第2回
天奈は自分と同じ境遇の亮と出会った。
自分の弱さを打ち明けられる人と出会った。
やっとできた味方である亮と一緒に、あのコを助けるために天奈は動いていく。
その影には知らない人影が・・・
2.仲間
天奈は泣いている。泣き続ける。亮は見守っている。
天奈には、その亮の心遣いが嬉しいと思えた。どうせ、止められても一度溢れた感情は止まらない。泣くのがとまっても感情の奔流は天奈の中で暴れる。
亮もそれをわかっているから無理には止めず、見守っている。そして、溢れた言葉と感情を受け止めている。
「恐怖する言葉でも、恐怖しちゃいけなかったはずなのに・・・」
感情の奔流と共に後悔の言葉も止められずに、天奈の口からは自身を責める言葉が流れ続けた。
「あのコを助けるって言ったのはわたし自身なのに。こんな状態じゃ、あのコを助けられない・・・」
亮は沈黙を守っていたが、突如口を開く。
「何のために俺と手を組んだんだ?あのコを助けるためだろ。お前が恐怖してだめな部分は俺がカバーしてやるから、最初の『助ける』って気持ち、忘れるなよ」
普通、こういう時に自然と出てくる言葉、"協力"を亮は使わなかった。言葉の端々に亮の優しさが満ちている。
「ありがとう。そうだよね。このままじゃわたしがここに来た理由まで否定するところだった。本当にありがとう、亮」
目は泣いたせいで赤かったが、吹っ切れた表情で天奈は言う。
「今日は完全に吹っ切れたわけじゃないから、ごめん・・・あのコを探すのは明日からでもいい?」
「ああ、いいよ。帰ろうか」
「うん」
二人は、家にはいなく、いつでも一緒ではないが自分を受け入れて心配してくれる相手・・・・・・お互いのことを思いながら同じ帰途について、歩き始めた。
次の日、天奈は前日より遥かに軽い足取りで学校に向かう。
自分の事を気にかけてくれる人がいる。そのことが天奈の心を軽いものにしていた。
自分は仲間がいないんじゃなく、仲間がいるんだ。いままで自分の事を、他の普通の人とは違うものなんだと、思い続けていた天奈には亮の存在が大きく感じられる。
自分の事をいままで、「ここにいてはいけない存在なのではないか」と天奈は悩み続けていた。自分の暗い過去は普通の人たちの普通の生活まで破壊してしまうのではないかと・・・。
でも、いていい存在なのだと思えた。
亮のことを考えるとき、天奈の心には暖かく、今までに感じたことのない想いで満たされる。それがなんなのか、天奈にはわからない。
天奈が学校の玄関にはいっていったとき、亮は校門を数人のクラスメート達とくぐるところだった。
亮も先ほどの天奈と同じようなことを考えていた。亮も、自分はこいつらのそばにいる価値のない存在だと思って生きてきたのだ。
でも、自分より不安定な感情を持つ天奈の話を聞いた昨日、自分が聞くことで少しでも天奈の重荷が降りるのなら、自分がここにいる意味はあるんじゃないか、と思い始めていた。
ふと、亮は自分の心を満たしている暖かい感情に気付く。今までに感じたことのない想いに困惑しながらも、こんな想いにさせてくれた天奈に感謝する。
しかし、亮もその想いが何なのかわからないでいた。でも、その想いに浸っていたいと願った。
昨日、二人は放課後に裏門で待ち合わせ、という約束をした。そのせいか、その日の時間は二人にとって早く過ぎ去っていく。
昼休み。天奈は職員室へ足を向ける。入部届けを今日提出することになっていたのである。天奈は前の学校と同じアーチェリー部に所属することにした。
入部届けと必要な書類を持って歩いていて、角を曲がった瞬間、段ボール箱が走ってきた。正確には、段ボール箱を抱えた生徒が走ってきたのだが。
その生徒は、猛スピードで走ってきたので避ける間もなく天奈に激突した。
「あっ」
天奈の小さい悲鳴。
書類が舞う。
