恋の咎人たち
死や血など、残酷シーンがあります。
苦手な方はお避けください。
☆
☆
☆
とある王国の公爵令嬢が亡くなった。
自死であった。
まるで天も涙を流しているかのように、雨が静かに降り続く中、令嬢の棺が土中深くに埋葬された。
灰色の喪服姿の侯爵令嬢のマリーヌは、雨に濡れながら、はらはらと涙を溢し、その目元をハンカチで拭う。拭っても拭っても止まらぬ涙。
眠るように逝った親友。それほど苦しい思いをしなかったことだけが、最期の情けであったのか。
それまで彼女はずっと心を痛め、苦しんできたのだから。
そのマリーヌの真横には、唇をきゅっと真一文字に結び、無表情の妹のコリーヌが真っ白な護衛服姿で微動だにせずにいる。
その左腕には喪章が着けられていた。
「・・・あんなクソ男のために・・・」
コリーヌがようやく漏らした呟きを、マリーヌは涙を拭いながら虚しい思いで聞いていた。
☆
「・・・また公爵令息殿は子爵令嬢とご一緒ですわ」
ある昼下がり、マリーヌは親友の公爵令嬢エリサ、侯爵令嬢のノエルと貴族御用達のドレスショップへやって来ていた。
次の夜会で着用する髪飾りを見繕っていたのである。お屋敷に外商に来てもらっても良いのだが、今日は気のおけない令嬢たちと、街で買い物を楽しみ、若い女性に人気のカフェに立ち寄る予定を立てていた。
店の内外には、マリーヌたちの護衛が直立不動で待機している。
そのドレスショップに、なんとエリサの婚約者で公爵令息のブルーノが、最近恋仲だと噂になっている子爵令嬢のアメリを伴ってやって来たのである。
「エリサじゃないか」
ブルーノは悪びれる様子もなく、アメリの肩を抱き寄せ言った。
「来週の夜会には、アメリをエスコートするから、君もそのつもりで」
エリサは返事をすることもなくただ無言で、ブルーノとアメリを見ている。
マリーヌとノエルが不快そうに眉をひそめた。
「ところで、君は何を購入したんだい?」
ブルーノはエリサからショップの紙袋を強引に奪うと、中身を漁って、箱に納められた髪飾りを手に取った。
エリサの緑の瞳に似合う、小さなエメラルドがあしらわれた髪飾り。
「まあ!素敵な髪飾り!」
一緒になって覗き込んだアメリが、茶色の瞳をまん丸にし、甲高い声を上げ、ぴょんと飛び跳ねた。ふわふわした茶色の髪と豊かな胸が揺れる。
「ステキ!ステキ!わたくし、コレが欲しいわ」
「「何ですって?」」
マリーヌとノエルが同時に言う。
「こちらは先程、エリサ様がお買い上げになったものですわ。なんて無礼なのかしら」
マリーヌとノエルが口々に抗議すると、ブルーノが不機嫌そうに顔をしかめた。
「だったら、僕が金を出そう」
そう言って、ポケットから貨幣を取り出すと、床に放り投げる。ジャラジャラと銀貨があちこちに散らばった。
「これで文句ないだろう。この髪飾りはアメリのものだ」
「きゃあ!ブルーノ様!ありがとうございますぅ」
紙袋を渡されたアメリは嬉しそうに、またぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「ちょっと!その程度の銀貨で買えると、公爵たる令息が本気で思っているのですか?」
すかさずノエルが文句を言う。ブルーノはチッ!と舌打ちをした。
「だったら、公爵家にツケておけばいい」
「・・・もう行きましょう。ここは空気が悪いわ」
エリサがマリーヌとノエルを促し、ショップを出て行こうとする。
「あらあ?お金、拾わないのですかぁ?」
甘ったれたアメリの声が追いかけて来たが、エリサ達は無視をした。
☆
若い女性に人気のカフェの2階貴族席で、3人はしばらく無言で紅茶を飲んでいたが、ノエルがため息をついて尋ねた。
「・・・エリサ様、髪飾りはどうなさいますの?」
「どうもこうも・・・後で外商を呼ぶわ」
「きちんと公爵様に報告した方がいいわ」
マリーヌが言うと、エリサはそうね、と気のない返事をした。
「本当に、下位貴族令嬢達の非礼が目に余りますわね」
ノエルがエリサとマリーヌを見ながら言う。
