店長の地雷、高遠君の役割
(塔子)
ふってわいたみたいに男の子が飛び込んできて、いつの間にかわたしたちの中になじんでいて。わたしたちも彼に学び、木の家具の扱い方とかそういったことを説明しながら接客をするようになった。
意外にもすみれちゃんが真面目だった。
この子は、短大卒業した後に実家に住みながらいわゆる基本は家事手伝いみたいな気楽な立場で、お婿さんを物色するのが本業。お店に立つのは副業。
お小遣いほしさと暇つぶし。
仕事中に問題起こすような子ではない。要領のいい子で、それなりに親切だし。でも、額に汗水みたいな子ではなかった。
その子が、寡黙な大地君の後を追いかけて、自分から聞いてはいろいろ学んでる。いつかは、お店の在庫品使って2人でワックスの塗り方練習してた。
「あれは、どういった現象なの?」
タケコさんにこっそりと聞く。
「すみれちゃんはどうしちゃったの?」
「さぁ、どうしたんでしょうね?でも、この前ね。」
タケコさんがのんびりという。
「最近、大地君目当てでお店に来るお客さんがいるじゃないですか。」
「え?そうなの?」
「そういう、いわゆる目当てじゃないですよ。ほら、彼、詳しいでしょ。家具の取り扱い。」
「ああ、はい。」
「そのうち、スウェーデン行っちゃったら、お客さんがかわいそうって。聞く人いなくなっちゃって。」
「ええ?」
ちょっと大きい声が出た。
「びっくりしました?」
「いや、びっくりというよりちょっと感動したわ。」
はははと軽く笑う。
「あの、大地君が必死で働いて、夢のために毎日無駄遣いもせずにお金貯めて、そういうの見てて影響受けたんですかね。すみれちゃんも。」
「鍵ちょうだい。」
年の暮れ、仕事納めの日、夕方に清一が雪だらけでお店に来る。東京から新幹線でさっき仙台着いたところのはず。
「ちょっと傘持ってなかったの?」
店の奥にはインテリアも兼ねて薪ストーブが置いてあって、あたらせる。
「清一君、お久しぶりです。」
「タケコさん。今年も母がお世話になりました。」
頭をさげている。
「あ、あの、電話で言ってたでしょ。冷蔵庫の中に入ってるからさ。今夜すきやきね。準備しといてよ。」
「ああ、はい。結構な量なの?」
「ええ。そうね。」
「タケコさん、今晩は何かあるんですか?」
「え?いや別に。」
「うちで一緒にすきやき食べませんか?」
清一が誘っている。
「親子水入らずに悪いわよ。」
タケコさんが慌てている。
「でも、2人だと食べきれないくらいあるみたいなんで。冷凍しちゃうと味落ちちゃうし。もったいない。また、なんかいいお肉なんでしょ。母さん。」
「たぶんね。父さんのことだから。」
お歳暮のつもりなのか、一人暮らしの元妻に1人じゃ食べきれないくらいすき焼き用の肉送ってきた。
「今度こそ送り返してやろうかと思ったわよ。」
はははと息子が笑ってる。
「どうせなら、他の人たちも呼んだら?職場の打ち上げとかしないの?忘年会。」
「さすがに、そんなに来たら足りなくなるわよ。肉が。」
「じゃ、俺が買い足しとくからさ。」
髪と服が乾いたら、息子が鍵受け取って出ていく。
「ほら、傘持っていきなさいよ。」
「母さんはどうするの?」
「わたしは置き傘があるから、もう一本。」
雪の中にまた、息子が出ていく。
「息子さんがいるのは知ってましたけど、こんなイケメンだなんて聞いてませんよ。なんで隠してたんですか?店長。」
久々にこっちのバージョンのすみれちゃん見たわと思った。
目の前でこんなこと言われても、へらへら笑ってどうともしない、清一。言われなれてるのかしら、この子、こういうこと。
「すみれちゃんもしっかりしてるようで、抜けてるわね。店長の息子だったらイケメンに決まってるじゃない。」
「わたしとしたことが、ぬかってました。ちなみに今、大学生ですよね。何年生ですか?」
「4年生です。」
