夢の折り返し ep15
レコーディングの際、鈴花と礼奈の曲を聴きに来ていたカメレオンが突然そんな事を言いだした。聴き終えた彼からの言葉に鈴花は驚きを隠せずに居た。
「今回の曲はとても歌いやすく、感情を込めやすかったのですが。」
「そうですか。・・・ただやはり私としても今のままでは歌詞が貴方の声に負けている感が否めない。なので少し持ち帰り、ブラッシュアップをしたいと思います。」
それだけを言うと早足で帰ってしまった。残された鈴花と礼奈は新井に促されて帰り支度をしていたが、鈴花は違和感が拭えなかった。
いつも感じてる既視感みたいな物が今回の歌詞からは薄れていた気がしたからだ。何故毎度の曲からそんな事を感じるか良くわからないため、礼奈に聞いてみることにした。
「れいちゃん、ちょっといい?」
「なあに〜、ずかちゃん。こっちも帰り支度終わるよ〜。」
「カメレオンさんの事でね。前回の曲も同じなんだけど、既視感があるの。何でか知らないけど、凄く知ってるような感じがしてるの。でも今回の曲からはそれが薄れていた気がしたんだけど、何でかな?」
「え?そんなの感じたことないけど。でも、薄れてるって例えばどんな風にずかちゃんは感じたの?」
そう礼奈に言われ、定まった言葉が分からなかった。どう言葉で表現していえば良いのか。すぐには出てこなかった。なので自分が感じた感覚で言うことにした。
「曖昧な感じになるけど。前の楽曲の時から既視感がずっとついてきていたの。初めて歌わせてもらうのに何でか知っているような、でも今回の歌詞はそれが薄れたと思った。その人の音楽節が薄れたのか、よくわからないの。」
「それはその人の音楽性がブレたってこと?」
「そうじゃないんだけど。なんて言えば良いのかな〜。今回の曲も歌いやすくて感情が乗りやすい曲だった。でもそれだけだったの。カメレオンさんが作った歌詞とはちょっと違うのかなって。メロディも違うと感じたせいかな?前はポップ系で今回バラードだからそう感じたのかな?私もこんがらがってきちゃった。ごめんね、変なことを言って。」
私の言葉で何を思ったのか分からなかったが、れいちゃんは眉間にしわを寄せて考えていた。それから何か閃いたのか、「あたしちょっと野暮用、夕ご飯はパスタが良いな!」という言葉を残して早足で何処かに行ってしまった。
私は私で、スーパーに行ってお肉の値段を見てから今日の夕ご飯を考えなくてはならない。でも、れいちゃんとカメレオンさんは、高校の頃からの腐れ縁と言っていたっけ。
「れいちゃんにしか分からない事があって、助言をするのかな?でもいつも喧嘩腰だし、それも違うような〜。ウ~ン、わからないな〜。」
悩みすぎるのも良くないけど、スッキリしないのもそれはそれでモヤモヤする。まあ、買い物をすれば気が紛れるだろうと思い、鈴花は最後に新井さんに挨拶を済ませていつもの帰路にある、スーパーを目指した。




