夢の途中 ep2
礼奈にそう言われてテーブルに置いてある置時計を見ると18時をすぎていた。今日の配信で3時間していた鈴花は思いのほか時間が過ぎていたのに少し驚いていた。ストレッチを終えて立ち上がると見上げていた礼奈を見下ろす形になる。やっぱり小さい身長のほうがいいな~と思っていた。身長が高い中々に厳しいところがこれまであった鈴花。女子の中で身長の高さのせいか可愛く見られないや鈴花よりも身長が低い男子からは妬みの視線や悪口を言われたりしていた。
「ずかちゃん?どうしたの?」
「え?」
物思いに耽っていたのか、礼奈を見ながら考え事をしていた。
「ごめんね。考え事しちゃったよ。」
「結構疲れちゃった?作るのつらいなら久々に外食でも行く?」
「ん〜・・・やめておこうよ。せっかく少量でも蓄えが出来て来ているのにここで気を抜くのは良くないわ」
ネット配信者でやっと視聴者が着いてきたばかりなのに気を抜くのは良くない。唯でさえ、この仕事はある意味では危険と隣り合わせだ。流行り廃りが明確で小さな不祥事が燃え広がり鎮火出来ずにネット配信者を辞めなければならないほど燃えてしまう時がある。仲良くなったネット配信者が涙ながら辞めていった人達を見てきた。なら小さくても積み重ねが大事だ。
「冷蔵庫に豚の小間切れがあったよね。生姜焼きでもいい?あとジャガイモがあるからポテトサラダ作ろうかな。」
「やった!ずかちゃんの生姜焼き好きなんだよね。にんにく入れてね。明日はあたしフリーだからお願いします。」
「あまり多くは入れられないからね。私は明日ボイトレとミーティングだから。」
料理一つでこんなに喜んでくれる礼奈を見ていると自然と笑みがこぼれる。
「いや〜、料理教えてもらってよかったよね〜。私は壊滅的にできなかったけど。」
そう言って礼奈がテーブルに置いてあるディスプレイの近くある写真立て見ながら言ってきた。
「今頃、何をしているんだろうね。」
「・・・・知らないわよ。あいつはわた・・・・私達を捨てたの。あれ以来、会ってもいないし。居場所すら分からないんだから。そんなことより生姜焼きね。作ってくるから少し待っててね。」
言葉数少なめに言って鈴花は部屋から出ていき。残された礼奈は写真立てを持って眺めていた。そこには2人の女子に挟まれて1人の男子が写っていた。3人は笑顔で手には卒業証書を持っていて、これからの事に期待を膨らませ、無限の可能性を感じ気力に満ち溢れるような姿で写っていた。
「あれから8年だよ。そろそろ動く時じゃないのかな・・・ねえ、キー君」