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第四章 第九話「日本商業帝国の成立」

天正十四年(1586年)、日本の商業は大きな転換点を迎えていた。


戦国の覇権争いはまだ続いていたが、黒川家の鉄道網の整備と貿易ネットワークはすでに全国規模に広がり、日本の経済を支配しつつあった。

しかし、黒川真秀はそれだけでは満足しなかった。

彼の最終目標は、「日本を世界に通用する商業国家へと発展させること」だった。

________________________________________

【日本商業帝国の基盤】

「商業の発展には、明確な経済基盤が必要だ。」

通商産業院は、日本の商業を統一するため、以下の三つの柱を確立した。


① 全国統一通貨の発行

これまで日本には統一された貨幣が存在せず、各地の大名が発行する金貨・銀貨・銅銭が乱立していた。これが貿易の妨げとなっていたため、通商産業院は「統一通貨制度」を導入することを進言し決定した。

•金貨・銀貨を基軸通貨とし、各地での貨幣価値を統一。

•各藩に流通する貨幣を制限し、通商産業院が管理する貨幣を全国に流通させる。

これにより、国内外の貿易が格段に効率化され、日本経済の基盤が強化された。


② 商業都市の整備


通商産業院は、商業国家としての基盤を強化するために、全国に商業都市を指定整備した。

•長崎 … 南蛮貿易の中心地として、海外交易の窓口に。

•堺 … 国内市場の中核として発展させ、商人の自治権を強化。

•敦賀 … 東南アジア貿易の拠点とし、琉球交易を拡大。

•江戸 … 徳川家康との関係を強化し、東日本の商業拠点へと発展。

こうして、日本の主要都市が商業の中核市として機能し始めた。


③ 海軍の創設


通商産業院は、商業を守るため、強力な**武装船団(海軍)**を創設した。

•貿易ルートを防衛するため、武装商船を編成。

•海賊や南蛮勢力の侵略を防ぐため、瀬戸内海と南シナ海に防衛拠点を設置。

•通信網を整備し即応体制を構築した。

この結果、日本の海運はより安全となり、東アジア全域での交易が可能となった。


________________________________________

【羽柴秀吉との連携】

羽柴秀吉は天正12年11月21日、従三位・権大納言に叙任され、これにより公卿となり、天正13年(1585年)3月10日、秀吉は正二位・内大臣に叙任された。

名実ともに黒川真秀の上司となったのである。

そして、近衛前久の猶子となり、天正13年7月11日には関白宣下を受けたのである。


「黒川殿、もはや貴殿の商業力は日本の支配に不可欠なものとなった。だが、日本の経済を掌握するのは、この秀吉でなければならぬ。」

しかし、黒川真秀は冷静だった。

「黒川家は通商産業院です。関白殿下にはもっと大きな高所から日本全体を治めていただきたい、細かな事は、通商産業院に任せて下さい、黒川は武家政治とは異なる形で、日本の繁栄に貢献したいと存じます。」

通商産業院は、黒川家が関白になった秀吉の影のアドバイザーとして、経済力で国を変えていくという独立した影響力を持ち続けるための重要な布石だった。

________________________________________

【通商産業院の外交戦略】


通商産業院は、日本の商業帝国化を進めると同時に、海外への影響力拡大も視野に入れていた。


① 明国との正式な貿易路確立

通商産業院は、勘合貿易を発展させ、明との貿易を拡大。

さらに、密貿易を取り締まり、日本主導の交易体制を構築することで、日本の経済的自立を進めた。


② 東南アジア貿易の拡大

通商産業院は、シャム(タイ)、マラッカ、ジャワとの直接交易を開始し、日本の商品(漆器・鉄砲・金属製品)を輸出。

さらに、南蛮貿易で得た香辛料や織物を日本市場に持ち込み、莫大な利益を生み出した。


③ ポルトガル・スペインとの対立

黒川家の貿易独占を警戒したポルトガルとスペインは、日本の市場を奪い返そうと画策し始めた。


「黒川家が南蛮貿易を掌握することは、我々にとって大きな脅威だ。」


ポルトガルは、密貿易や布教活動を通じて影響力を維持しようとし、スペインは軍事的圧力をかけ、日本への介入を狙い始めた。

しかし、通商産業院はそれを見越していた。

「外国勢力が日本を支配しようとするなら、こちらもそれに対抗する策を講じるまでだ。」

通商産業院は、南蛮勢力に対抗するため、日本の商業防衛体制をさらに強化することを決意した。

________________________________________

【日本商業帝国の成立】


黒川の活動により、通商産業院が指導する日本は単なる戦国時代の国ではなく、東アジアの経済大国として成長しつつあった。

1.統一通貨の導入により、国内市場の統一が進む。

2.商業都市の発展により、日本の交易ネットワークが確立される。

3.武装船団の強化により、南蛮勢力の影響を排除する。

4.天皇の名の下、時の政権がなんであれ、独立した国家組織として存在する道を確立。

5.明・東南アジアとの貿易拡大により、日本の経済力が飛躍的に成長。

6.科学技術の発展により世界をリードする国家となる。


「この国は、もはや戦国の乱世ではない。これからは、商業の時代だ。」

黒川真秀の目指した「日本商業帝国」が、ついに成立しようとしていた。



次回:第四章 第十話「南蛮勢力の逆襲」

日本の貿易を完全に独占しつつある黒川家に対し、ポルトガル・スペインはついに本格的な対抗策を打ち出す。

彼らの狙いは、「日本の支配権を奪い返すこと」だった──。


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