「ブルーノ様があんな体たらくになってしまわれたのは、そもそも第三王子が子爵令嬢に入れ込んでいるからではありませんこと?」
マリーヌははぁ、と項垂れた。
第三王子はマリーヌの婚約者である。そしてブルーノと第三王子は学友だ。
第三王子が元々、アメリの友人だったファニーと恋人同士だった。その後、王子の取り巻きだったブルーノとファニーの友人のアメリが恋仲になったのである。
下位貴族令嬢たちは、第三王子の取り巻き達と懇意になれるとまことしやかに噂していた。
高位貴族令嬢の婚約者から令息たちを略奪して、玉の輿に乗ろうなどと躍起になっている現状なのだ。
第三王子の取り巻きはあと2人。
外務大臣の息子であり、侯爵家の嫡男、そしてノエルの兄であるユーグ。
それから軍人の息子のダミアン。
ユーグは令嬢たちとお茶を楽しむ程度らしいが、ダミアンは手当たり次第に令嬢と遊んでいるという。
ノエルは自分の兄までもが、下流の女に陥落されるのではないかと不安に感じていた。
そして度々、事の発端である王子の婚約者マリーヌに不満をぶつけていたのである。
マリーヌにしてみれば、第三王子との婚約は不本意でしかない。王家の息子達の中でも、出来の悪い三男を、由緒ある侯爵家が押しつけられたのである。
マリーヌは侯爵家の長女だ。侯爵家の子どもは三姉妹で、男子はいない。
一応、マリーヌが侯爵家を継ぐ予定ではあるが、無能な第三王子との婚姻は、侯爵家の頭痛の種であり、このままではマリーヌの後継者の立場も危うくなっていた。
「マリーヌ様、これ以上、王子を好き勝手にさせないで下さいませ。お兄様やダミアン様の婚約者様たちも、放っておかれて気の毒でなりませんわ」
残りの取り巻きふたりの婚約者は可哀想と思われるのに、マリーヌは不憫とは思われない事に、マリーヌがもやもやした気持ちを抱いている様子がありありと伺える。
「ノエル、言葉は選ばなくてはよ」
エリサがたしなめた。
「マリーヌだって、王子から蔑ろにされて心を痛めているのよ。マリーヌに責任を押しつけるのはお門違いというものだわ」
「・・・でも・・・」
ノエルは釈然としない面持ちで口をつぐんだ。
それから数日後に、エリサは服毒自殺を図ったのである。
☆
「・・・エリサ」
葬儀も終わり、人気がなくなった墓地に立ち尽くしたまま、マリーヌは亡き友の名を呟いた。
「お姉様は先日、街のドレスショップでエリサ様が糞ブルーノとビッチ令嬢にたかられた所に居合わせたでしょう?
エメラルドの髪飾りを強引に奪われた時よ」
無言を貫いていたコリーヌが、ようやく口を開く。
「・・・・・」
あの日、コリーヌはマリーヌの護衛として、店先で待機をしていた。
「あの後、お姉様はカフェで『公爵様に報告した方がいい』と言っていたわね?どうして、お姉様が公爵家に報告してあげなかったの?親友だったのでしょう?」
「え・・・?」
マリーヌがおもむろに聞き返す。
「エリサ様はもうずっと盗人ブルーノから金品をたかられていたのよ?
誰にも相談できずに。いいえ、最初の段階では公爵に相談していたようだけど、冷淡な対応だったようね。
『その程度のこと、自分で解決できなくてどうする』とかなんとか言われて。
それからエリサ様は、二度と誰にも頼らなくなったのよ。
あの日もそう。エリサ様が買い物に訪れることを事前に知ったクソ男は、わざと略奪女とやって来たの。
親友であり、第三者であり、公爵家とも渡り合えるお姉様がひと言でも助言していたら、この最悪な状況を回避できたかも知れないわね」
「そ、そんな・・・っ!で、でも、それを知っていたのなら、あ、あなたが公爵様に言えば良かったじゃないの・・・」
マリーヌがガタガタと震えながら、妹に抗議した。
「エリサ様とお姉様とノエル嬢の親友ごっこに飽きてきた頃だったから、夜会の振る舞い次第では報告するつもりだったわ。でも夜会を前に、自害されてしまわれたのよ」
コリーヌは喪章に手を当てた。
「し、親友ごっこって・・・」
「あら?違うとでも?婚約者に下位令嬢と浮気された者同士、愚痴を言い合い、慰め合っていたのでしょう?
