『蒸気革命』第一章「炎の序章:託された曼荼羅」
蒸気機関車とか作るのは大変です、積み上げた技術力が必要です。チート知識があるといえども一筋縄では出来ません。
天正十二年・越前・黒川家智泉院
凍えるような冬の朝。智泉院の奥、工房にほど近い書院へ一人の男が呼び出されていた。
賀茂 清之助である。
越前の鍛冶師の中でも異質な存在とされ、火と鉄に人生を捧げる男。
戸をくぐると、そこにいたのは主君・黒川真秀。
そして巻物を前に座していたのは、理論の女・如月千早と、無言で測定盤を扱う技術官・朝比奈重蔵、本草記録を手にした伊藤百野だった。
黒川真秀が言った。
「清之助、君を呼んだのは他でもない。君の大好きな火の力で、この国を“動かす”。そう、鉄道を作ろう。」
そう言って、真秀が開いたのは、複雑な図面が並ぶ“工程巻物”まるで曼荼羅だ。
「作るのは蒸気機関という。それで動く乗り物だ。」
工程目録(一部抜粋)
・高温に耐える煉瓦の焼成
・銑鉄からの鋼生成
・反射炉と水冷伝導
・圧延装置や旋盤などの開発
・ピストンとシリンダーを開発
・最終段階としてレールの上を走る蒸気機関車
賀茂 清之助が言った、「ううん、鉄を鍛えずに、溶かして自在な形に作る、青銅ならともかく、日本では作れない。鋳物はもろい。火で湯を沸かして湯気で鉄の塊を動かす?隙間から湯気が漏れたり、破裂するんでは。」
如月千早が言う、「この曼荼羅図のことは、理屈としては分かるわ。けど今の日の本では明国みたいに溶けた良い鉄は作れない。鉄鉱石、石炭、火の温度、そういったものすべてが足りません。」
賀茂の下で、設計を担っている朝比奈 重蔵が言った。「足りない足りないは、工夫が足りない。“足りない”を理屈や計算で埋めるのが私の仕事だ。ある程度紙の上でしっかり計算して作るしかない。まず、銑鉄を作れる炉の設計だな。」
千早の学校で本草学の教授をしている伊藤 百野が静かに言った。「耐熱の草灰、試してみます。粘土と混ぜて、熱に強い煉瓦の実験から始めませんか」
みんなを見回しながら、黒川が言う、
「私は知っている。百年後の世界は蒸気の力を開発する。だが、百年後の世界といえども、四百年後から来た私にとっては、今とたいした技術力の違いがあるわけではない。私は出来ることを知っている。だから、私たちは今ここで、それを百年前に実現するんだ」
清之助は覚悟を決めた、賀茂 清之助は、しばらく図面を見つめ、拳を握りしめた。
「……なら、理論は分からないが、未来で出来ているんなら出来るだろう。湯気が世界を動かすってなら、俺の力で作ってやる」
こうして、無茶苦茶な理屈かもしれないが、必要に迫られた「蒸気革命」は、静かに始まった。
舞台は越前。
手持ちの道具は、とりあえずはたたら製鉄やくず鉄から作った粗鋼と、炭火と、ふいご。
信じるは、未来の完成予想図であった。
黒川配下の技術集団が動き出した。
次は「掘り出せ、夢の鉱脈」
商人との密談。運搬路の整備。石炭の“熱量”と、鉄鉱石の“純度”をめぐる現地交渉。
山師たちとの協定。そして、越前から始まる資源革命――
です。