その場にいた数人の生徒が親切にも━ただ読みたかっただけなのだが━書類を拾う。そして、その内容を読み始める。たちまち賞賛の声が場に満ちる。
天奈は立つことも忘れ、床に座ったまま額に手をやり肩を落とした。
どうでもいいことだと天奈は思うが、天奈は全日本高校アーチェリーの覇者なのである。そして、亮と同じくテレビにでるときもあるので、やっぱり顔が売れている。
その上、運の悪いことに、書類を見たのは噂好きの女生徒たち。
「早く返してくれない?」
天奈は声をかけるが、女生徒たちは勝手に盛り上がってしまっている。とても手がつけられる状態ではない。
「女王様が二人に増えたね〜。全国一の女が二人もいるなんて、やっぱこの学校、部活とかに力入れてるよね〜」
そんなことを暢気に話されていては書類の提出が遅れてしまう。そういうことを我慢できない天奈は強引に書類をつかみ、職員室の方向へ足を進める。
女生徒たちは未練ありげな視線を送っていたが、追いかけようとまではしなかった。
夕方。テスト勉強期間として、部活が一週間休みになっていたので天奈は亮との待ち合わせ場所である裏門にきていた。亮の姿はまだない。
どうせ、ファンの子にでもつかまっているんだろうな。天奈はそんな事を考えながら、自分が今、抱いている感情はなんなのだろう、と思った。
心にチクリと刺さってくるようなこの思い・・・。
そこで天奈の思考は停止した。
「待ったか?」
亮が来たのだ。
「あのコを本格的に探すんだからもっと早く来てよね」
口ではそう言いながら、天奈は安心を顔にうかべる。
「わるい。関係ない奴がついてこようとしたから撒いてきたんだ」
亮は本当にすまなそうな顔をして言う。
「お二人さん。いまからアツイね〜」
いきなり声をかけてきた人物がいた。男女の2人組み。初対面のはずなのに、その2人には見覚えがあった。ショートカットの女子で、制服は天奈と同じ。天奈を綺麗と表現するなら、こちらは可愛いと表現できるであろう顔立ち。そして、その人物の後ろからまた一人、今度は亮と同じ制服を着た男子が現れる。こちらは、亮と同じ無造作ヘアーではあるが、少しおとなしめの髪をしていた。
「いきなりそんな言葉をかけるの?」
「別にいいじゃない。あっ、自己紹介忘れてた。わたしは三波 渚で、こっちは地頭 千尋」
渚が2人分の自己紹介を行なった。
名前を聞いて、天奈は2人に感じていた既視感の正体がわかった。2人とも、天奈や亮と同じで有名なのだ。
渚は合気道の女子全国大会の優勝者だし、千尋はバイオリン、ピアノなど数種類の楽器を使いこなし、天才だと称されている。
渚と千尋が再び口を開く。
「でも、アツイね〜はないんじゃねーの」
「だって、さっきの二人はカップル以外の何者にも見えなかったじゃない」
渚の言葉に天奈は顔が赤くなっていく。亮は顔を横に向けていたが、顔が赤くなっているのは隠せなかった。照れ隠しなのか、少し乱暴な言葉で亮は二人に疑問を投げかける。
「なんでここにお前らがいるんだよ。何か用でもあんのか?」
それは、天奈も思ったことだ。一般の生徒は今、全員家に帰っているはずなのにこんなところにいるなんて何かの目的があるに違いない。
返答ではない言葉が千尋の口から出される。
「亮クン。君の探査能力はランクCってところだね」
ランク?まさか・・・・・・・!!
「あいつらの仲間なの?もしかしてあのコを狙って・・・」
「違うよ。あたし達はあいつらより君達の仲間だよ。いままで、二人であのコを探してたんだから」
渚が天奈にこたえる。
「あいつらが来ても自分達が見つからないように、隠蔽レベルAを発動してたんだ。だから、亮クン、君の探査能力では見つけられなかった。でもね、ボクの探査能力はA。前から君の存在を知っていたんだよ」
「そこはどうでもいいけど、あたしらはあんた達と同類。お仲間なんだよ“後覚醒”だから」
渚と千尋の言ってることはわかった。でも一体何をしに?
