3.温泉旅館殺人事件
温泉旅館、新玉川温泉。日本一酸が強い温泉で有名な旅館だ。昔は、玉川温泉と呼ばれており、此処より上の方に建っていた。
しかし、食中毒事件が起こり、場所を変え、新玉川温泉として、新たに建て直した。それがこの旅館である。
「はあ、やっと着いた」
と、此処まで来るのに体力を使いきった瞳はそう言った。
「なんだお前、体力無えなあ」
そう言ったのは、瞳を見つめる光一だ。
(オメエが異常なんだよ・・・)
と、それは敢えて口に出さない瞳。
「さて、チェックインするぞ」
瞳はそう言って、フロントの前に立った。
「さっきまでバテていた癖にこう言う時は元気があるんだな。」
光一はそう呟いた。
「予約した黒田です」
瞳はそう、フロントの人に言った。
フロントの人は、傍にあったファイルを取って開き、予約のリストを確認する。
「黒田様は、御予約されておりません」
「はあ?」
「待って、俺の名前で予約してる」
そう言ったのは光一だ。
「日下部 光一・・・──それで予約しました」
ホテルマンはそれを探す。
「日下部 光一様ですね。予約承っています」
そう言って、名前にチェックを入れると、ファイルを閉じて置いた。
「日下部様には特別にVIP室を御用意させて頂きました」
そう言って、VIPルームの鍵を渡した。
流石芸能人。庶民とは扱いが違う!
「部屋はオートロックになっていますので、部屋を出る際には必ずお持ち下さい」
部屋に到着した二人は、早速中に入った。
「これがVIPルームか・・・庶民とは違うね、やっぱり」
瞳はそう独り言を言った。
直後、瞳は荷物を置くと、ベッドに駆け寄り、その上に倒れこんだ。
「おっ、ふかふかじゃねえか!」
そしてそのまま、瞳は眠りに入ってしまった。
ZZZzzz...
「ぎゃああああ!」
瞳はその悲鳴で目が覚めた。
瞳は、何だ、と言う顔で、部屋の入り口まで来て、足を止めた。
(鍵忘れてた)
と、瞳は部屋のテーブルに置いてある鍵を取りに戻ると、今度は本当に部屋を出て行った。
「何があった!?」
と、瞳が駆け付けてみると、部屋の扉が半開きになっており、その部屋の奥で男性が、胸を包丁で刺されて死んでいた。
「大丈夫か!?」
と、瞳は男性に近付いて、安否を確認した。
(死んでる・・・)
ガシャン!
──突然、瞳に手錠が掛けられた。
「殺人の現行犯で逮捕する!」
そう言ったのは、如何程刑事とでも言う様な感じのオジサンだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!
オレは偶々駆け付けただけで殺して無え!」
瞳は必死に訴え続けたが、受け入れては貰えず、外まで連れていかれてしまった。
「ちょっと待った!」
と、運良く光一が現れ、瞳を連れていくオジサンを引き留めた。
「瞳を何処へ連れて行くんですか!?」
「殺人の現行犯で秋田県警に連れて行く」
「瞳はそんな事出来ません!」
「何を言う?こいつは現場に一人でいたんだ」
「オッサン、馬鹿だろ?」
と、瞳は言った。
「何?」
「考えてでもみろ。オレが犯人なら、返り血を浴びてる筈だぜ」
そう言えばそうだ──そう呟いた刑事は、瞳を解放してやった。
瞳が疑われました。