夢の途中 ep23
視点が礼奈になります。
鈴花とご飯を食べ、カメレオンの配信の後にMV動画を1つ上げ、今日吐き出した鈴花の事を礼奈は考えていた。
鈴花の思っている葛藤や願望も礼奈は理解していなかった。社長に誘われVirtualキャラクターで配信するようになってから5年、一緒に住んでからは4年も共にいた。それなのに、鈴花の気持ちはあの時から動いていないのかもしれいと礼奈は思った。
今はきっと、見てくれていることを願って配信を続けている。でもこのままでは気持ちが折れてしまうかもしれない。鈴花のそんな姿を見たくない礼奈はスマホを取り出してムカつく相手にかける。
「もしもし、動画見たよ。ちゃんと事情説明してくれたのね。」
「事の発端がカメレオンのファンだからね。自分が起こしてしまった事だから自分で責任は果たさないと。」
相変わらず思い切りがいいのは良いことだが、鈴花にもこれくらい素直になってくれたらもう少し違ったのかもしれない。今更なことだけど。
「今日さ、初めて・・ずかちゃんがあの時の事をあたしに話してくれた。・・・ずかちゃんはあんたに・・・きー君に会いたがってる。会うのが怖いと思ってる。」
あたしがずかちゃんの名前を出し、気持ちを代弁すると電話の向こう側で息を呑んだのがわかった。きー君も考えてる事はあるかもしれない。でも・・・
「このままでいいなんて思ってないんでしょ?ずかちゃんはきー君に拒絶されてから今日まで8年、片時もきー君の事を忘れてないんだよ!」
段々とずかちゃんの気持ちがわかり、それに比例して声も大きくなる。でも言葉にするのは辞めない、止められない。だってあたしはあんた達2人のことが好きだから。
「ねえ、きー君はどうなの?ずかちゃんの事はどうでもいいの!?楽曲提供だけの繋がりだけになりたいの!!どうなのよ!!?」
「わかってるよ!!!」
今までこんな語気を強めに発する声を聞いたことなかった礼奈は初めての事で狼狽えた。
「れいちゃん、僕もわかってる。わかってるんだよ・・・・でもあの時・・・母さんが亡くなった時、僕には小学生の妹がいた。頼れる大人も居ない上に親族の兄は海外に渡米。他のことに気がまわらないよ。」
いつもの飄々として淡々と話す声ではなく、苦しそうで泣きそうに吐き出している友人の声にただ驚いていた。
「でもずかちゃんは・・・僕の隣に立って夢を・・・大好きな歌を捨てようとした。僕はずかちゃんに捨ててほしくない、かけがえのない物をあきらめる姿を見たくない。その時に僕は自分に憤りを感じた。ずかちゃんに迫ってしまったようなものだ。だから拒否した。今まで彼女が頑張ってきた唯一無二を捨ててほしくないために・・・・」
「きー君・・・・」
彼も葛藤を抱えて、あえて突き放した話しを聞いて思った。想いあってる。だけど、相手の枷になる事だけはしたくない。だから彼なりの選択肢が拒絶だったんだ。
「自分の行動に悔いはない。あるとすれば、ずかちゃんを傷つけたことだけだよ。僕は彼女の歌と君の歌に勇気を貰ったからね。」
「でもずっと会わないなんてことはないわよね。」
そう聴くと、今の状態で会っても互いに余計混乱するだけと話しはそれで終わってしまった。
「わかったわ、もう聞かない。会うときの線引き、そっちで頑張りなさいよ。」
「うん、わかってる。嫌われていないってことだけでも僕的には朗報だからね。じゃあ、またね。」
最後に話す時にはいつもの飄々とした声色に戻っていた。この2人はズレて来ている。ある意味で正常の様で歪んでいる。でもあたしはそんな2人が大好きだ、出来ることなら直ぐに仲直りして欲しいがきっかけがないと動けないだろうなと思った。




