5.動き出す瞳
前回のを読み返したら、デザインが思いっきり崩れてました。
MacとWindowsだと、表示のされ方が変わるのね。
今後は、気をつけたいと思います。
と言う訳で5話スタート!
旅館のロビーにある椅子に、清美は腰掛けていた。
その清美の向かい側には、瞳が座っている。
「折笠さん・・・──一つお聞きしますが、被害者の中村さんとは、どう言った御関係で?」
「どう言ったって、仕事仲間としか答えようが無いんですけど・・・」
「では、最後に会われたのは何時?」
「一昨日のロケの打ち合わせの時です」
「その時、何か言ってませんでしたか?」
そう聞かれ、清美はその時の事を思い出した。
『俺、死んじゃうのかな?』
「『俺、死んじゃうのかな?』──そう言ってました」
「(俺、死んじゃうのかな?──成る程・・・。)
他には何か言ってませんか?」
その問いに、昨日の事を思い出す清美。
「そう言えば昨日、突然日下部君の今日のロケが中止になったって、電話で言って来たんです」
「突然のロケの中止?」
「ええ、私も何でかちょっと分からなくて・・・」
と、清美は顔を下に向けた。
(突然のロケの中止と今回の事件・・・──関係がありそうだな)
そう強引に結び付ける瞳。
「お話聞かせて頂き、ありがとうございます」
そう言って立ち上がると、瞳は会釈をし、去ろうとした。
が、何かを思い出し、清美に振り返った。
「あ、もう一つ。
15年前の轢き逃げ事件。お話聞かせて頂けますか?」
と、再び椅子に腰を掛けた。
「15年前の轢き逃げ、どう言ったものなんですか?」
「私はよく知らないんですが、ある田舎の道路で、女性が跳ねられました。即死だそうです」
そうですか──瞳はそう言うと、今度は本当に去って行った。
「オッサン!」
突然、刑事は声を掛けられた。
「お前か。何か用か?」
と、振り向いて訪ねる刑事。
「15年前の轢き逃げについて、警察なら何か知ってるだろ?」
「あの時効になった事件か?
その事なら、麓の交番で聞け。現場、その交番の目の前だったからな」
「サンキュー、オッサン!」
そう言って、駆け出して行く瞳。向かった先は麓の交番である。
玉川の麓の交番で、老警官が椅子に腰掛けていた。
そこへ、覆面をした者が一人、やって来た。
「何だ!?」
と、老警官は言う。
男は無言で、老警官にナイフを首に当てがった。
「あの日起きた事件の事、次に訪ねて来る人には言うな」
と、その時、
「何やってんだよ!?」
と、瞳が叫んだ。
覆面はナイフを瞳に向けると、立ち去って行った。脅したのか?
「お爺さん、大丈夫か?」
「あ、ああ」
「全く、物騒な世の中になったもんだぜ」
瞳はそう言った。お前が言うか?
「なあ、爺さん。
15年前ここで、事故があったんだってな。その時の事、話してくれないか?」
だが老警官は、首を横に振った。
「どうして?」
「言ったらワシは殺される」
「さっきの奴か?」
その問いに老警官は頷いた。
「大丈夫、あいつは殺さないさ。手元が震えてたからな。
それより、話してくれないか?」
老警官は頷くと、
「解った、話そう」
そう言った。
「あれは、15年前の今日だった・・・」
それは、15年前の今日。
玉川の麓の交番の前で、一台の車が一人の女性を跳ねた。女性は即死、轢き逃げだった。
女性の名は、小山 光。
当時、小山 光は、息子と散歩をしていたそうだ。老警官が言うには、小山 光の息子が、青信号を渡っている途中、車が猛スピードで接近し、それに気付いた母親が、息子を庇う為に突き飛ばし、車に跳ねられ、死亡したと言う。
その後、父親が後追い自殺で他界。息子は親戚に引き取られた。
「成る程。
それで、息子さんの名前は?」
そう言って、老警官に耳を近づけた。
老警官は耳元で囁いた。
(マジ!?)
一体、何と言ったのだろうか?
このストーリーももうすぐ終わる!
それまで辛抱してくれ!(誰に言ってんだよ?)