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第八話  マルツェル到着

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「ようやっとアグニエスカの元へ行ける・・・」


 ポズナンの田舎道を車で進んでいた僕は、思わず泣き出しそうになってしまった。


 敵軍が国境線上に集結しているようなんだけど、これについては、人に向けて魔法をぶっ放す事が出来ないので僕は用無しだ。そんなわけで戦地に向かう必要はなかったんだけど、スタンピードが起こった東の森の魔獣の駆除については、全てを任される事となってしまったのだ。


 敵の飛空艇が上空に侵入できるほど、我が国の結界とやらはスカスカ状態となってしまっている為、敵軍のみならず、魔獣だってスカスカの穴からのそり、のそりと入ってくる。


 ルテニア軍は他の奴に任せるしかないけど、魔獣はお前がやってくれとか言われて、本当に腹がたつ。あの王様、いつの日か、ぶっ殺してやろうかな。


 魔獣を殺すのはいいんだけど、アグニエスカに会えなくて本当に死にそうで、ようやっと3日の休暇をもらってポズナンまでやってきたんだけど、まずは人が多い事、多い事。


 こんなに人口が多い町だったっけ?と疑問に思うほど、町の中は人で溢れかえっていた。


「おや!マルツェルじゃないかい!」


 車をノロノロと走らせていると、調度、店から出てきたパン屋のおばさんが、運転席にいる僕に気がついたようで、

「久しぶりだねえ、あんた、パヴェウさんちに行くんだろ?丁度、パンを配達しようと思っていたんだけど、持って行ってくれないかい?」

 と言って、紙袋に入ったパンを僕の方へ掲げて見せる。


「持っていくのは問題ないですよ、代金を払いましょうか?」

「お金はもう貰っているから大丈夫だよ」


 おばさんはにこりと笑って言い出した。


「パヴェウさんのところへは決まった人しか行けないようになっているから、私が配達に行く事になっていたんだけど、最近じゃ、お店に来るお客さんが多くてね、なかなか店を空ける事が出来なくて困っていたんだよ」

「へえ、そうだったんですか」


「いくら歳をとったからといっても大魔法使いの力は健在だろ?そんなものだから、王都にお連れしたいって王宮からの使者もそりゃあ沢山やってきたんだけど、パヴェウさんも腰をやっちゃってるから長距離の移動とか無理みたいでね。相手をするのも嫌だからって大方の人間が通せないようになってるのよ」


「はあ・・なるほど」


「マルツェルはアグニエスカを迎えに来たんだろう?だったら早めに行った方がいいと思うよ?」

「え?なんで?」


「アグニエスカがお婿さんを探しているって噂が広まっていて、釣り書きが山のように届けられているっていうんだよ。今はこんな情勢だから、スコリモフスキ家と縁を結びたいって家は多いだろ?」


「な・・な・・なんで?なんでアグニエスカが縁談?」


「本人は赤毛を気にしているみたいだけど、あの娘もあれで、なかなかの美人だろ?だから、この町の若い連中だって落ち着いてられやしないんだよ」


「はあ?本当ですかそれ?」

 意味がわからないんだけど?


 ポズナンは古い城塞に囲まれた小さな田舎町で、春先になるとレンゲやタンポポの花が一面に咲き乱れる美しい町だ。

 教会と市役所を中心として店舗が軒を連ねているのが町の中心地、大魔法使いパヴェウの家は町から外れた丘の上にある。


 何がムカつくって、

「なんで僕まで入れないようになってるんだよ!」

 家までの田舎道に幾重にもわたって結界が施されているんだけど、僕まで結界が通れないようになっている。


 だから、いちいち車から降りて、自分だけ通れるように結界を一部組み直して、という事を繰り返して、たかだか300メートル進むのに1時間以上もかかってしまったわけだ。


 ポズナンの大魔法使いの家は、花々に囲まれた可愛らしい家なんだけど、車を停車させた僕は町で購入してきた花束とパンを抱えて家のドアベルを鳴らした。


「どなたかしら?」


 にこやかな顔で扉を開けたマリアおばあちゃんが僕の顔を確認すると、バタンと勢いよくドアを閉めた。


「・・・・・」

 閉まったまま、扉が開く様子はない。


「マリアおばあちゃん?お久しぶりです!」

 僕は扉をノックした。


「おばあちゃん!マルツェルですよ!扉を開けてください!」

 扉は閉まったまま、全く反応しない。


「おばあちゃん!開けてください!マリアおばあちゃん!マルツェルですよ!あなたのマルツェルが帰ってきたんですよ!」


 ひたすらドアを叩き続けていると、ようやっと扉を開けたおばあちゃんが、

「マルツェル、あなたね、アグニエスカを弄んだって本当の事なの?」

僕を睨みつけながら、意味不明な事を言い出した。


 

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