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宿敵の家の当主を妻に貰いました。~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~  作者: 紗沙
第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから

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第60話 楽しい楽しい人生初の魔法

 ある日の昼下がり、仕事をほとんど片づけた執務机の上の便箋に文字が書き込まれる音に気づいた。


「……? シア?」


 目を向けてみれば、文字が書き込まれているのは黒い縁のある便箋だった。それを手に取って読んでみれば、待っていた報告だった。


「旦那様? 奥様はなんと?」


「ああ、ついにゲートの機器の試作品が完成したみたい。特に問題がなければ今日にでも試してみないかってさ」


「あぁ、以前言っていた件ですね。それにしても、もう出来たんですね。ナターシャさんという方は凄いんですねぇ……」


「本当、そう思うよ」


 ターニャに微笑みかけて、返信用の便箋に問題ないことを書き込む。今からでも問題ないという旨を書き込んで送信すれば、あまり時間を置かずに部屋の中に金の光が満ちた。


 昼間なのにもかかわらず眩しいと感じる程の綺麗な光。その楕円の中から、シアが出てくる。手紙を受け取ってすぐにこっちに来てくれた彼女は、俺を見て微笑んだ。


「早く会いたくて直接来ちゃいました。ノヴァさん、準備よろしければ行きますか?」


「そうだね、行こうか」


 立てば、同じように立ち上がったターニャが頭を下げる。


「行ってらっしゃいませ旦那様、奥様」


「あぁ、行ってくるよターニャ」


「行ってきますね、ターニャさん」


 ターニャに別れを告げて手を繋ぎ、シアが新しく展開したゲートの中へと俺達は入る。

 ゲートを潜れば、もうそこは王都の研究所だった。


「こんにちは、ナタさん」


「ん、こんにちはノヴァさん、当主様」


 待っていたのか、椅子に座っていたナタさんが軽く手を上げる。そんな彼女の横の机には、見たことがない機器がいくつか置かれていた。


「それで……出来たのですか?」


「うん、これが試作品。ノヴァさん、手に取ってみて」


 ナタさんから差し出されたのは、この前受け取ったシアの魔力を受け取る機器よりも二回りほど大きな機器だった。


「なかなかに大きな機器ですね」


「小型化しようとしたけど、無理だった。その内やりたいなと思ってる」


「いえ、ゲートの魔法を使えるだけで十分ですから」


 ナタさんにそう言って、手元の機器を見る。両手で持てる便箋を広げたよりも大きな大きさで、厚さもそれなりにある。色々な部品が組み合わさっているみたいだけど、右上の5つのガラス管以外の詳細は全く分からない。


「当主様の魔力を最大で5回まで充電できる。だから、ゲートの魔法も5回まで使える」


「そんなに使えるんですか? かなり便利ですね」


 そう言ったシアは俺の持つ機器に触れる。すると機器の右上にある5つのガラス管の全てが色を変えた。これでゲートの魔法が使えるということだろうか。


「ん、準備はこれでOK」


「では早速使ってみて……の前に、私からもノヴァさんに渡しておくものがあります」


 シアがポケットから何かを取り出そうとするから、一旦機器を近くの机に置いた。差し出されたのは黒い縁のついた便箋、ただし、右上にはガラス管が取り付けられている。


「これは……改良された便箋?」


「はい、それぞれにガラス管を取り付けることで、一つの便箋で複数回のやり取りが出来るようになっています。これで毎回送るために新しい便箋を使う必要がなくなりましたよ」


「うん、ありがとう」


 10枚ほどの便箋を受け取れば、その全てのガラス管の色が染まっていた。ゲートの魔法に比べて使う魔力は当然ながら少ないみたいで、ガラス管の大きさもかなり小さい。机に置くとちょっとした段差になっちゃうくらいかな? 

 そこまで気にならないけど、割らないように注意しないとな。


「ユティとオーロラには事前に渡してあります。本人たちの手で渡したいかなと思いまして。今度会ったときに貰えると思いますよ」


「うん、分かったよ」


 シアから封筒も貰い、そこに便箋を入れて大切にしまう。

 もう一度ゲートを開く機器を手に取って眺めた。


「これは、どんなふうに使うんですか?」


「使い方は基本的にこの前のと同じ。握って発動、行く場所を思い浮かべればゲートの魔法が起動する」


「なるほど……」


「私はしばらくナタと話をしていますので、試しに色々な場所に行ってみてはいかがでしょうか?」


「そうだね。ぜひ試させてもらうよ」


「ん、データを取るのにも役立つから、遠慮せず使ってみて。ただ最後にここに戻ってくるための魔力は残しておいてね」


 ナタさんの言うことをまとめると、4回は好きなところにゲートを使っても良いってことか。


「じゃ、じゃあ使ってみるね」


 初めて使う魔法が楽しみだ。

 機器に力を入れれば、体の奥底から力が湧き上がる。見下ろしてみれば、ガラス管の一つが透明になっていた。


 目を瞑って、光景を思い浮かべる。やっぱり最初に行きたいのはアークゲート家か。オーロラちゃんに会いに行って、彼女を驚かせよう。


 そう思ってアークゲートの屋敷を思い浮かべる。豪華な入り口や、中庭、剣の訓練をした訓練所に、そういえばユティさんの部屋は本がいっぱいで凄かったな。あの部屋は衝撃的だった。


「おめでとうございますノヴァさん、起動しましたよ」


 シアの声に目を開けてみれば、目の前に見慣れた金色のゲートが展開していた。


「おぉ……すごい、シアのゲートだ」


「ん……ゲートも安定しているし、問題なく使えると思う」


「なんていうか……ちょっと感動だ」


「ふふっ……ノヴァさんが魔法を気に入ってくれたようで嬉しいです」


 シアの笑い声を聞いて、彼女に感謝した。


「ありがとうシア。こんな風に魔法が使えるのもシアのお陰だよ」


「どういたしまして。私も力になれてとても嬉しいです」


「……幸せなところ悪いけど、これも渡しておく。それだけだと持ち運びにくいだろうし」


 ため息を吐いたナタさんに渡されたのは小さな布の入れ物だった。体に巻き付けることが出来る物で、大きさ的に機器がちょうど入りそうだ。

 機器を中に入れて腰に巻き付ける。確かにこれなら両手が自由になる。利便性も考えてくれるなんて、ナタさんには感謝しかないな。


「じゃあ、行ってくるよ」


「はい、楽しんで来てください」


 シアに笑顔で別れを告げて、ゲートの中へと足を踏み入れた。


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