「じゃあ、来年から社会人?」
「はい。」
「就職ってどちらにされるんですか?」
息子に内定先聞いている。おいおいお見合いかよ。
「ちょっと、すみれちゃん、言っとくけど清一には彼女いるからね。」
「ええっ!」
すみれちゃんがあからさまにやな顔をする。
「本人が言うならともかく、母親がそういうこと言います?いいじゃないですか。別に結婚してないならまだ競争市場に残ってるってことですよ。」
「すみれちゃんがなんかして、なっちゃんが泣くようなことあれば、いくらすみれちゃんでも店から追い出すからね。」
「なに?パワハラ?」
清一がまだはははと笑ってる。
「あんたもなに他人事みたいに笑ってるのよ。清一だってなっちゃん泣かしたら、出入り禁止にするから。」
「……」
「なに?母親公認?え~。」
「昔っからよく知ってる子なのよ。」
「あ、そうなの?幼馴染ってやつか。」
タケコさんが会話に入ってくる。
「そういえば今日、大地君は?あの子こそ、こういういい肉食べさせて、栄養とらせないと。」
「ああ、バイトだって。居酒屋の方の。」
すみれちゃんが答える。
「あら、何かかわいそうだね。」
いただきまーす。みんなで言って食べ始める。
「わぁ、すごい。おいしい。何ですか?これ。この肉、溶ける。」
「今年、賞取った牛肉らしいですよ。限定数しか市場にでない。」
清一が答える。拓也さんに聞いたんだろうか?
「ええ?店長すみません。こんな気を使ってもらっちゃって。」
すみれちゃんが頭を下げてくる。ちょっと良心が痛むので、ほんとのことを言います。
「ごめん。あの、もらいものなの。だから、わたしが自分のお金で買ったものとかじゃないから、遠慮せずにどんどん食べて。」
「へぇ~。貰い物。」
「元旦那がね。仕事のつてでこういうの手に入れやすいから、ときどき送ってくるの。」
「食道楽な人なんで。うちの父。」
ちょっと聞いてる二人が気をつかうのがわかった。
「ほんと。迷惑なのよね。別れた奥さんにこういうの送ってくるなんて。」
「まぁ、でもお歳暮みたいなものでしょ。」
清一がとりなしてくる。
「独り身で暮らしてる女に家族でしか消費できないような量送ってくるなんて。自分とこは3人だからいいかもしれないけどさ。」
またちょっとしんとする。
「ま、でも俺も帰ってきたし、職場の皆さんも来てくれたし。いいじゃない。」
「なっちゃんも呼べばよかったのに。」
若干顔がひきつったよね。
「えっと……それだと、みなさんが気を遣うし。たぶんなつも。」
「仙台帰って来てるんでしょ?一緒に帰ってきたの?」
「ああ、うん。」
ちょっと照れくさそうにした。こういうときは恥ずかしがるの?面と向かってイケメンと言われても涼しい顔しといて。
「なぁんだ。ほんと、公認のラブラブなんですね。つまんない。」
すみれちゃんがいつもの調子で言うので、少し固まっていた場の雰囲気がほどけた。
「ね。大地君にも食べさせたげようよ。バイトって何時までなの?」
「え?11時ですよ。それから呼ぶの?」
「帰りに差し入れしたげよ。バイト先知ってるでしょ?」
タケコさんとすみれちゃんが容器にすきやきをとりわける。
「男の人?だよね。名前からすると。珍しいね。男の人雇うの。」
「ああ、訳ありでね。ほんとは家具職人の卵なのよね。」
3人でかわるがわる大地君について教えたげる。
「さぁ、もうそろそろ後片付けして、それからお暇しますよ。」
「後片付けはいいから、早く行きなよ。デリバリーの時間に間に合わないわよ。」
何回か押し問答した後、使った食器を流しに集めてテーブル拭いた時点で下がらせる。
「ああ、これもうちの商品じゃないですか。よく見たら。」
すみれちゃんが言う。
「今、気づいたの?」
「へへへ。」
ちょっと酔っぱらった顔で笑う。
「結構きれいに使ってるじゃないですか。」
