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『十日間で火星へ』第一部:軌道カタパルト計画発動 第四節:「素材調達――世界をつなぐ橋」

話題が物理から素材調達へと移ると、会議室には新たな緊張感が満ちた。

武田が大きな地図を卓上に広げる。その表面には、アメリカの銅鉱山、大阪の製鋼所、バタヴィア(現ジャカルタ)からのレアアース、リヨンの絹糸ケーブル――各地の供給ルートが色分けされている。


「諸君――この規模は、実に途方もない。我々がこのカタパルトを作り上げるには、鉄だけでなく“同盟”も鍛えねばならん。」


テーブルの端、フランス工兵隊のルイ・アルノー大尉が眼鏡を押し上げる。

「フランスの鉄道は三か月でバタヴィアに到達しますが、そちらの銅は太平洋を二度渡らねばなりません。シベリアでロシアの輸送が遅れたら、どうなります?」


背の高いアメリカ人女性、物流主任メアリー・トンプソンがクリップボードをカチカチと鳴らす。

「運ぶのは金属だけじゃありません。国境、関税、嵐――いくつもの壁を越えなきゃいけない。既に台風で二隻失いました。一国が滞れば、全体の予定が狂う。」


ハン・ウェンは指でルートをなぞる。

「それでも、一つでも繋がる道が残れば、夢は生きます。世界はこれまで、こんな橋を架けたことはありません。」


サミュエル・ヴォルテールが日誌を勢いよく閉じる。

「我々が作るのは火星への道であり、平和の象徴でもある。一本の鋼材ごとに約束が生まれ、一本のケーブルごとに世界が結びつく。“常設評議会”を提案したい――供給、信頼、迅速な連携のための、世界規模のネットワークを。」


武田はゆっくりと頷いた。

「ならば、ここで誓おう。たとえ一両の貨車でも、一隻の船でも、このプロジェクトは止めない、と。」


誰も拍手しなかった。

ただその場に集った全員が、求める鋼鉄と同じ重みの決意と、夢に照らされた光を胸に抱いていた。



「安全と無謀の間」――設計哲学・プロジェクト哲学の対立と和解、責任と夢への葛藤**を、各国のリーダーたち・技術者たちの会話と情景で描きます。



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