中毒性
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
こういう、仄暗い感情が大好きなんです。
彼と付き合う前から、あの子達は友達で、私の知らない時間がある。楽しかった事、辛かった事、それらが今の君を形作っている。だから……私なんかより、きっと君達と付き合いたいと、内心では思っているんじゃない?
「そう、それでね」
廊下での帰り道、他愛のない会話を続けていた時の事だった。彼の視線が私から外れ、遠くを向く。振り返って視線の先を辿ると彼の幼馴染が居た。彼の幼馴染は朗らかに手を振って、揶揄う様に口を開いた。
「何? ずっとイチャついてんの? バカップルだね~お前達」
「普通に話をしていただけだよ、ね?」
「あ……うん」
私には見せない柔らかい笑み。きっと生涯を掛けて向けられることの無い表情。そう思うと胸が苦しくなって、彼の顔を直視出来なくなる。
心が狭いと思う。でもそれと同じくらい、どうしよもなく今の自分が惨めで、この場から逃げ出したくなった。だから私は何でもない振りをして、彼に声を掛ける。
「ごめん、忘れ物に気が付いたから、戻るね」
返事は聞こえなかった。聞こえる前に駆け出したから。
彼女が去った廊下をずっと眺め続ける。そして暫く経った後、幼馴染は苦々しい声で避難する。
「お前、其れ止めた方が良いと思うぞ」
「なんの事?」
あえて惚けた顔をして、小首を傾げた。
本当は分かっている。彼女が幼馴染と会話をするのを拒んでいるのを。それを見て、さり気なく気落ちしているのを。それでも止められない。彼女を焚き付けるのを止められない。
「そうやって自分の女を焚きつけるの。愛想尽かされるつってんだ」
「でも可愛いんだもの」
少なくとも、そうやって気落ちしている時は僕のことで頭が一杯で、他のことなんて考えられないのだと思う。そう思うと背徳感がゾクゾクと競り上がって、堪らない興奮を覚えた。
「……○○に言ってやろ。どうなっても知らねぇ」
そう彼は吐き捨てて踵を返す。○○ねぇ、あの子が敵に回ると面倒なんだよねぇ。まぁでも、敵に回った時、自分がどんな感情を抱くのか、たいへん興味がある。だから乗ってあげるよ。
恋人に幼馴染がいると、異性同性問わず苦しいだろうな。と思ってます。
自分の知らない過去を知っていて、表情を知っていて、それが今の貴方を形作ると考えると、やっぱりとてももどかしい。
その絆に入り込む事は出来ないんで。
それを知った上で容赦なく見せ付けにかかるのは、性格が悪いとも言えますね。
明日も興が乗れば彼が嫉妬した話になると思います。
意外と暴君ですね。