「お、いつのまにか上から目線じゃない。」
「ワックスを塗ってあげるとね、見違えるように色つやがよくなるって、うちの家具は。大地君言ってましたよ。今度お店お休みのときに来ましょうか?わたし。」
「ええ?ほんと?」
すみれちゃんがいい顔で笑った。ちょっと嬉しかった。この子の成長というか、なんというか。
「あ、ラッキー。」
お客さんの退場にラッキーがお見送りに来る。
「かわいいねぇ。また、遊びに来るからね。」
「ほらほらデリバリーの時間。」
「あ、俺、送りますよ。夜道だし。みなさん歩きなんですよね。」
清一が出て行く。ぞろぞろと人が出て行って、ぱたんとドアが閉まる。ラッキーとわたしが残される。にぎやかな夜の最後に満ち足りた気分で落ち着く。
(清一)
「いやぁ、ちょっと、ほんと、くった。くったですなぁ。」
「すみれちゃん。男の人の前でそんなこというの、よしな。年頃の子が。」
すみれちゃんがちらりと僕を見る。
「あそこまで、店長にストップかけられたら、さすがのわたしも闘志がつきました。」
「いやだからって。」
「いいんです。わたしは。闘志がつきれば人類みな兄弟で。素のわたしでおつきあいですよ。」
面白い人だなと思う。
「なんかわたし、今日まで気づいてなかったんですけど。」
ふとすみれちゃんが僕にはなしかける。
「はい?」
「店長って、わたし、オーナーといい感じだなって思ってたんですけど……」
「オーナー?」
「ああ、清一さんは知らないんですね。うちの店のオーナーです。店長ともともと高校が一緒って言ってたっけ?仲いいんですよ。結構。」
「え?そんな人いるんですか?」
知らなかった。
「ああ、でもね。仲良く見えるだけなんだって今日わかりました。」
「どういうことですか?」
彼女は笑った。
「清一さんのお父さんのこと、まだひきずってるみたいですよね。」
「え?」
静かな夜。雪もやんで、僕らは白い息をはきながらおしゃべりをする。
「ひきずってなかったら、あんないい肉、ラッキーって言って食べておしまいですよ。」
「……」
驚いた。正直。
父さんは未練があって、ひきずっている印象は受けてたけど。母さんはそりゃつれなくて、嫌がってるし。そんな風にみえたことなかった。一度も。
女の人から見ると、見えるものがちがうものだ。
「すみれちゃん、それ、本人の前で絶対言わないでね。」
タケコさんが横から言う。
「言いませんよ。わたし、結構おちゃらけてるように見えますけど、まじの地雷は踏みません。」
「母にも、誰かいるといいんですけどね。新しい人。」
未練があったって、父さんにはもう片方の手に新しい女の人と子供がいるからな。2人がそっと笑った。
「それこそ、その気になれば相手なんていると思いますよ。うちのオーナーだってそのうちの一人だし。でも、店長はそんな簡単な女じゃないですよ。」
不器用なうえ、素直な人じゃないからなと思う。
「大丈夫。大丈夫。店長にはラッキーもいるし、わたしたちもいるし。心配しないでください。」
すみれちゃんが笑った。ちょっとじんとした。
「あ、ほら、すみれちゃん。大地君のバイト終わるころだ。」
「やばい。」
すみれちゃんが駆け出す。冬の雪国でよっぱらってて、しかもこんな夜半に走ってはならない。
「転ぶから。やめなさい。」
言わんこっちゃない。すべった。でも、かろうじてこらえて。こっち見て、酔っ払いの顔で笑った後に今度は速足でゆく。
春になった。
大地君と相談して、次の仕入れに彼を同行することになった。結果はまだわからないけれど、うまくいったらそのまま戻らないと言う。彼はアパートとか自分の荷物とか処分したり、人に預けたりしたみたい。
「思い切りがいいね。」
「そうですか?」
信じられない。その荷物の少なさというか、フットワークの軽さというか。若さってこういうもの?自分もかつてはこうだった?
