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創造主が星を育てる話  作者: 森 千
第一章 チュートリアル
6/34

6話 垣間見えた才能

 

 〈特性印:ЮΦЩ⊇〉

 ※Щ◆ΞЖЯД‰Ю€≫⇔∀∇∝∬





「「…………え?」」


 俺とイリスはそろって困惑の声を上げた。


「……なんだこれ? バグったのか?」


「そ、そうかも。クリア、一度戻ってからもう一回やりなおしてみて」


 俺はうなづき、ページを閉じてからもう一度星印に触れた。


 〈特性印:ЮΦЩ⊇〉

 ※Щ◆ΞЖЯД‰Ю€≫⇔∀∇∝∬


 表示は変わらなかった。

 読めない。

 変な記号が羅列されているだけだ。


「これは……古代語か何かなのか?」


 俺には読めないだけで、意味のある言語なのかもしれないと思い、イリスに尋ねた。

 が、イリスはすぐに首を横に振った。


「こんな文字、見たことないの。

 スター・パネルが壊れることなんて、あるはずないのに」


 イリスでも知らない?

 こいつはこれでも女神で、創造主のサポート役。

 必要な知識は持っているはずなのだが……たぶん。


「何か、思い当たることはないのか?

 星印が、意味不明な記号で表される現象に」


「う~ん……」


 イリスは顎に手を当て、視線を斜め下に置いて考え込んでいたが、突然何かをひらめいたように顔を上げた。


「あ! もしかしたら……」


「なんだ? 何か知っているのか?」


「そうか。そうなの。それしかない……たたの噂たと思ってたのに」


「おい! 一人で納得するな。

 どういうことなんだ?」


 一人でうんうん頷いているイリスに少しの苛立ちを感じながら問い詰める俺に、イリスは喜色を含んだ笑みで答えた。


「クリア! 朗報なの! この特性印は、星印が一つ足りない逆境をひっくり返す力を持っているかもしれないの!」


「なに?」


「――アノニマス。

 そう呼ばれる特性印の噂か、自由銀河にはあるの。

 遠い遠い昔の事なの。

 自由銀河に彗星のことく現れた一つの自由星が、自分よりも大きな自由星を相手に立て続けに勝利し、破竹の勢いで成長していったの。

 その秘密は、強力なスキルを授ける特性印と言われたの。

 ても、たれもその特性印の名前を知らなかった。

 特性印の名前を隠す理由なんて、とこにもない。

 そこて、ある噂が流れたの。

 その特性印には、名前が無かったのてはないか? と。

 名無しの特性印。

 ついたあだ名がアノニマス。意味は、匿名」


「それが――」


 言いかけた俺の顔の前に、イリスが指を立ててそれを制止する。


「ここて話が終わっていたなら、噂はもう消えているはずなの。

 ても、終わらなかった。

 第二、第三のアノニマスが現われたから。

 強力て、たれも名前を知らない特性印。

 それは長い長い歴史の中て、現れるたびに注目を浴びた。

 そして、アノニマスを持つある一つの自由星の創造主が、ある時言ったの。

 アノニマスは大罪だって」


「大罪? どういう意味だ?」


「七つの大罪って、知ってる?」


「ああ。それなら、知識にある。

 確か、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰だったか」


「そう。それが、アノニマスの正体と言ったの。

 確かに、あるアノニマスのモンスターは怒ると手が付けられなくなったり、また別のアノニマスのモンスターは戦闘中でも敵を食い散らかしたりってことがあったから、一見筋は通ってたんたけと、あんまり信じてなかった。

 最初の創造主は何かの理由て特性印の名前を隠していたたけて、後の創造主はたた注目を集めたいたけたと思ってたから」


「なるほど、噂じゃ、なかったわけだ」


 話を聞き終えて、俺は高揚していた。

 つまり、その強力なアノニマスということだ。

 俺が引き当てた特性印は。

 素晴らしい。

 星印が二つしかなかった時は自分の運の無さに絶望しかけたが、むしろこれは幸運といえるのではないだろうか?