親友とは名前だけ。互いに傷を舐め合っていただけにすぎないわ」
「コ、コリーヌ!いくら妹だからって!言っていい事と、わ、悪い事が・・・」
コリーヌは咎め立ててくるマリーヌを冷やかに見つめた。
「本音も言えない、悩み事も打ち明けられない、助けを乞えない・・・素晴らしい『親友』だこと」
マリーヌは絶句し、ぬかるんだ地面にへたり込んだ。
コリーヌは踵を返すと、雨で濡れた髪を振るった。
「・・・お嬢様・・・」
少し離れた所で待機していた護衛が何とも言えない表情をしている。
「私は適当に屋敷に戻るから、お姉様をお願いね」
そうして、墓地の壁をひょいと飛び越えたコリーヌは、霧雨の中に消えて行った。
☆
エリサの葬儀から2ヶ月ほど経ち、マリーヌは婚約者の第三王子から珍しくお茶に誘われて、街のカフェにやって来た。例の人気カフェでの待ち合わせである。
2階の貴族席に上がると、ちらほら席は埋まっており、奥のテーブルには第三王子の横に恋人のファニー、向かい側に取り巻きのノエルの兄ユーグと、軍人息子のダミアンが相席していて、マリーヌは表情を曇らせた。
少し離れた所に、侍女服姿のコリーヌが控えた。
「やあ、久しぶりだね。マリーヌ。少しは気持ちが落ち着いたかい?」
王子がニヤニヤしながら尋ねたので、マリーヌはあからさまに眉をひそめた。
「全く、公爵令嬢には度肝を抜かされたよ。おかげでブルーノは謹慎、夜会は中止となったもんだ。いい迷惑だ」
王子がやれやれ、と首を振ると、横に座っていたファニーが甘ったれたような声を出しながら、王子にしなだれかかる。
「本当ですぅ。わたし、夜会に行きたかったのにぃ」
ファニーといい、アメリといい、この舌ったらずな喋り方はどうにかならないのだろうか。マリーヌは閉口した。
「よしよし。可哀想なファニー」
王子がファニーの頭を撫でる。
「殿下の瞳と同じ色のドレスを用意していたんですよぉ?見て欲しかったぁ」
マリーヌは不意に、墓地でのコリーヌの言葉を思い出して、静かに、でもきっぱりと言い放った。
「王子殿下と、そちらの子爵令嬢は、公爵家の痛ましいご不幸よりも、夜会やドレスの方が大事だと言われるのですね。分かりました。
侯爵家から王家と公爵家、子爵家にそのような申し立てがあったと報告いたしますわ」
外務大臣の息子であるユーグが、さすがにさっと顔色を変えた。
「ま、待ちたまえ、マリーヌ嬢。それはいささか大げさではないだろうか。とにかく、来たばかりだし、座ったらどうだい?」
「そ、そうだ!座ったらどうだ」
王子も狼狽え気味に言う。
「結構です。不愉快極まりないので、帰らせて頂きますわ」
マリーヌの拒絶に、王子が目を剥いた。
「マリーヌ!僕の命令が聞けないのか!」
「はい。聞けません」
マリーヌは断固たる態度で言った。
「なぜ侯爵令嬢のわたくしが、婚約者の浮気相手、しかも子爵令嬢と同席してお茶をしなければならないのですか。
侮辱するにも程があります。
これ以上、勝手な振る舞いをされるのでしたら、婚約解消を願い出るだけですわ」
王子はだん!とテーブルを叩いた。
「黙れ!マリーヌ!そういうとこだ!
何が侯爵令嬢だ。ただの生意気な女じゃないか!
婚約解消、できるものならしてみればいい。そもそもこれは王命だったのだからな!
俺だって、お前のような生意気な女と結婚なんてしたくないんだよ!
結婚するなら、こう、ファニーのような可愛げのある女がいいに決まっているだろう!」
唾を飛ばしながら王子が一気にまくし立てると、ファニーは頬を赤らめて、ますます王子にすり寄った。
「ああ・・・殿下。わたし、幸せですわ」
「お前のような可愛い女なら、何があっても愛せるだろう。しかし・・・マリーヌときたら・・・」
王子はキッとマリーヌを睨みつける。
「よく分かりました。どうぞ、可愛い子爵令嬢と末永くお幸せに」
マリーヌが背を向けると、ファニーがボソッと呟いた。
「・・・死ねばいいのに」
「「え?」」
男たちと振り返ったマリーヌの声が揃う。
「そうよ。あなたも死ねばいいのよ。殿下のために」
ファニーは可愛らしく、パン!と手を合わせて、にっこり微笑んだ。
「公爵令嬢は愛するブルーノ様から、寵愛を受けられずに絶望して、自ら身を引いたのですわ。
美しい悲恋物語ですわね。マリーヌ様も同じようにされたらいかがですか?
高位のご令嬢方は、そりゃあ家名は立派でしょうが、所詮は名前だけなのですわ。
結局、殿方に愛されるのは、家柄ではなく女性としての魅力なんです」
一瞬、場がしんとなる。
「そうだ!その通りだな!権力ある男にしてみたら、女の家柄など関係ない。
事実、愛人を抱える男がほとんどだ!」
王子は鼻を膨らませて、息巻いた。
「ファニーの言う通りだ!お前も潔く身を引け!