「あなたにとってはなんでもないことなのかもしれないけど。いろいろなしがらみにからまれてる年代のものとしては、驚嘆に値するわ。」
「大げさですね。店長。」
たんたんとしていた。なんだろう?この子の、この、軽さ。
うん。そう。家族だよ。家族。周りに急にふらっとスウェーデン行っちゃったりして心配する家族はいないのか?
「でも、滞在許可が下りなかったらどうするの?」
「その時はいったん帰国します。」
だけど、ご家族には知らせたか?となぜか聞けなかった。
そう、この子、そういえば、家族の話をしません。どこで生まれたとかは、たしか岩手と言ってましたけど。あまり、子供の頃の話をしたがらなくって。
なんとなく聞いてはいけないと感じていた。野生の本能みたいなもので。
「寂しくなるわ。」
するとぷっと笑って、その後大笑いし始める。
「なに?なんなわけ?」
笑わせるつもりで言ってないことで笑われてもな。しかもこの子、そんなにいつもげらげら笑う子じゃないじゃん。一体何が笑えたのよ。今の発言の。
「すみません。寂しいってことば店長に似合わなくて。」
「ええ?」
わたしは、なにか?鉄の女か?
「悪い意味じゃなくて、店長は僕の中で孤高の人なんで。」
「孤高?」
「寂しいという当たり前の感情に流される人じゃないです。店長は。いつもしっかりと自分の足で立っている。」
うん。だから、旦那に捨てられるんだけどな。こんなみじめなことはもちろん口に出しません。
「流されないですよね。簡単に。見ていて尊敬します。」
「はぁ。」
息子の年代の子に尊敬された。まぁ、悪くない経験だよね。これも。
「俺も同行するから。」
「はぁ?」
「なに?不服?」
高遠君がじっとわたしを見る。定例の報告会みたいなもので、一緒にご飯食べてた。窯焼きのピザ出す店ができたって、夕方から車乗せられて。
「別に。でも、今まで何度かたまには工房、顔出したらって言っても、一回も首を縦にふらなかったのに、どうして?」
ため息をつく。
「俺なりのさ。けじめだったんだけどな。塔子と二人で海外行かないのは。」
「は?」
「ま、今の話は別にいい。気にしないで。」
「……」
「二人で行きたいの?大地君と。」
こいつは、ほんとに。本気で言ってるかどうか別にして、年をとってもこういうところが変わらない。
「息子と同じぐらいの男の子と一緒にいても母親みたいな気分にしかならないって。」
それで、そういう気になる人ってどれだけ恋愛体質なの?わたしは鉄の女なんだって。
「若いのもだめで、同年代もだめなら、じいさんならいいのか?」
「どれもだめだ。」
ラッキーでいいんだって。あの子と一緒にいるのが一番落ち着く、今は。
「あ、すげえ、これおいしい。食べた?」
ふいに食事の話になる。
「塔子って、ちょっと癖のあるチーズ大丈夫だったっけ?」
「平気だよ。」
おいしかった。
「なんか、最近、東北って変わったね。こんなおいしいピザ食べられるんだ。地方で。」
「ほんとだな。」
子供みたいな顔で笑った。
「俺、若い子ががんばってるの、見るの好き、最近。職人さんって好きだな。」
「自分もなりたかったんじゃないの?」
はははと笑う。
「人にはさ、向き不向きと生まれ持った運命というか、役割があるんだよ。」
ふと急にまじめな話をしだす。
「俺はさ、憧れても、才能ないし。技術も魂もさ。職人ではないさ。」
遠い目をした。
「かねはさ、まぁ、多少は持ってるからさ。でも、そんなんも空しいなって気持ちがずっとどっかにあったけど、それこそ、自分のはらわたがじりじりと焼かれるような気分をずっと味わってたんだ。」
