夢への階段 ep12
駐車場を後にし、一行は入口から入りエントランスに着いたがどこでやっているのかは新井が案内してくれていたので後に追従する形で着いていく。一階にあるエントランスホールからさほど離れていない場所にあり中に入るとパーティー会場の様に広くきらびやかな場所に少し萎縮してしまう鈴花だった。
スーツ姿の男性や女性が入り交じっているのを見ると、事務職員や外回りの仕事の人達がほとんどだということがよくわかる。ドレスに身を包んだ人も居ないことはないが圧倒的にスーツ姿の人が多かった。
「うちの事務所ってやっぱりタレントって少ないですよね。増やすとかしないのかな?」
「社長はいきなり数を増やすのが得策とは思わないって言ってるし。まだじゃないかしら。まだまだ木っ端の事務所には変わらないし。今はまだ現状で出来ることを増やしていくことにしてるから出来ることが増えてきたら、もしかしたら増えるかもね。」
社長はああ見えて慎重に事を進めるから、シスターズを作る時も最初は渋っていたらしい。なんでも2人がまだ前線で活躍が出来ていない上に、一人一人に目が行き届かなくなるのを社長は危惧していた。
「新しい新事務所でコラボ映像何かも撮れるようにするくらいだからまだまだ地固めは続きそうね。まあ、2人は着実に上に行ってくれているから。私達も安心できるのだけど。」
そんな嬉しい言葉を鈴花と礼奈に言う。少し照れたような仕草をする鈴花に、あきらかに誤魔化しをして頭を掻く礼奈2人を見ている新井。意外と対象的な2人だが、仲が本当に良いのは昔から感じている。
初めて2人と会った時は、社長がネット配信の歌の投稿で自らスカウトしたと言った時は驚いた。フットワークが軽いのは知っているが会いに行ったのも。いざ会ってみると鈴花は少し身長が高い他は静かで凛とした佇まいだがやると決めたらやりそうな感じがした。
礼奈は少し警戒心があるが野心はあまり感じない。でも秘めたものがあると見ていた。声を出せば、活発な礼奈の方に目が行くが鈴花は静かに発する声に力を感じ、自然と目を引くのがわかる。
社長が自らスカウトしたのも頷ける。双方に光るものがあると新井は見ていた。後日社長に会った時に聞くと、同じような可能性を感じたらしい。特に鈴花の方は歌に力を凄く感じたと言っていた。
試しに2人の歌を聞いた時、会った印象が2人で違っていた。礼奈は激しい曲ながら綺麗な歌声から活発が消えたよう繊細な歌を奏でていた。そして鈴花は歌うことが本当に楽しいのか、声に魂が乗っているような。そして何より引きつけられる力強い歌声に聴き入っている自分がいた。
こんなにも会った時と歌った時の印象が真反対になる娘も珍しいと思った。だからこそ社長は伸び伸びとこの子達が開花するのを間近で観たいがために、今までタレントを増やすの拒否していたのを新井は知っていた。言うつもりはないが、そのうち笑い話になりそうな予感がする新井だった。




