夢への階段 ep29
ここから鈴花の視点に戻ります。
鈴花達が社長室を後にした後、配信部屋を見に行くと先程見た時と違いスタッフが数名いて何かの準備のために作業をしていた。何やら自宅からの配信では表面上の動きをするのに限界があるため、此処では3Dの様に細かな動きがトレースすることが出来るとの事。
新井が言っていたことはこのことだったのかと1人納得していた。目の前でシスターズの4人が動いていて、床に置いてあるモニターからはキャラクターが4人の動きに合わせてトレースしているのがわかる。
言葉で伝え聞くのと、現場で見るのとでは情報量が違うのがわかる。これでならもう少し大きく動きながら、やれることもこれから増えていくのだろうと考えていた。
「新井さん、すごいですね。この3Dの動きに。」
「ええ、言葉では伝えられない表現を此処まで可視化出来ているのも大きいわね。」
「ちゃんと2Dのキャラクターのまま、3Dにできているのも驚きです。凄いな」
シスターズがはしゃぐのを見ていた3人は、目の前の光景が自宅配信をしている時とは雲泥の差がある事を理解した。
この先、もう1段上に上がる事が出来る。そうすれば、いつかあの人も観てくれるのかな。そんな漠然とした考えを鈴花はしていたが、その横で思考を巡らませている彩奈は友人の考えていることがイマイチ把握しきれずにいた。
妹や鈴花のために動いている事は理解しているし、ありがたいとも思っている。ただ彼が突き動かす物が何なのか、彼の行動原理が不明瞭が多い。わざとそうしている節はある。
でも、それでも根底にあるものがわからない。思考をめぐっても明確な答えはでない。彩奈が耽っていると、肩を叩かれそちらを向くといつもと変わらない笑顔な鈴花がいた。
「れいちゃん、私達も少し動いてみようよ。シスターズの皆も呼んでるみたいだし。」
離れた位置にいた2人、シスターズの面々に目を向けると手招きしているのがわかる。鈴花から手を握られ、連れて行こうとする。そんな親友を見ると心の底から笑っているのが分かる。そんな姿を見て考えるのはひとまず保留にした。
「ずかちゃん、歩くの早いってば。ちょっと待ってよ。」
「でも楽しそうだし。私達もやってみないと分からないこともあるから。」
鈴花に触発された礼奈は2人で3Dのキャラクターの動きが自分達にトレースしているのかを確認しながらシスターズの4人と楽しんでいた。
ダンスが踊れる鈴花がトレース具合を見るために、少し激しめのダンスを踊った。多少ズレがあるもののほとんど出来ていた。それを見て周りから拍手を貰うも照れくさそうにハニカム鈴花の姿があった。
「表現の幅がどんどん広がるね。此処まで凄いと、何したら視聴者達が喜ぶのかよく分からないよ。」
「そうね。大喜利をやってみてもいいし。コントみたいな事もセット関係なしに出来るから自宅で出来ることとの差があるわね。」




