第二十四話 アリアの推しカップル
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アリア・ガヨスは、下っ端の事務官として働いていた。
「アリア、この書類まとめておいて」
「この報告書、アリアがまとめておいてちょうだい」
「ここ、間違っているみたいだから、アリアが直しておいて」
下っ端ゆえに、先輩の女性事務官が自分の仕事を山のようにアリアに押し付けて来るのはいつものこと。
上司に相談しても、その後の人間関係が悪くなるのは目に見えている為、泣く泣く、押し付けられた仕事を処理し続けていく日々。
そうして半年ほどが経過した頃、
「あら、それはあなたの仕事なのかしら?」
と、金髪碧眼の見た事もないような美人が声をかけて来たのだった。
クリスティーナは魔力量を見込まれて、労務部から魔法省へと移動してきた人であり、仕事はそつなくこなすし、人当たりは良いし、天使のように美人だしで、魔法省では目立つ存在となっていた。
「何あの子、意味わかんないんだけど」
「労務部からの移動でしょ?私たちとはそもそもの出来が違うのよ」
「あの態度が気に食わないわよね?ちょっと美人だからって生意気だわ!」
先輩事務官たちが文句を言っていたのは間違いない、クリスティーナが新参者なのは間違いのない事実のため、アリアはどんな虐めが始まるのかと戦々恐々としていたのだった。
先輩たちの職務怠慢に気がついたクリスティーナ様は上司と掛け合ってしまったようで、アリアの仕事は激減、先輩達の仕事は増量、アリアは余裕ある生活を送れるようになった。
だがしかし、
「ピンスケルさん、ちょっと来てくださらない?」
案の定、クリスティーナ様は先輩たちに呼び出される事となったのだ。
自分たちが明らかに悪いのに、入って来たばかりのクリスティーナを先輩たちは悪様に罵っていた為、廊下を通りかかった人たちは見てみぬふりをしていたの。そんなところで止めに入ったのが、魔法省の幹部となるマルツェル・ヴァウェンサであり、
「僕の部下に一体なんの用ですか?もしも何か問題があるようでしたら直接僕を通して話をしてください」
と、彼女を庇うようにして言い出したのだった。
その時、アリアは一部始終を廊下の隅から眺めていたのではあるが、婚活女子からも対象外にされるマルツェルが、この時ばかりは後光が差しているように見えたという。
多分、クリスティーナ様はあの時に、マルツェ様に恋をしてしまったのね!だって、クリスティーナ様は秘書の中でも一番献身的にマルツェル様を支えているのですもの!
アリアたちの間では魔法省の幹部専属の女性秘書官の事を『身分の高い方専属の花嫁候補』と呼んでいる。
既婚者は別として、独身の幹部は大概、秘書官と結婚するから。秘書官に魔力の高い女性を選ばれるのは、その後の子作りを見込んでの事というのは有名な話なのだ。
肉体関係をすぐに結んでしまい、自分の職務の上にあぐらをかいて職務怠慢が目立ってしまう秘書官が多い中で、正攻法で上司を支え、懸命に働いているクリスティーナを見ているうちに、アリアはすっかりファンになってしまったのだ。
だからこそ、
「まあ!まあ!まあ!まあ!」
食堂からの帰り道、マルツェルがクリスティーナを抱きかかえながら、王宮を闊歩していく姿を見たアリアは歓喜の声をあげたのだ。
「なあに?アリア、ずいぶん興奮しているみたいじゃない?」
「見て見て見て見て!あそこでクリスティーナ様が!」
「まあ!」
「嘘でしょう!」
「お姫さま抱っこされてる〜!」
マルツェルとクリスティーナが廊下を曲がって行ってしまったので、すぐに姿が見えなくなってしまったけれど、離宮から王宮の本棟の方へ向かっているのは間違いない。
「職場じゃない方角から職場じゃない方角に向かっているんだけど!」
「どういう事?どういう事?」
「もしかして、二人で逢引き中に盛り上がっちゃって、マルツェル様の情熱に煽られて腰が抜けちゃったとか?」
「きゃーーーっ!嘘でしょーーーーーっ!」
王宮勤めの女性事務官の最終目標は結婚退職。なるべく稼ぎの良い人を見つけて、将来仕事を辞めても裕福に、楽しくラクして暮らせるような相手を見繕って結婚するのがベストなのだ。
「嘘―――!ショックなんだけどーーー!」
と言い出す娘もいたけど、
「私はお似合いだと思うな!」
と、アリアは自分の意見は声を大にして言うことにした。
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