「あたしと千尋もあんた達と手を組もうと思ってね。約束してるのを聞いたからここで待ち伏せしてたってこと」
この二人も一緒に・・・。
探査能力とは天奈達の同類である、暗い過去を持つ者を見つける能力である。その能力は個人で決まっているのだが、天奈と亮はそれが低い。
探査能力Aがいればあのコをすぐに見つけられるだろう。
「亮。四人でやろっか」
「そうだな、いいかもしれない。俺達だけだと見つけられないかもしれないしな」
二人の合意で、これからは四人であのコを探すことが決まる。
「商談成立。じゃあこれ、あたしと千尋のパスだから」
渚は仲間となった二人に小さな紙切れを手渡す。そこには
「渚・・・純真
千尋・・・希望」
と書かれていた。二人のパス。
「そっちのパスだけ知ってんのもおかしいし、俺達のパスを教えるよ」
亮はそういってメモを取り出そうとしたが、
「二人のパスは知ってるよ」
と、千尋にさえぎられる。
「なんで知ってるの?」
天奈の疑問は至極もっともなこと。なぜ、初対面のはずなのにパスを知っているのか?
「簡単さ。天奈クンのことは転校してきた日からちょっと監視させてもらってたんだ。あいつらとのつながりがあるかもしれないと思って。つながりはなかったけどパスとかはそのときに聞いたんだ。渚じゃないけど、ホントにアツイね〜、と思っちゃったよ」
せっかくもとに戻った天奈と亮の顔色が、またも赤に染まっていく。
この二人には、天奈が泣いているところもばっちり見られていたのだろう。
「っとまぁ、これからよろしくっ」
渚はそう言って天奈に、千尋は亮に右手を差し出した。天奈と亮は、渚と千尋の顔を見ないようにしてその手を握る。
そして、これからの事なんだけど・・・、という天奈の一言で四人は話し合いを始めた。
「この中ではボクが一番探査能力が強いわけなんだけどね、そのボクの力でもあのコがどこにいるのかはわからない。正直いって、手がかりがあの『声』くらいしかないからなぁ」
一番に発言したのは千尋だった。内容は全員を焦らせるのに足る内容。一番探す力が強い千尋でも見つけられない。そんな人物をどうやって探せばいいのか、誰にもわからない。
唯一の手がかりである、あの連絡。思念のような声だけだが、あれを頼りに探すしかない。
しかし、その声もあのコの声と同じだという保証はない。
広大な砂漠から一粒の砂金を探すに等しい望みの薄さ。
亮が一瞬、何かに気付いたようなそぶりを見せたが、すぐに下を向いた。
「こ・・・か・・・・・・」
亮は何かを言ったようだ。しかし、聞き取れたものはいない。
「この学校にいるのは違いないんだから。だったらしらみつぶしに探す。ただ、それだけだよ」
渚は諦めていない。もちろん、他の三人も諦めるつもりなど、毛頭もない。
望みの薄さに愕然としたが、こんなことで諦めるわけには、引き下がるわけにはいかないのだ。
「じゃあ、ここで問題なのは探し方だよね。何かいい方法があるかな」
天奈はいま話し合うべきことを口にした。話していないと、見つけられる確率がどんどん減っていく気がしていた。
「探し方・・・か。どんな方法が有効なんだろうな」
亮も口を開く。少し上の空のような声ではあったが。
「姿もわかなんないんじゃ、渚の言った通りしらみつぶしが有効なんだろうな」
「有効っていうか、それしか方法は無いと思うけど」
千尋の考えに渚が返したとき、天奈は亮のことを考えていた。
さっきから、ちょっと上の空に見えるんだよね・・・。何か考えでもあるのかな?
