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そんなこと関係ない

「アリー?」

「わかってる。呆けてる場合じゃないわね。どうするの?」

「イツキが望んでいたのは陽動だ。ぼくに考えがある」

「……ヌエに、考えが?」

「なんか失礼だな……キオミ、聞いてたかい?」

『聞いていた。退屈だったから。説明を、ヌエ』


 作戦オペレーターのキオミは、ちゃんと話を聞いていたようだった。

 

「えっと、ぼくの外部記憶は……これだ。最近、グーグルの衛星画像が更新されたんだ。難民キャンプの様子が鮮明に写っている。マーキングしておいたけど、ほら、ここと、ここと……轍に燃料のドラム缶……草や枯れ枝で偽装しているけれど、自警団の戦闘車両が隠されている」


 唯斗は衛星の画像を表示して、マーキングの位置をカーソルで示した。


「自警団の連中が強気でおイタを繰り返すのは、逃走の手段が確保されているからだ。機動力を失えば、ずいぶんと大人しくなるだろうと推測する」


 唯斗の言わんとしていることが、アリシアにも理解できた。

 こうしてアリシアがうじうじしている間にも、唯斗はずっと、たぶん、寝ている間も、どうすれば争いを終わらせることができるか、打てる手を考え続けていたのだ。

 ちょっと、しびれた。


「こんなことは米軍の方でも掴んでいるだろうとは思うけど、彼らは国連憲章に縛られて積極的には動けない。だけど――」


 アリシアは、唯斗の言葉を引き継いだ。


「だけど、そんなこと『ハルシオン』には関係ない」

「たぶん、驚くと思うよ。陽動としては十分だろう?」

『個人的な動機の作戦に、『ハルシオン』を利用する気?』

 キオミが咎めるように言った。


「なんか、反対する理由がある? 誰も死なないし、誰も傷つけないわ。あの芸術作品たちが地上からいなくなるのは寂しいけど」

『……作戦番号を取得する。今回の目的は車輛の破壊。もし、戦闘車両に乗員がいた場合は、諦めること』

「ありがとう、キオミ」

『これは貸し。いずれその分は働いてもらう。侵攻作戦用に装備を換装して』


 米軍にベースがあるように、『ハルシオン』にも地元の有志で運営される補給基地がある。それは防疫キャンプがある丘陵のふもとで、米軍のベースとは反対側だ。

 そこには、美術品や産業機械部品に偽装して持ち込まれた部品が集積されている。

 もともと整備工はボランティアの人達なので、志は高く、秘密は保たれていた。士気も申し分ない。換装は唯斗が言った半分の時間で完了するだろう。

 アリシアはチームに装備の換装を指示した。みんな退屈していたので、特別、文句は出なかった。


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