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『蒸気革命』第八章 「道を敷け、蒸気に轍を」

天正十三年・越前〜東海道試験路線にて

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【序:鉄の獣が走るには、道が要る】

黒川真秀は、広げた巻物に線を引いた。

「越前から東海道へ。道は人の足ではなく、“蒸気”のために敷かれる専用だ。」

それはかつての街道とは違う、鉄と寸法の道。

傾斜を避け、曲線を読み、重量を支え、そして“熱”を逃がす。

それは「道」ではなく、「仕掛けられた未来」だった。

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【レールの製造】

如月 千早が言う。

「レールは鉄の帯。圧延鋼をさらに“I字型”に成形し、断面強度を上げる」

賀茂 清之助が言う。

「“道”ってのは、土地の性格まで鉄に映すってことだな。熱で曲がっちまう、荷で沈む、雪で埋もれる……全部、計算のうちに入れる」

朝比奈重蔵が言う

「レールは1本、長さ十間(約18m)にしよう。接合部は“鉄の継板つぎいた”で強化。鉄の伸びを想定し、隙間を空ける。固定には木を埋めて、レール幅は半間(0.9m)誤差0.3分以内で敷設する」

伊藤 百野

「軌道下に“砕石”を敷いて、振動や雨を逃しレールの浮くのを防ぎましょう。」

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【車輪と車体の試作】

真秀がまたまたアドバイスを入れた。

「“車輪”とは、ただの丸い輪ではない。鉄の上を滑るために造られた精密な台形にして、曲線でも戻ってくる性質を持たせる」

朝比奈に描せた、テーパー車輪の断面図。

傾斜とフランジ(脱線防止輪)が一体となったその図面に、千早も目を見張る。

「……これなら、自然に中央へ戻ろうとする。すごい……!」

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【機関車の試作】

試験工房で組み上げられたのは――黒川式蒸気機関車試作一号機「鳳雛ほうすう

•鋼板製のボイラー胴体(圧延鋼使用)

•駆動輪2軸、従輪1軸、計3軸構成

•ピストンは往復→回転変換機構で動力を伝達

•石炭や重油ではなく薪や木炭が使えるようにする缶(百野案)

蒸気圧最大3気圧、設計最大時速 20里/刻(約40km/h)

試作区間は越前城下〜港町河口までの直線5里(20km)木のレールを鉄のレールに張り変えたところ。

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【起動の日】

初めてレールの上に据えられた「鳳雛」を前に、村人、商人、職人、僧侶、子供たちまでが見守る。

真秀が、静かに告げる。

「これはただの鉄の塊じゃない。火と水と鉄と、人の知恵が生んだからくり、蒸気車だ」

清之助が火床に松脂をくべ、百野が水位を調整。薪を火室にくべていく。

千早が安全弁と圧力計を見守り、重蔵が手元の計器で合図する。

「圧力安定。動輪連結、良好」

次第に火室の温度が上がり、蒸気圧が上がっていく。

「いくぞ、“火の馬”……!」

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【轟音の幕開け】

――シュオオオオッッッ!!

ゴォン、ガガン、ゴゴゴゴ……!

動いた。

鉄が走った。

火の心臓が、大地を叩く。

レールが、響いた。

村人たちは一歩下がり、目を見開く。

子供たちは歓声を上げ、大人たちは息を呑む。

“動いた”

“運んだ”

“繋いだ”

それはただの移動ではなかった。

それは、“世界の距離を縮める”という、時間と空間の革命だった。


黒川真秀は日記に書いた。時に天正13年10月14日

「初めて鉄道を蒸気機関車が走った日――越前に雷鳴はなかったが、心の中で“文明”が音を立てた」

「火が火薬ではなく、蒸気となって“人を運んだ”日。それを見た子どもたちは、“この国が変わる”ことを疑わなかった」



終章予告:「鉄を遺して、火を継ぐ者たちへ」

まずは軽便鉄道サイズですが、鉄道が出来ました。当面カーブが多いですから、レール幅が狭い方が有利でしょう。

真秀が語る“次の構想”は、海を越える鉄の船――“蒸気船”


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