亮はまだ遠くを見つめているかのように、心ここにあらずを体現している。
「みんな少し自分の考えをまとめてみよ。何か思いつくかもしれないし・・・」
天奈はそういって、黙り込んで思考に没頭した。渚と千尋も同じく自分だけの思考に沈む。
亮の邪魔をしてほしくない。天奈が考えていたことはそのことのみ。亮の思考が、今何を紡ぎだしているのかはわからないが、重大なことに思えた。
何を考えているのだろう・・・
天奈の問いの答えは唐突に吐き出される。
「そうだ!!あの声聞いたことがあるんだ、学校で!!」
亮がいきなり口を開き、吐き出した言葉。三人は最初、わけがわからず唖然とする。そして、亮の声は続く。
「あの連絡で聞いた声。あの声と同じ声の持ち主が三年生にいたはずだ」
その言葉を理解するのに、三人は数秒の時を要した。
「聞いたことがあるの?!」
理解するのと同時に、天奈の口は言葉をこぼしていた。
「ああ。この学校の三年生の中に同じ声の人がいる。ただし、さっき言ったように声と人物が一致しているかはわからないから、あのコじゃないかもしれない。というより、その人は・・・なんというか、あのコとは思えないんだよなぁ」
中途半端な意見が亮からもたらされる。
さっきまで考えていたことは・・・これ、だったんだよね・・・・・・。
天奈は違和感を感じていたが、口に出さずに亮の言葉に耳を傾けた。
「あの人って言うのは、神名川 星撫さんことだよ。あの神名川グループ総帥の孫の。あの人の人柄的にあのコっぽくないだろ」
確かに・・・。
全員がそう思った。今話題に上っている神名川星撫は、あのような頼み方をする人ではない。甘やかされて生きてきたからか、心の芯が弱い。
しかも、誰に対しても、たとえ急いでいても頼むときは「お願いしますね」とノンビリ喋る。
そんな人があのコだとは到底思えるはずがなかった。
「でも、手がかりはこれしかないんだよな〜。・・・賭けてみようよ!!」
渚は、自分の逡巡を押し隠すようにして語気を強める。
「たしかに、ここは賭けてみるしかないと思うが、あの人は日本有数の財閥のご令嬢。ボク達みたいな一般人はほとんど近づけないよ。いつも他の財閥のご令嬢達と一緒にいるし、ボディガードだってついている。あのチカラを使えばボディガードなんて関係ないが学校では使う気はないだろう。渚クン?」
「うぅ・・・。そうだった・・・」
千尋のもっともな意見に攻撃を食らわされ、渚はいつもの調子戻りつつあった。
「ねぇ。神名川さんって校内で有名人だしクラスメートから聞いてどんな人だか解っているけど、わたし達なら会ってくれるんじゃない?」
唐突に聞こえてきた天奈の意見に千尋と渚が振り向いた。亮はさっきから天奈のほうに顔を向けてはいるのだが、またも上の空。
やっぱり、別のことを考えていたんだね・・・。大事そうな気がするからそっとしておくね・・・。
天奈は亮への関心を無理矢理心から引き剥がして、千尋と渚に自分の考えを打ち明ける。
「わたし達ってなにかしらトップとかとってるじゃない。わたしはアーチェリーで、渚は合気道ってふうに。たしか、これからの時期って試合やコンクールが多かったはずだよね。
いろんな人に激励の言葉をもらうからもしかしたら・・・」
「それは必ず成功するよ」
真っ先に天奈に対して賛同の意を示したのは、上の空になっていたはずの亮だった。
途中から聞いていたのだろう。もう一度亮が喋り始める。亮の意見がこの場の空気を支配していく・・・・・・。
「神名川グループが全国フェンシング大会のスポンサーになってるんだ。・・・それだけじゃないだろうが・・・・・・あの人は俺の試合の前に必ず俺を訪ねてくるんだ。家までな」
亮は罪悪感を感じているような声で言う。そして一瞬顔をしかめた。
へぇ。あんなおっとり系の人がそんな大胆なことしてたなんてね・・・。天奈にとっては辛いことだろうな。
渚の思ったとおり、天奈の心は動揺していた。