天国でお友達が待っているだろうしな!」
そう言うと、無遠慮、無神経な恋人同士は額をつけ合って、くすくす笑った。
「・・・失礼しますわ」
真っ青の顔色のマリーヌは身を翻す。彼らを二度と振り返ることはなかった。
出て行く直前に、侍女コリーヌと目が合う。
コリーヌは無言で顎を突き出し、早く行けと合図した。
「・・・本当に自死されたら、大変なことになりますよ」
このメンバーの中では、唯一まともらしい、ユーグがやんわりとたしなめる。
「えー?大丈夫ですよぉ?むしろ、グッドタイミングですわ」
ファニーが王子に寄り添ったまま唇を尖らせる。
「マリーヌ様はお友達が亡くなって傷心の中、敢えて身を引くんですもの」
「だったら・・・」
ダミアンが王子を見て尋ねた。
「俺がマリーヌ嬢の純潔、頂いてもいいよな?」
「「「は?」」」
3人が素っ頓狂な声を上げた。
「公爵令嬢にしても、マリーヌ嬢にしても、男を知らぬまま逝かせるのはあまりに気の毒だ。
公爵令嬢は間に合わなかったが、マリーヌ嬢には冥土の土産を贈ってやろうではないか」
我ながら妙案だと悦に入るダミアンに、ユーグが顔をしかめる。
「お前、もっともらしいことを言っているような口ぶだが、ただ単に初物好きの鬼畜発言だからな」
ユーグの言葉に、ダミアンがあっはっは、と下品に笑った。
「・・・それは・・・だったら、俺が・・・」
王子が思わずポロリと本音を漏らすと、ファニーが途端に悲し気な顔をする。
「えー?何ですかぁ?それぇ?わたしのことを何があっても愛してくれるんですよねぇ?」
「あっ!ああ!もちろんだ!今のは冗談だ!」
王子が少々焦り気味に、ファニーを抱き寄せた。
「んもう!笑えない冗談ですよぉ!・・・今夜はお泊まりして楽しむのでしょう?」
めっ!と可愛らしく王子を上目遣いで睨むと、王子はとたんにデレデレと鼻を伸ばして、回した腕に力を込めた。
☆
「・・・ちょっと、お花を摘みに・・・」
しばらく歓談していた後、ファニーがお小水へと席を立った。
控えていた侍女のコリーヌが、ファニーを3階へと誘導して行く。
「あらぁ?あなた新顔?」
呑気に聞いてきたファニーを、コリーヌは3階の逢引き部屋へと突き飛ばすように入れる。
街の飲食店には、こうして男女が休憩できる部屋が何部屋かあり、この人気カフェにも秘密裏に存在していた。
「痛いじゃないの!」
ベッドに倒れるように突っ伏したファニーが起き上がるなり、怒りの声を上げた。
「黙れ。喋っていいと許可していない」
侍女コリーヌが重い平手打ちを喰らわせる。
口の中が切れたファニーは、呆然と頬に手を当てた。
「あんた・・・誰よ」
ようやく異常事態に気づいたファニーが、ぶるぶると震え出す。
「お前のような下賎な女に名乗る名前はない」
コリーヌは服の下から鋭利な短剣を取り出した。
ファニーが悲鳴を上げそうになり、コリーヌは再び反対側の頬を打った。
「黙れ」
頬が真っ赤に腫れて、唇の両端からは血が流れている。
「や、やめて・・・こ、殺さないで・・・」
頬を庇うように手で押さえながら、ガタガタ歯を鳴らし、ファニーは震える声で命乞いをした。
「・・・何ふざけた事を。お前は先程、侯爵令嬢に死ねと言っていただろう?」
コリーヌはフン、と鼻を鳴らす。
「よくも命乞いなぞできるな。貴族としての矜持はないのか?
