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第三十五話  罠にはまる

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ヴォルイーニ王国の魔法省はエリート揃いと言われている、魔法大国と呼ばれる王国には魔法使いの数も多く、他国よりも抜きん出た魔法の力と保有魔力の多さを誇ってもいるのだった。


 魔法の力さえあれば平民であっても採用されるし、有能であると示すことさえ出来れば、身分など関係なく出世出来る。つまりは、有能であり、魔力の保有量が膨大でありさえすれば、年齢関係なく採用されることにもなるのだった。


「ヤン、この前の資料はまとめておいてくれたか?」

「はい、そこの机の上に置いてありますけど」

「何処に置いてある?分からないんだが?」

「そこですよ、そこ、いくら老眼だからっておかしくないですか?すぐに見つかる位置に置いてあるんですけどね?」


 十二歳という若さで、すでに魔法省で働き始めているヤン・スコリモフスキは、上司の机へと向かいながら大きなため息を吐き出した。


 スタンピードが起きたから、戦争が起きそうだから、古代竜が起きたから。スコリモフスキ家なんだから国家に従事するのは当たり前。できる奴がやっていかなければ、魔力頼みで形成されたこんな国、あっという間に滅びることになるだろう。


 分かっちゃいるけど、だからって子供を働かせるか?頭悪いんじゃねえのかな。

 

 子供であっても容赦無く使う王国の方針が、ヤンは大嫌いだった。

 全てが魔力頼みなのに、都合よく使うだけで、こちらをリスペクトしないやり方が大嫌いだった。


「ほら!ここにあったじゃないですか!」


 上司の机の上から作成したレポートを持ち上げて掲げて見せると、ヤンの人差し指に嵌め込まれた指輪が眩しいほどに発光した。


 魔法省に勤める上役の中で、この指輪が発光した意味を違える人間はいない。


「敵襲かもしれん、気をつけて行って来い」

「了解しました!」


 上司に敬礼している間にも転移魔法は発動して、引っ張られるようにして空間を移動していく。


 スコリモフスキ家の女主人が身につけるアンクレットには秘密が隠されている。


 主人が危機に陥れば対の指輪が起動して、転移魔法が自動発動するようになっていた。本来父親が付けているはずの指輪を、王都に残った息子がしていたのだ。雷帝とも呼ばれた母が危機に陥るって、一体どんな状況なんだ?


 強制的に転移を決行された後に、母の叫び声が耳に飛び込んできた。


「ヤン!この布を剥がして頂戴!」


 角材を振り上げて殴りつける男たち、大きな布に包まれ、その上から暴行を受けている母は意外にしっかりした声で、転移で現れたヤンに指示を出した。


「クソどもが!後で後悔しても知らねえからな!」


 氷の柱が無数に地面から伸び上がり、母を取り囲む男たちを氷漬けにしながら上空へと運び去っていく。


 絶縁体で出来た大きな布を引き剥がすと、意外に元気な様子の母が氷の上に手の平を置いて、高圧の電気を流し始めた。


「うわっ!あっぶねえ!」


 気を失ったアグニエスカの手を掴めば、母の電流はヤンには流れない。アグニエスカの周りは氷も避けて通る。彼女が理の外に居る人間だからだ。


「母さん!何があったんだよ!」


 母の髪の毛はぐちゃぐちゃで、打撲痕が服の合間から複数見える。


「第二王子の襲撃だと思う」

「はあ?こんな街中で?」


 貴族街の何処かだろう、真昼間の街中、それも王都のど真ん中で襲いかかる意味がわからない。

 すると爆発音と共に、後ろの建物を破壊しながら巨大な氷の柱が三本、大空に向かって伸び上がっていく。


 爆発は1回、2回、3回と続き、驚くほど大きな氷が、青空に向かって伸びていく。爆発は火薬を使ったもの、氷魔法は複数人で仕掛けている。


「なんだってこんな・・・」


 愕然としながら倒壊した屋敷と氷の柱を眺めていると、路地裏を駆けてきた警吏の人間が慌てた様子で、

「どうされました!何があったんですか!」

 と、大袈裟な調子で大声をあげている。


 細い路地は氷で覆われており、電流が走ってビリビリと派手な音を立てている。氷漬けになった男たちは電気を浴びて失神し、声をあげる事も出来ない状態だったのだが、

「助けて!スコリモフスキ家の人間に殺される!」

 と、奥まった路地に隠れていた女が一人、警吏の男たちに向かって大声をあげた。


 女の後ろに居た男は警吏の男に向かって、

「前に交際していた女がしつこく付き纏うものだから、きちんと話し合って別れようとしたんです!だけど、女の家族がブチギレてこんな有様に!」

と、涙ながらに訴えた。


「私も!謝ろうと思ったんです!謝ろうと思ったんですけど!全然聞いてくれなくて!まさかこんな事になるなんて!」


後から後から人間がやって来るが、氷に囲まれた周囲の惨状と泣いて訴える男女の姿を見て、被害者だった俺たちがいつのまにか加害者になっているという事が肌でわかる。


「あああ・・はめられたわ・・・」

 よろけながら立ち上がる母を支えると、

「痛みはないのよ、アグニエスカが取ってくれたから」

 と言って笑みを浮かべる。


 母のアンクレットにはめ込まれた魔石は砕かれた状態で、全身を殴りつけられ、ひどい状態だという事はひと目でわかる。だというのに・・・


「とりあえず御同行願えますでしょうか?」


 警吏の目の厳しい事ときたらどうだ。

 スコリモフスキ家が魔力で周辺を破壊した犯人だと決めつけられた瞬間だった。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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