『十日間で火星へ』第一部:軌道カタパルト計画発動 第十六節:「火星全体計画会議――未来を決する円卓」
火星全体計画会議です。
巨大な会議室。
中央の円卓には、日・仏・米・中・露・英・エジプトをはじめ、各国のバッジをつけた代表たちが並ぶ。
壁際には発射台地やカプセル、軌道図、火星地表の地図、膨大な書類と通信機器が整然と並ぶ。
会議の冒頭、アリア・キサラギが口火を切る。
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アリア(司会・日):
「本日は火星全体計画の総会です。
発射から着陸、地表調査、物資輸送、帰還手段に至るまで、全工程を共有し、合意形成を目指します。
まずは主要項目――“軌道投入・着陸・探査”――について各責任者から報告をお願いします。」
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1.発射・軌道投入について
リー・チョン(中・カタパルト設計):
「カタパルトの試験は三度目で完全成功。
黒川式無反動加速装置、太陽蓄熱系、越前数列軌道計算、全て設計値を満たしました。
発射窓は年二回、最大発射質量22トンで設定。」
エリック(米・カプセル担当):
「カプセルの耐圧・耐熱テストも合格。
磁場コース修正用の小型エンジン搭載で、“火星捕捉軌道”への自動移行が可能です。」
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2.着陸・地表活動について
アミナ(エジプト・着陸班):
「着陸は火星大気に対応した二段パラシュート+逆推進ロケットで行います。
衝撃吸収材の改良で着地速度を従来の三分の一に抑えました。」
リディア(露・資材・基地建設):
「物資輸送は計六便。
着陸カプセル内で展開する“自動組立型拠点ユニット”で最初の火星基地を設営します。」
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3.探査・科学・通信について
西山(日本・科学調査):
「火星表層・地殻の分析装置は既に積み込み済み。
“黒川式鉱物同定器”“エーテル反射波センサー”も連動。
通信は黒川式量子同期中継網で、最長30分以内の双方向通信が維持できます。」
サミュエル・ヴォルテール(仏・文化担当):
「地表の調査計画には、“火星の記憶”プロジェクトも含めるべきです。
未知の遺構や環境変化の痕跡が発見された場合、国際科学財団が統括し、知識を人類全体の遺産とすることを提案します。」
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4.帰還手段と長期展望
アルノー(仏・工学):
「帰還カプセルは打上時に同時運搬。火星地表で現地生成した酸素とメタンを燃料とし、“黒川式電磁スリング”で地球帰還軌道へ再射出可能です。」
リー:
「将来は火星軌道上に補給ステーションを設け、有人探査や基地恒久化への道を開きます。」
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アリア:
「以上、全工程の説明でした。本日ここに、“夢と科学、勇気と調和”をもって、人類の一歩を火星に記すことを宣言します。」
会議室に静かな拍手が起こる。
各国代表が次々に立ち上がり、最後は全員で
**「火星計画・協調条約書」に署名。**
外には赤い夕日と、カタパルトの長大な影――
人類の未来を乗せて、遠い星へと続いている。
次回は、ライトスタッフ的、人材選抜から、訓練の様子、選抜された人物の様子です。