それともお前の命より、侯爵令嬢の命の方が価値がないとでも言うのか?」
ファニーは血の気の失せた顔をぶんぶん振った。
「あ、あんなの・・・ほ、本気で言ったわけじゃ・・・」
コリーヌはファニーを思い切り蹴り上げた。ファニーの身体が宙に浮き、ベッドにドサリと落ちる。
「お前は冗談で、貴族令嬢に対して死ねと言うのか」
ヒッ!と一瞬、息ができなくなってから、ファニーはゴホゴホと咳込んだ。そしてたちまち死の恐怖に怯え、涙と鼻水が溢れ出し、口からは血が流れてくる。
「あのバカ王子と恋仲になるのは勝手だ。
大人しく、慎ましやかにその寵愛を受けていれば良かったものの、愚鈍な貴様は調子に乗って、社交で自慢、吹聴したばかりか、高位貴族令嬢を貶め、愚弄した。
その罪は償ってもらう」
感情の読み取れぬコリーヌに、ファニーはただふるふると首を振り続ける。
「ご、ごめんなさい・・・ご、ごめんなさい。お、お願いします・・・殺さないで・・・」
「醜悪だな。とても見られた顔じゃない。もう二度と誰かの男に手を出せぬよう、くだらない冗談を言えぬようしてやる。安心するといい。貴様の命までは奪わないから」
コリーヌはファニーの手首を掴むと、短剣を振り落とした。
「どんなになっても愛してくれる男がそばにいて良かったな」
コリーヌの冷たい笑みがファニーの目に映った。
☆
ぎゃーーー!!!と、大絶叫が2階まで響いてきた。
王子とユーグとダミアンが顔を見合わせる。
「な、なんだ?ファニーの声か?」
王子が立ち上がりかけた時、従者が血相を変えて店内に飛び込んで来た。
「王子殿下!国王陛下からお呼び出しです。火急に王城へ戻られるように」
「え・・・で、でもファニーが・・・」
「一刻を争う事態ですぞ!」
ただならぬ様子に、ユーグが急かした。
「早く行け!ファニーの様子は俺たちが見るから」
「わ、分かった!頼んだ。後で来ると伝えてくれ」
王家の紋章の入っていない馬車で来たとはいえ、それでも他よりは目立つ馬車だったので、往路は裏街道を走ってきた。
だが、火急の用件とあらば、中央広場を突っ切って行く方が早い。
ところが、広場に入ったところで、凄い人混みに遭遇し、御者も戸惑っている。
「どうしたんだ!?」
なかなか進まない馬車に、イライラと第三王子が聞いた。
「・・・どうやら・・・暴動のようです」
「ぼ、暴動!?」
第三王子が顔色を悪くする。こんなところに王家の人間がいたら非常にまずい。
「「公爵家を潰せーーー!!!」」
「「税金を返せ!!!」」
一部の民衆が騒いでいた。
「・・・公爵家?何のことだ?」
従者に様子を見てくるよう王子が命じる。
「「お前らの女遊びに払う金なんぞないんだ!」」
「「ざまあないな!!」」
「・・・殿下に申し上げます」
従者が素早く馬車に乗り込んできた。その顔は青ざめ、脂汗が浮いている。
「ご学友ブルーノ様と、その恋人のアメリ様の首が広場にさらされ、民衆がその首に石を投げております。
どうやら、逢引き部屋で一緒にいたところを襲撃されたようです。
胴体は全裸のまま、未だ逢引き部屋にあるそうです」
「な、なんだって!アイツは謹慎中だったんじゃ・・・」
「・・・どうやら抜け出したようですね」
第三王子は恐怖に慄き、ぶるぶる震え出した。
ようやく事の深刻さを理解して、御者に早く馬車を出すよう命じるが、民衆に阻まれて、なかなか動くことができなかった。
☆
かなり時間を掛けて、なんとか王城に戻った第三王子は着替えることも許されぬまま、応接間に通された。
豪華な応接間には、国王陛下、王妃陛下、第一王子が並んで座っており、その向かいには婚約者であるマリーヌ一家の侯爵夫妻と三姉妹がドレス姿で座っている。
ボサボサの髪を見て、青いドレス姿の次女コリーヌが、扇で口元を覆いながら、冷ややかに言った。
「随分と遅い到着だと思いましたら、子爵令嬢とお楽しみ中でしたのね」
「こらコリーヌ、下品であるぞ」
と侯爵が、国王夫妻の建前上、娘をたしなめたものの、王子を侮蔑しているのが丸分かりである。
国王王妃両陛下と第一王子は汚物でも見るように、第三王子を一瞥した。それから国王陛下が言い放つ。
「お前と侯爵令嬢、マリーヌとの婚約は解消になった」
「・・・まさか!で、でも・・・この婚姻は侯爵家の力を抑止するための政略だって・・・!」
「それが分かっていて、なぜ好き勝手な振る舞いをする!
