスフォローだ。キオミは唯斗に甘い。

 しばらく考えていたキオミは、やがて吹っ切れたように、大きめの声で言った。


『気づかれたら即座に撤収。スタッフになにか起こっても、対応はPKF兵士にまかせる。約束できる?』

「了解。ヌエ、座標をお願い」


 唯斗は、感染者発生のポイントを、マップに標識した。

 そこは、アリーのポジションから、わずか一キロの距離だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