【CollaboratorsOnly】
そのゲーム機は、まさに、アリシアが求めている物だった。
父が――というか、父が買い物を頼んだ秘書は、ゲームソフトをたくさんつけてくれていた。
アリシアは、アクションパズルや、アクションアドベンチャーなどの頭脳系ゲームが好きだった。
ゲームを物色していると、あるゲームがアリシアの興味を惹いた。それは緑の蛍光色ベースに鉄錆色のイラストをつけたパッケージで、イラストは武装したテロリストとバイクに補助輪を二つつけたみたいな、変な形の戦車だった。ゲームのタイトルは『バルバロイ』。
アリーは、このソフトを最初のゲームに決めた。すごく悪趣味で悪くない。暴力的で、流血描写があって、R指定。父親が顔をしかめそうなゲームだった。むしろ、すごくいい。
最初にプレイした時は、VRインターフェースの現実感、臨場感に圧倒された。
二回目に感じたのは、――こんなはずじゃない――という思いだった。
いまはパッド操作や画像判断処理には、脳に回路が出来るまで時間がかかることを知っているけれど、その当時のアリシアには屈辱感しかなかった。
思い通りにならない存在は初めてだった。
そのゲームは、バイクのような戦車を遠隔操縦して、世界中のテロリストと闘うゲームだった。ミッションは誘拐された人質の救出だったり、過激派に拉致された大使館員の救出だったりした。
時には、先進国の主力戦車とも戦った。こちらのミサイルが通じない強敵と闘うのは、とても、エキサイティングな体験だった。
夢中になって、寝食を忘れた。
戦績を上げるため、現実の兵器についてネットで研究し、戦略、戦術を学び、特殊部隊の教本まで入手した。
生まれて初めて、真剣になった。
そして論理的思考が、なんの為にあるのかを知った。思考は成果の為に存在する。
気がついたら、他のプレーヤーに名前を知られる存在になって、世界ランキングの上位に名前を連ねるのが当たり前になっていた。
その頃、変なメールが届いた。
出来の悪い翻訳ソフトが訳したみたいな、へんな文章は、だいたいこんな感じだった。
あなたは【ピクシー】ドライバーとして、類いまれな操縦スキルと戦闘のセンスを有していることが認められました。
このメールは「提案」であり、あなたになにかを強制したり、あるいはなにかを約束したりするものではないことを、最初にお断りしておきます。
もしあなたが、いくらかの報酬と、よりリアルな戦闘を望むのであれば、わたしたちは、これまでと違った形の提案をする準備があります。
ある種の犯罪や利潤追求のように、あなたに後ろめたい思いをさせるものではありません。
我々は、人がより人らしくある為に尽力するシステムです。
もし興味があれば、空メールを返信くださるだけで結構です。
提案の内容は、あなたがプレイする『バルバロイ』のインターフェース上に表現されます。
from Halcyon to Ally
スパムメールみたいな怪しい文書には、自動的に割り振られたっぽい、意味不明のメールアドレスが貼られていた。
返事なんかするつもりはなかったのだけれど、その時のアリシアは茶目っ気で、こう返信した。
――返事は、提案の内容を聞いてからでいいかしら。
それから一週間後、アリシアの『バルバロイ』には新しいメニューが追加されていた。
追加されたメニューは、
『CollaboratorsOnly』
協力者のみ、という言う意味だった。




