初仕事
「初仕事って何ですか?」
「取り立てだよ、まぁ初めてだからお前は見てるだけでいいわ。でも舐められないようお前なりに存在感出してみろ」先輩は淡々と話した。
まず向かったのは市内のマンションだった。
マンションと言っても、年季が入っていて外壁のタイルは所々剥がれている。
先輩はエレベーターのボタンを押した。
「ここ何なんですか?」
「デリヘル嬢の寮、ここは慣らしみたいなもんだからな」
指定の階に着き慣れた様子で部屋まで向かった。
インターフォンを押し少し待っていると若い女が出てきた。見た目は中の下といったところか。
「集金だ」
女は一瞬睨むような目でこちらを見たが、
すぐに作り笑顔になり「今は手持ちが無くて…給料入ったらすぐに…」
「いいの?」先輩は静かに告げた。
怒るでも、笑顔でも無くその眼は冷たい機械の様だった。
「忘れてた、ちょっと待ってて下さい」
そう言って女は部屋の奥のクローゼットの中から万札を取り出して黒崎に渡した。
その後他に何部屋か回って金を回収した。皆渋々ではあるものの比較的楽に仕事は進んで行った。
と、この時は思っていた…
次の集金先に移動する為車に乗り込んだ。
「先輩、風俗嬢って給料高いんですよね?何であんなボロいとこ住んでるんですか?」
「まあ風俗でもピンキリだな。レベルの低い店、つまりブスが多いとこは金なくて自分から寮に入りたがるやつが多い。家賃安いからな、ただ綺麗で客が取れるやつも店側が手離したくないから寮に入れて逃さないパターンもあるけどな」
「風俗嬢も楽じゃ無いんですね…」
「楽して稼げる仕事なんてあるのか?あったらみんなやってるだろ」
ふと昔手を出したマルチ商法の事を思い出した…
友達に合コンと言われついて行った先で、初めて入る高層マンションの最上階、見たこともない高そうな酒がカウンターに並んでいる。部屋の持ち主は高校の友達の知り合いの社長らしい。好きに座ってくつろいでいいと言われ座ったソファーに座っていると、女の子達が遅れて入ってきた。可愛い子ばかりで友達と目配せをした。自己紹介が一通り終わり、それぞれ気になる女の子と少し離れて飲み始めた。俺の相手はショートカットで少しキツめの美人の子だった。男のタイプの話になりマッチョがタイプと言って自然にボディータッチをしてくる。慣れてるなーと思いながらもまんざらでもなく浮かれている自分がいた。
女の子に連絡先を聞いた後、カウンターで飲んでいると見知らぬ男が話しかけてきた。形容するなら小綺麗な猿。そんな感じの男だった。
「楽しんでる?」
「はい!それにしてもマジで凄い部屋ですね〜」
「彼コンサルの仕事が調子いいみたいだよ、この部屋も貸してるだけで住んでるのは別の家らしい」
「そーなんですね。ご友人なんですか?」
「彼とはビジネスで関係があって、今夜も誘われたんだ」
コンサルやビジネスなど耳馴染みの無い単語を聞くと自分が少しだけいつもと違う世界にいるような気がして嬉しかった。その後も二人で普段の仕事の話、将来の夢、彼が若い頃歌手をやっていた事、その頃はまだ売れていなかった某有名アーティストの裏話などワクワクする話で一杯だった。ただ、話の所々に夢や将来の不安は無いか?みたいな事を質問され少しの違和感?みたいなものを感じていた。
最後にここで話せたのも何かの縁だからまた食事でもしようと言われ、連絡先を交換した。
パーティーもお開きになり駅に向かって歩いていると、連絡先を交換した女の子が数人で少し前を歩いているのが見えた。
声を掛けようか迷っていると、別の誰かが先に声をかけたのが見えた。
「あれ、あの人って」
第二話 完