あまつさえ、婚約者に向かって自死を促すとは。
国民の頂点に立つ、王族の言動とは思えんな」
第三王子はマリーヌを睨みつけた。
「お前、父上にチクったな!」
「こ、怖いですわ。お父様、お母様。王子殿下はいつもこうして、わたくしを脅していたのですわ」
マリーヌは涙を浮かべて、母の腕に縋りついた。
「おお・・・マリーヌ。可哀想に」
第三王子は呆然とした。全員が第三王子を射るように見つめている。着座することも許されず、王子はふるふると拳を握りしめた。
「でも結果、無事に婚約解消ができて何よりですわ。
帝国にも示しがつきませんもの」
隣国の大帝国の皇太子に輿入れが決まっている、三女のアリーヌがほっとした様に言う。
「亡くなった公爵令嬢の死を冒涜した上に、侯爵令嬢に自死を促すなんて、とても良識ある王族とは思えませんもの。こんな方と親族になるところだったなんて、恐ろしくて震えが止まりませんわ」
王妃陛下はアリーヌの言葉に、苦虫を噛んだような表情をした。
「・・・それでも、有責の婚約破棄ではなく、解消になったのだ。ただし条件がひとつだけあるが」
国王陛下が淡々と言った。
「第三王子は王家の系譜に載ることはない。
お前は勘当だ。二度と父と呼ぶでない。
即刻、荷物をまとめ、その愛しの令嬢とやらがいる子爵家へ行け。婿入りするのだ。もう話も通してある」
「そ、そんな!!」
第三王子は叫んだ。
「こんなのは横暴だっ!」
「・・・ご自分のお望み通りになったのですわよ?」
マリーヌが弱々しく微笑んだ。
「『ファニーのような女ならずっと愛していられる。
女は家門ではなく、女としての魅力が一番だ』とおっしゃっていたではありませんか。・・・どうぞ末永くお幸せに」
そうして、ううっと母に縋り、自分なりに第三王子の婚約者として努力していたのに、と涙したのであった。
「・・・同じ血が流れる兄弟だと思うと反吐が出るな。即刻立ち去れ。お前の顔など二度と見たくない。
ああ、そうだ。教えといてやろう。大臣の息子のユーグと軍人見習いのダミアンはお前の従者となるからな。
せいぜい4人で仲良く子爵家を盛り立てるがいい」
第一王子に厳しい視線を向けられ、三姉妹には蔑視されながらも、無様な抵抗を試みる第三王子は護衛たちに引きずられるように応接間から追い出されたのであった。
☆
一方で、ファニーの様子を見に行ったユーグとダミアンは、逢引き部屋へ入るなり、悲鳴を上げて、腰を抜かしてしまった。部屋は血の匂いが漂い、ベッドには血まみれのファニーが横たわっている。ベッドの下には、切り落とされた舌と左手指が落ちていた。
急いで病院へと運ぶが、広場でも大騒動が起きており、ユーグとダミアンは自分たちの周りで、とんでもない事が起きていることを実感した。
ユーグが急いで、屋敷に戻れば、なぜが私物が庭先に放り投げられてある。
ユーグの姿を目にした家令に、屋敷に入ることを拒否された。
「ユーグ様の立ち入りは禁じられております」
「何でだ!」
重厚な扉の前で、家令と護衛が行手を阻み、ユーグはすっかり混乱した。
「・・・おいたわしや。ノエル様が暴漢に遭い、陵辱されたのですぞ」
家令の言葉に、ユーグの背筋にゾクリと戦慄が走る。
「な、なんだって・・・?ノエルがお、襲われた?」
ガタガタと全身が震え、立つのもやっとという状態である。
「・・・貴様は王命で第三王子の従者になるのだ。
今すぐ、子爵領へ行け」
騒ぎを聞きつけたユーグの父、王国の外務大臣が中から出てきて難しい顔をして命じた。
「な、なんですって・・・ぼ、僕はこの家の嫡男で
・・・」
震えながらも抗議の声を上げると、父親は鼻で笑った。
「人望のかけらもないくせによく言ったもんだな!おまけに復讐屋に狙われたお前が、この侯爵家を継げるわけがないだろう」
「復讐屋」
カチリとパズルのピースがはまったかのように、全てが腑に落ちた。
「第三王子の取り巻きだのと調子に乗りおって!
日頃から婚約者を蔑ろにし、周りの貴族令息を見下し、公爵令嬢の死を悼むどころか愚弄し、挙句、侯爵令嬢に後追い自殺を促すとは!
上流貴族令息の風上にもおけん!言語道断だ」
ユーグは真っ青になった。
そうだ。カフェには他に貴族の客もいたし、使用人や店員も控えていた。
聞かれていたのだ。あの会話を。自分は言っていないと主張したところで、誰も納得はしないだろう。
「常日頃からお前を恨み、憎む奴らがノエルを襲わせたんだろうな!ノエルはお前の犠牲になったのだ!お前が襲われれば良かっただろうに!」
父親の言葉がグサリと胸に突き刺さった。
「第三王子は勘当となり、王族の系譜には載らないそうだ。お前は廃嫡で済んだことをありがたいと思え。
ノエルは金輪際、お前の顔を見たくないそうだが、お前は生涯をかけて、ノエルに償うのだ。分かったら、さっさと子爵領へ行け」
バタン、と扉が閉められる。
扉の隙間から見えた、使用人たちの軽蔑のこもった視線がユーグの胸に焼きつけられた。
「な、なんで、こ、こんなことに・・・ああ・・・ノエル・・・」
へたり込んだユーグは、しばらくその場から動けずにいた。
☆
軍人見習いのダミアンも大急ぎで屋敷に戻る。
舌と手指を切り落とされたファニーもそうだが、全裸で首を切り落とされたブルーノとアメリも重大事件に巻き込まれた。貴族の殺傷は捕まれば死罪に値する。だが躊躇ないやり口を見ると、あるひとつの可能性が頭をよぎった。
貴族の依頼による復讐。
忖度、上下関係が物を言い、裁判があってないようなこの貴族社会で、必要悪とされている組織がある。
復讐屋は引退した軍人や騎士、兵士などで構成されていると噂されるが、その実態は掴めていない。
ダミアンは私物が庭に放り出されている様子に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「ダミアン様の居場所はここにはありません」
侍女頭に言われ、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
「・・・俺が何をしたって言うんだ。せいぜい浮気ぐらいだろう」
「何を言っているか!大たわけが!!」
背後から怒鳴られ、ダミアンも怒りに震えながら、振り返る。ダミアンの父親が軍服姿で腕を組んで仁王立ちしていた。
「貴様は家宝の家系図を燃やしたな!」
「え!?」
ダミアンは仰天した。
「貴様の部屋から、燃えかすとなった家系図が見つかった。しかも一枚だけ破り取られてな!ご丁寧にも父上の絵図にお前のナイフが突き刺してあったのだ!幼き頃、散々痛めつけられたことを恨んでいたのか?」
ダミアンは顔を歪めた。
「お、俺は何も知らない・・・俺は、やってない」
「お前がどう釈明したところで、一族の怒りは鎮められそうにない。本家だけが所有できる一族の家宝を、大体、お前以外の誰が持ち出せる?