 弱い星印が二つあるよりも、強力な特性印が一つある方が良いだろう。

 もちろん、強力なアノニマスを持ち、かつ星印が三つある自由星もあるだろうが、そこは創造主としての腕の見せ所だ。


「よし! 星印も分かったことだ。

 そろそろモンスターを生み出そう」


「待ってましたあ! じゃあ、まずはそこをそうして……」


 イリスの言うようにスター・パネルを操作する。

 すると、100という数字が出てきた。

 その横にはMPと書かれている。


「それはモンスター・ポイント。

 モンスターを生み出したり、モンスターの餌を創造するために必要なポイントなの。

 集め方はその星の系統印によって違うの。

 クリエイトの場合は〈系統印:悪魔〉たから、ポイントを貯めるのに必要なのは魂になるの」


「魂?」


「そのことはまた後て説明するの!

 たから今は早くモンスターを生み出して見てほしいの!」


 翼をパタパタさせ、三十センチくらい宙に浮きながら興奮して言う。

 お前飛べたの?


 イリスが、というか俺もモンスターを生み出すのが楽しみで仕方がないので、とりあえずやってみることにする。


「で、どうやるんだ?」


「んー、まずは自分で思うままに、モンスターの卵を創造するイメージでやってみてほしいの。

 上手くいかなかったら、あたしか教わったやり方をクリアにも教えるの」


 イメージすればできるものなのか?

 思いのほか感覚的なものなんだな。

 てっきりスター・パネルを動かして創造するのかと思っていた。

 まあ、とりあえずイメージしてみよう。


 MPを消費して、卵を作り出す。


 目を閉じる。

 俺は星の中心にあるコアからエネルギーを吸い取り、それが目の前で卵型に集まるように想像した。

 そしてそれが、次第に物体として形を成していく。

 頭の中で完全に卵が出来上がってから、俺は目を開いた。


 するとそこには、黒と紫のまだら模様をした、俺の想像通りの卵があった。

 大きさは赤子くらいだ。


「ふぅ、こんなものか」


 平静を装いながら、俺は内心でガッツポーズを決める。


「おおっ! すごいの!

 一回て成功させるなんて、クリアはきっと才能かあるの!」


「当然だ」


 スター・パネルに目を向けると、MPが0になっていた。


「……しかし、けっこうMPを使うものなんだな。

 最初に用意されている分が少ないのかもしれんが、一回でMPを使い尽くすとは思わなかったぞ」


「? そんなはずないの。

 いくらなんても、一つの卵に100MPはあり得ないの」


 イリスがそんなことを言いだすので、無言でスター・パネルを指さす。

 それを見た瞬間、イリスは目を見開いた。


「……本当になくなってるの。……信しられない。

 100MPって、魂100個分なのに……

 クリア、一体何をしたの?」


「何を、と言われてもな。

 コアからMPを引き出して、それが卵となるイメージをして念じただけだ。

 普通は何MPで一体のモンスターを生み出すんだ?」


「普通は5MPとかなの。

 卵にそそぐMPがこんなことになるなんて、聞いたことがないの。

 ひょっとして、MPを全部使うようにイメージしたから……?」


 確かに、俺はコアにあるエネルギーを出せるだけ引き出して卵に集めた。

 イリスの推測は的を射ているかもしれない。


 イリスが珍しく深刻な顔で俺を見上げた。


「クリア、もしかして、注ぐMPの量を調節てきたりする?」


「それはやってみないと分からん。

 だが、確かにさっきは、出せるだけMPを引き出して卵を創造するイメージでやった」


「……もしも本当にそんなことが可能たとしたら、とんてもないことかもしれないの」


「そんなにか?

 たくさんのMPから卵を創るのと、卵から生まれたモンスターに魂を喰わせるのと、どこか違うのか?」


「……分からないの。

 もしかしたらクリアの言う通り、卵を作るときに多めのMPを使っても、生まれた後に魂を食べさせても、生まれるのは同じモンスターで、強さは変わらないのかもしれない。

 ても、もし、多くのMPを注ぐことて、生まれるモンスターの種族自体が優秀なものになるとしたら?

 それは、すごいことなの。

 すごいという言葉ては足りないくらい、すごいことなの」


 確かに。だが、それも卵がかえればわかることだ。


「クリアは、本当に創造主の才能かあるかもしれないの」


「当然だ」


 神妙に頷くイリス。

 俺は不敵に口端を歪めて見せる。


 ぴきっ


 と、そこで、卵にひびが入る音が聞こえた。







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