7.推理クイーン現る
旅館の2階にある食堂。
清美と光一は此処に呼ばれ、瞳が来るのを待っていた。
「お、二人共来てるな」
そう言って現れたのが、瞳である事は言うまでも無い。
「瞳、俺達に話しって何だよ?」
「これから、中村さんの事件の真相を解き明かそうと思う」
その言葉に二人は驚き、
「それって、犯人が解ったって事?」
「教えて下さい。真相を」
瞳は少し躊躇いながら、
「15年前、麓の交番の前で轢き逃げ事件が起きた。
交番の老警官の話では、一人の女性とその息子が散歩をしていた。
男の子は、青信号を渡っており、そこへ一台の車が猛スピードで走って来た。
それを庇うため、女性は男の子を突き飛ばし、自らが車に跳ねられ、死亡した。
女性を跳ねた車は、止まる事無く去って行ったと言う事だ。
その時の犯人が、今回殺された、中村 総一だ。
そして、死亡した女性の名前が、小山 光。息子の名前が、小山 光一。
その後、女性の夫は後追いで他界し、残された息子は親戚に引き取られた・・・。
これが今回の事件の元凶だ」
と、その時、瞳の目から雫が零れ落ちた。
「瞳?」
「ゴメン。ちょっと目にゴミが・・・」
と言うのは嘘である。
「光一・・・──あの時、温泉に入ってたって言ったよな?」
その問いに、光一は頷いた。
「あれ、咄嗟の言い訳だろ?
本当は、205号室で中村を殺害していた。そうなんだろ?
日下部・・・いや、小山 光一・・・さん」
それから数秒の沈黙の後、
「ちょっと待って。
俺がプロデューサーを殺したって訳?」
「それしか考えられないんだ」
「そんな・・・日下部君が!?」
「そんな馬鹿な事あるか!
俺が殺したってんなら、証拠を見せてくれよ!」
「交番にいた覆面をした人物、お前だろ?」
「何の事だかさっぱりだけど?」
と、その時、例の物が到着した。
「これは、お前が交番で老警官を脅した際に被っていた覆面とカッターだ。
これでもまだ、犯人じゃないと言い張るか?」
すると、光一は膝を落とした。
「何で・・・何であるんだよ?
折角川に捨てたのに、拾って来たのかよ!?」
「へえ、川に捨てたんだ。
オッサン、警官を総動員して周辺の川を調べて」
瞳がそう言うと、刑事は無線で連絡を取った。
「ふっ、俺をはめる為の罠だったのかよ?」
と、苦笑いをする光一。
「全部話してくれない?
どうしてこんな事したのか、あんたの口から・・・」
「偶然聞いちまったんだよ。プロデューサーの話をな」
そう言って、光一は話し始めた。
まだ続くよ!