天奈は自分がなぜそれほどまでに動揺しているのか、いまいち分からないでいた。自分の想いにすら気付いていないのだから分かるはずもない。
何でだろう?亮の話を聞いてから、胸の中がモヤモヤしてるような気がする。
その思いは、天奈の心をかき乱しながら、それと逆に天奈の表情を消していく。
千尋は天奈の変化をあまり読みとれなかったが、━同性だからだろうか━亮の変化には敏感だった。
亮が顔をしかめたのに気付いたのは千尋だけだったし、亮の声が秘めていた罪悪感を正しく理解しているのも千尋だけだった。
千尋は前から亮のことをこう分析していた。『自分にとってあまり関係のないことには、普通に接することができるが、本当に大切なものには奥手』だと。
亮は自分の話を天奈の耳には入れたくなかった。しかし、神名川星撫があのコかも知れないと言った瞬間から、覚悟はしていた。
亮は天奈を守りたいと思っていた。初めて言葉を交わした日から、天奈を守るべき人だと思っていた。しかし、自分の言葉が天奈を傷つけるのだとしっていて、それに対しても覚悟を決めていた。
二つの覚悟をしていた。・・・つもりだった。
実際は、そんなものはなくて、後悔だけが亮の心を占めていた。
天奈と亮はお互い、惹かれあっていた。初めてあった時から、共通点があるというだけでなく、直感的に二人の本質が同じであることを悟っていたのだろう
同じであるだけかみ合わず、同じであるほどに傷つけあう。そのことには気付かずに・・・・・・。
「ねぇ、ちょっと」
渚は千尋に小声で話しかけた。
あたりは沈黙で支配され、天奈と亮からは気まずさのオーラが発されている。そんな中で声を出すのは渚にとってもためらわれることだったが、あえて千尋に話しかける。
「今日は、ここらへんで解散した方がいいよね」
渚にしては珍しく、気弱そうな声が千尋の耳に届く。天奈の心を知って、これからすべきことを悩んでいるのだ。それは千尋にもいえることで、千尋は亮の心を知り、悩んでいた。
「ケンカなら、ボク達が仲介してとりもてるんだけどね。この場合はちょっと・・・」
「仲介も何もないわよ。あんな関係なのに、あんな事をいう亮が悪いんじゃない」
渚は、亮の心を知らないので亮に対して悪感情を持ち始めていた。そして、小声なのに語気は強くなっていった。
二人の気持ちを━天奈のほうは少しだが━理解している千尋は、亮の心情を渚に伝える。
その間にも、天奈と亮は相変わらず沈黙を守り、相手を見ずに下ばかり向いていた。
空が暗くなりはじめ、風が出てくる。一陣の風が二人の間を通っても全く反応しない。
天奈の髪がなびいただけだった。
亮の心情を知った渚は一層気を重くする。
「わたし達が相手の気持ちを伝えてあげればいいのかもしれないけど、さらに気まずくさせる可能性もあるのよね・・・。ここは二人で帰らせて、跡をつけるのが得策じゃない?」
「つけてればフォローとかもできるからな・・・。そうしよう」
二人の会議は終わりを告げ、沈黙の空間に目を向ける。
先ほどと変わらず、マイナスのオーラで満たされている。べつに、真正面で向かい合っているわけでもないのに、二人は下を向き硬直している。
「あのさ・・・」
天奈と亮はハッと、顔を上げた。
渚はありったけの声で言う。場の空気の押され、声はなかなかでてくれない。
「今日はもう遅いし、ここらで帰ろ」
ふぅ。なんとか言えた。
渚の安堵したが、それを顔に出さなかった。そして、千尋のほうを向く。
「あっ。でも、ボクと渚はちょっと用事があるから二人は先に帰ってくれよ」
千尋も、なんとか自分の言うべきことを言い安堵したが、顔には出さない。
「うん、わかったよ。先に帰るね」
天奈は自分の同様を二人に知られていないと思っているから、必死に動揺していないフリをする。亮も同様で、顔だけは普段の表情に戻している。
「ああ、そうさせてもらうよ」
二人は顔を見ないようにして歩き始めた。
まだ、読みにくいところが多いような気が・・・
自分でも読みにくいような気がするのでなんだかなぁ