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夢の折り返し ep26

「ずかちゃん?」


「え?」


自分が何を発言したのか分かっていなかった鈴花は、礼奈の言葉で現実に引き戻されたような驚いた顔で礼奈の顔を見た。周りを見れば、スタッフや社長にカメレオンがこちらを見ているのに気がついた。


「私、なんか言いました?今・・・」


「ずかちゃん、今きー君って言ったんだよ。気付いてなかったの?」


「え!?ごめんなさい!?何でもないです。」


スタッフに向けて頭を下げて、スタッフもそこまで聞こえていたわけではなかったため、収録に向けて作業を進めていく。ただカメレオンは、鈴花から聞こえた言葉に固まるしかなかった。


まさか歌詞で自分の事を出してくるとは思いもよらなかったからだ。


思案した鈴花が意を決して、カメレオンに近づいて行き聞きたかった事を聞いた。


「すみませんカメレオンさんは、何処かで私と会ったことがありますか?」


「・・・・・・」


カメレオンと対面しても、鈴花はどうしても懐かしい人物と同一人物とは思えていなかった。まず声質が違う、カメレオンは低めで鍵ニはやや高めだから何より考え方が一致していない。


思案しながら話し、場を制するやり方は似ているかもしれないが違うように思えた。でもカメレオンが鍵ニと被って見えたのは歌詞の書き方と詩に込める言葉が似ている気がしたからだ。


8年も経っている事を踏まえても劇的に人の思考は変わらないと思っていた。


「・・・・誰と勘違いをしているかはわからないけど、私がずかさんと対面したのはこの間の親睦会が初めてだよ。」


その言葉に腑に落ちたような、落ちないようなそんな感情が渦巻いた。違ってて欲しいと思いもそうであって欲しいとも思ったからだ。


矛盾してても、どちらの正解が聞けて少し考え鈴花はカメレオンにお礼を言って、ソファに戻り歌詞を読み込んでいく。


傍から見ていた礼奈は焦りながらも、言うのかと期待していたが言わないで終わったためカメレオンを睨んでいた。そんな視線に気付いているであろうカメレオンは仮面を付けているため表情こそ分からないが内心焦っただろうと礼奈は思っていた。


「ずかさんが読み込んで、15分後には収録を開始します。準備の方をお願いしますね。」


カメレオンがそれだけを言って、また社長と話し始めた。スタッフ達も準備に動き鈴花は集中して歌詞を読み込んでいく。そんな鈴花とカメレオンを見ている礼奈は聞こえないように小さくため息を付いた。


感覚だけでその人と思った鈴花の感性には驚愕だが、それよりも絶好のチャンスだったんじゃないかなとも思っていた。


カメレオンが正体を明かすのは色々と問題がある。腐れ縁というだけでなく、父親の存在が大きい。そのため言わないでおこうとしたのも理解できるがこじれている現状、打破するなら今ならまだ修復出来るかもと考えた。


でも当人ではない礼奈では、固唾を呑んで見守るしか出来ないのが何とも歯がゆく思っていた。


「ずかさん、準備は問題ないですか?」


「はい、大丈夫です。」


時間が来てカメレオンから声をかけられソファから立ち上がり、収録するブースに移りレコーディングが始まろうとしていた。

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