部屋には空の酒瓶も落ちていたぞ。言い逃れはできんな!」
ダミアンは子どもみたいに号泣した。全く心当たりがないのだ。
一族の家宝である家系図本は、王国にひとつしか存在しない。
初代から当家は代々軍人としてその生涯を貫き、建国時代から影日向となり、王国に尽くしてきた由緒ある家系だ。
特に祖父は王国の英雄とされ、絵図まで入っていたのだ。そのページが破り取られ、ナイフが突き刺さっていたとは。
「分かっているだろうが、当系譜に貴様が記載されることはない。二度とこの屋敷の敷居は跨ぐな。一族に接触するのも許さん」
「そ、そんな・・・」
ダミアンは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして、父に縋る。
そんな息子を父は乱雑に払い退けた。
「汚らわしい手で儂に触るでない!」
父の怒号に押され、ダミアンは尻もちをついた。
「貴様には王命が出ている。第三王子の、いや、元王子の従者として、子爵領へ行くのだ」
「な、なんで・・・」
ダミアンはゾッとした。手指と舌を切られた子爵令嬢の領地で従者として働くなんて、あまりにも無茶苦茶である。
「し、しかも元王子って・・・」
「第三王子も王家の系譜に載ることはない」
父は顎髭をさすりながら、
「元王子と子爵令嬢とユーグと、せいぜい仲良しこよしで子爵領を開墾するんだな。仲の良い元王子のことだ。たまには慰みものとして、令嬢を貸し出してくれるだろうよ」
などと皮肉たっぷりに言う。
「い、いくら父上でも冗談がすぎる・・・」
そう言いかけて、ダミアンはハッとする。厳しい父の視線とぶつかった。
「貴様は初物好きだから、使い古しの女じゃ慰めにもならんか」
ダミアンは再び咽び泣いた。
「す、すみません・・・ち、父上・・・」
「貴様の父などではない!貴様は家系図を燃やしただけではなく、我々軍人の誇りとプライドも汚したのだ!
早急に子爵領へ向かえ!」
「ううう・・・」
取り返しのつかない発言は、あっという間に社交に広がり、一族はしばらく肩身の狭い思いを強いられるだろう。
ダミアンたちは行き過ぎてしまったのだ。若さ故の過ちだとは到底許されなかったのである。
☆
一年後、第一王子の立太子と東国の姫君との婚約の儀が王城にて盛大に催された。
王国中の貴族が招集される。
元第三王子とファニーも末席の方で大人しく起立していた。それなりに小綺麗にはしているものの、かつての華やかさは露とも感じられない。
上位貴族の紹介が続き、上座の方へゆっくりと向かって行くのは、かつての婚約者、マリーヌである。その横には公爵令息でエリサの兄が並んでいる。
腰までの長い艶やかな金髪。澄んだ青い瞳。胸元が開いた大胆なドレスからは豊かな胸が覗き、その胸元にはダイヤモンドがきらめいている。
マリーヌはとても美しい令嬢であった。そして幼き頃からエリサの兄と心を通わせていた。長男長女カップルであったが、次女で男勝りのコリーヌが侯爵家を継げば良いと誰もが思っていた。
それなのに王命がふたりを引き裂いてしまった。
失意のマリーヌは、好きでもない男性に着飾る必要はないと、その美貌をひた隠し、地味に無難に過ごしていたのである。
次に紹介されたのは、第二王子アルドリック殿下とコリーヌである。
近衛兵のアルドリック王子とコリーヌは長身カップルで、揃いのブルーとシルバーの装いは、周囲の感嘆を呼んだ。
かつて女性騎士団に所属していたコリーヌ。
単独行動があまりに多く、しかも規律を守らないため、早々に解雇を言い渡された黒歴史がある。
その後、実家の護衛兼、探偵まがいのことをしていたところを、アルドリック王子に復讐屋としてスカウトされた。
巷では退役軍人などで結成されていると思い込まれている組織だが、現役世代も多数所属している。
表立って裁けない案件に、秘密裏に鉄槌を下す部隊。
「・・・あまりの美しさに皆が見惚れているな」
ブルーのエンパイアドレスにシルバーのフリルがあしらわれたドレスを優雅に着こなし、アルドリック王子の腕に手を添えて、淑やかに歩くコリーヌの姿からは、復讐屋に手を染めているのだとは誰も想像できないだろう。
