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夢の途中 ep12

激しく笑いながら咽てる礼奈の口から出したお茶を拭いて、背中を擦っている鈴花の隣には顔面蒼白な新井さんがいた。


「他には何もしてませんよね?」


「タオルで顔を拭こうとして雑巾で顔を拭いてました。」


新井さんは顔面蒼白から色味が失われ土色の顔色になっていた。ポケットから封筒を出して社長の前に置いてある。新井さんが「今までありがとうございました。辞職します。」社長室を出ていこうとする新井さんの手を社長が掴んだ。


「だ大丈夫だって!先方は笑って許してくれたから。だからこの退職届しまって・・・ね?」


「デスマーチのし過ぎで頭に蛆でも沸いてるんですか!?どこをどうしたら大丈夫なんて言葉が使えるんですか!!先方のチャンネル登録者数はうちの100倍以上なんですよ!?わかってますか!?象がアリに挑むほどの差があるんですよ!!こんな木っ端な事務所なんて潰されるに決まっています!!」


社長と新井さんの激しく言い合い・・・ではなく新井さんの怒号しか響いてないけど。背中を軽く叩いていた鈴花だが礼奈のかすれた笑い声が大きくなっていった。苦しそうにお腹痛い痛いと言いながらも笑いがやむことはなかった。少しして収まってかられいちゃんが社長に話しかけた。


「はー、笑ったわ。社長、最高です。新井さんも落ち着いて下さい。多分ですが大丈夫ですよ。」


「どうしてそう言い切れるのよ。れいちゃんあなた、カメレオンに会ったことがあるの?」


新井さんの言葉に少し視線を外しながら「まぁね。」と短くだけ答えた。どこで知り合ったのかな、今度聞いてみようと鈴花は考えていた。


「まあそれは置いといて、それで社長。多分ですが先方がシングルでまずは出せって言ってきたんですよね。」


「うん、その通りだよ。私の有名税を使って早期に足場を固めてからでも遅くはないだろうと先方に言われている。なのでまずは2人別々のシングルを製作することになる。楽曲は一応各4曲ある、まずはサンプルと歌詞を渡すから読み込んで見てね。」


新井の手を離してデスクの引き出しから書類とCDを取り出してテーブルの上な置いた。CDの表面に赤いラインと青いラインが付いていた。


「一応キャラクターのメインカラーにしてもらったから。赤いのが、ずかちゃんので青い方はれいちゃんだからね。」


「うわぁ〜。どんな曲なんだろう。気になるね、れいちゃん。」


私はCDを手に取り歌詞が載ってる書類をめくって中身を見た。歌詞見ていくとなんとなくだが既視感みたいなものを感じた。読んだことがない初めての歌詞なのに何でだろう?


頭を悩ませている鈴花かと違って、礼奈は盛大にしかめっ面をしていた。自分の得意な歌詞っぽくないと読んでみて何となく分かっていたからだ。


「社長、私の歌詞ってもしかしたバラードなんですか?初っぱなからハードル高いですよ。」


「よく分かったね。ずかちゃんが少しアップテンポな曲で、れいちゃんがバラードなんだ。私もハードルが高いと言ったんだけど、それぐらいはこなせるだろうと配信を見て決めたらしいよ。」

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