四季
春、芽吹きが聞こえる。
不条理な世界に鬨の声を上げる様に。
目覚め。
どこへ行こうか。
晴れ渡る空は希望であり、絶望である。
雲一つないキャンパスに私たちは何だって描ける。
白くも黒くもできる。
夏、海が広がる。
帆を張って、嵐の日も凪の日もただ船を進める。
航海。
コンパスなんてない。
船乗りは航路が正しいのかも分からず、それでも櫂を漕ぐ。
がむしゃらに漕ぐ。
或いは、後ろを見ない様に。
秋、果実が熟れる。
果実は酸っぱくて甘い果汁をたっぷりと蓄えた。
斜陽。
成りたい様に成れたのか。
動けぬ果樹は自問する。
そのうちに、無性に眠たくなってくる。
目を瞑ると、果実は地に腐り落ちた。
冬、灰が降る。
しんしんと、輪郭を失った灰たちが舞い降りる。
銀世界。
積もった灰は静かに眠る。
沈黙は安らかで、侘びしくて、虚無である。
耳に刺さる静寂のその先、
音のない空間に、また、一筋の産声が聞こえてくる。