「皆、私ではなく王子殿下に見惚れているのですわ」
コリーヌはアルドリック王子の端正な横顔をチラリを伺い、ふふっと小さく微笑む。
王家を凌ぐほどの財力を持つと囁かれるコリーヌたちの侯爵家の力を何とか抑止しようと、投入されたのが、第三王子と長女マリーヌとの政略的婚約だったが、第三王子のあまりの不出来ぶりに破談となり、王家サイドは頭を抱えることになってしまった。
ところが、そこに誕生したのが、第二王子と次女コリーヌのカップリングである。しかもふたりは恋愛関係にあるといい、周囲を仰天させた。
目論見が外れたわけだが、近衛兵でしっかり者の第二王子が侯爵家へ婿入りした方が、双方にとって良いに決まっている。
結果オーライの、万々歳と言ったところだった。
でも実は侯爵家の資産の一部は三女が嫁いだ隣国の大帝国へ移しているのだが。一族の財産を守るため、そして税金対策のためでもある。
「・・・先程、元弟の視線を感じたな」
「切なそうに見ていましたわね」
アルドリック王子の言葉に、コリーヌも頷く。
「取り敢えずは、ユーグを筆頭に、頑張って子爵領を盛り立てているそうではないですか」
「子爵夫妻もまずまずといった関係らしいな」
「まだ1年しか経っていませんもの。夫婦関係が変わってくるのはこれからですわ。危険なのは3年目と言われていますわよ?」
コリーヌは王子に少し身体を寄せた。
「むしろ1年目で『まずまず』では、前途多難かも知れませんわね」
「・・・恋は盲目、とは言ったものだな」
第三王子とファニーの恋から、ブルーノとアメリの恋。そこから家門を揺るがす大事件となるのだが、彼らの横恋慕はただのきっかけにすぎない。
ブルーノはエリサから金品を強奪。アメリの屋敷からは、エリサの亡き祖母の形見の装飾品なども見つかり、窃盗事件になっただけではなく、ブルーノたちによる違法薬物売買も併せて摘発されていた。
ダミアンは自身でも薬物に手を出しており、記憶がないだけで、家宝の家系図はダミアンが焼失させたのは疑いようもなかった。
気の毒なのは、ユーグの妹、ノエルであり、こちらは復讐屋の沙汰ではなく、ユーグ等に恨みを持った者の犯行らしい。だが犯人の目処は立っていないようだ。もちろん復讐屋が犯人探しをすることはない。
「あれが恋だったのでしょうか。単なる欲にしか見えませんでしたけど。本物の恋だったのならば、誰に対しても誠実でなければなりませんわ。元相手にも。恋した人にも。自分自身にも」
コリーヌは少々呆れ気味に言う。
「それよりもアルドリック殿下のプロポーズの方が過激でしたわよ」
「「侯爵家の力とサイコパスの君を抑えられるのは僕しかいない」」
ふたりは囁き合う。
「私、とてもゾクゾクしちゃいましたわ。お手並み拝見、と思ってプロポーズを受けましたの」
「少なくとも僕は欲に溺れることはないだろうな。
君は変装も声色も変えるのも得意だし・・・仮に3年目に飽きがきたとしたら、君に別人になってもらえばいいさ。そんな事にはならないだろうけど」
アルドリック王子は愛おし気に目を細めてコリーヌを見た。コリーヌに恋心を抱くなど、よほどの強者か物好きである。
「あら。殿下が飽きるのが前提なのですね?私の方が飽きて他の男性に夢中になるとは思いませんの?」
「思わない」
アルドリック王子はキッパリと言った。
「僕ほどのいい男はそうそういないし・・・
君が『恋の罪』を犯すとも思えないからね」
わあっ!と大きな歓声が上がり、王太子と東国の姫君、国王、王妃両陛下が玉座についたところであった。
目に眩しいシャンデリアのきらめき。色とりどりのドレスの貴婦人たち。汗と髪油とタバコと香水の匂いが充満する大広間。
男と女の欲望が交錯していく。
不埒な想いを胸に秘めた男女の視線が絡み合う。
アルドリック王子とコリーヌはきゅっと手を握り合った。
豪華絢爛な宴は夜通し続いていくのだった。
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