驚いた。
ほんと、驚いた。
お気楽ご気楽な高遠君が、こんなこと考えてたなんて。
黙ってピザをほおばる。
「最近になってやっと、自分が持ってる金を少しでも増やして、それでそれを俺が憧れるような魂を持っているような人に投資しようって。やっとそれが自分の役割で、夢ともいえるんじゃないかって思えたんだよ。」
そういってわたしを見た。
「たいていの物なら簡単に手に入るのが約束されていて、それが空しいって気持ち、塔子にはわかる?」
昔のわたしなら、高遠君に再会したばかりのわたしなら、ただ、金持ちのなんて嫌味な一言だと思ったろう。
高遠君の目を見ていて、でも、そうは思えなかった。
わたしとこの人の間にもそれなりに時間が経った。
「わたしにはわからない。でも、わたしの欲しいものはいつもお金では買えないから。」
そういうと笑った。乾いた笑い顔だと思った。でも、怒ってはいなかった。
「お前は、だから、何度言っても俺にはなびかないんだよな。」
そう言った。
こんな風に言われても、冗談ばっかいってと受け流して、でも、わたしは一定の距離以上つめようとしないこの人にやっぱり甘えているのだと思う。
一定の距離以上つめない、その代わり、ずっとそばにいてくれるこの人に。
高遠君は若くない。わたしも。
だから、若者のようにひたすらに向かってくることもそれを望むこともない。
何というかこんがらがった糸玉を心の中のいろんなところに抱えているとき、そこまでいかない名前のつかない関係が心地よかったりする。
大人は知っている。
向かっていってその先へ行っても、何かが手に入るわけではないことを。
むしろ、向かう前に手にしていたものを失うこともあることを。
そして、大人の欲しい物って、複雑怪奇なんです。
自分でもときどきわからなくなる。自分が何を求めているのか。
それなのに、だけど、手は出さないのに、それでも、求められていると言う満足だけを与えてくる高遠君にたしかにわたしは甘えている。
「だから、俺が二人についてくのは、いろいろ冗談も言ったけど、純粋に大地君の応援をしたいだけ。」
「そうなの?」
彼はこっちを見た。
「人を一人預けるってすごいことだぞ。塔子。」
「はい。」
「しかも、外国人だ。たまに来るのを相手するのじゃなくて、預かるんだ。」
「……」
「お前が一人でいってさ。いくら、信頼を得ている相手だと言ったって、じゃ、よろしくってほいほいおいてくるわけにはいかないじゃないか。そこに、何年ぶりかで俺が言ったらさ。少なくとも、簡単なお願いだとは思ってないことを多少は強調できるだろ。」
「ああ……。うん。」
結局、自分はあさはかなのかな?
いつも、トーコ、トーコとみんなでかわいがってくれて。特にオーナーは、トーコは自分の2人目の娘だと言って、自分のことをパパと呼ばせる。
そういう関係に甘えてて、簡単に大地君を連れてく気でいた。
大地君の話はエマに伝えてあって、履歴書も写真もメールで送っていた。
「日本的感覚がスウェーデンでどこまで通用するのかわからないけど、こういうのは言葉でさんざん言うより、行動の方が大きいかと思ってさ。わざわざ秀樹が来たって言う方が、あのオーナーには響く気がする。」
「うん。……そうだね。」
「年寄はさ、ほら。若い子の応援をしてあげないと。」
「年寄ってほど、年寄でもないでしょ。あなたもわたしも。もっと上の人から見たら若造よ。わたしたちもまだ。」
はははとこっち見て笑った。