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大臣達が私の発言に驚いて固まっているとき、ようやく陛下が大きなあくびをしながら会議室に入ってきた。
「ん?どうした?みんなフリーズしているのか?」
「国王陛下、おはようございます。たった今王妃様から、宮廷費を減らして、他の予算に回してよいというお話があったところで、みな驚いておりまして…」
「宮廷費を減らす?」
そういって陛下は私を見つめた。
「陛下、ご心配には及びません。減らすのは私のドレスや宝石、食費です」
「そうか、それなら構わない。俺がご令嬢と遊ぶための遊興費を減らされては困るけどな、ははは。」
また、このお方はこうやって茶化すのね。私の中でイライラが膨らんでいく。
「その遊興費も、ほどほどにしていただかねば困ります」
「なんだ、王妃殿がやきもちか?」
「違います。より大切なことに予算と時間を割くべきだと申し上げたいのです。そもそも、こんな大切な会議に遅刻してくるなんて、国王として…」
「みなまで言うな!もういい、会議の続きをしよう」
本当は最後まで言いたかったけれど、会議が再開したので黙るしかなかった。私一人が頑張っても、陛下のこの態度が改まらなければ、結局革命が起きてしまうかもしれないのに…
バカ陛下!バカバカバカ、本当にバカ!!
ふつふつとした気持ちを抱えながら、粛々と進む会議を最後まで聞いた。
会議の後、内務大臣が声をかけてきた。
「王妃様、宮廷費削減のご提案、ご立派でございました」
「内務大臣、ありがとう。私のドレスや宝石よりも、国民のために使っていただけるほうが嬉しいもの」
「はいっ!王妃様は国民の生活の改善にご関心をお持ちなのですか?」
「ええ、そうよ」
「それでしたら、来週、私の部下たちが王都の孤児院や貧民街の視察にまいりますので、内容をご報告いたしましょう」
「まあ、それはうれしいわ!…いいえ、私も一緒に施設に行ってもいいかしら?自分の目で見てみたいわ」
「お、お、王妃様が視察されるなどと、そ、そ、そのようなことは前例がございません。私の一存では…」
内務大臣がすがるように陛下を見やると、陛下は顔色ひとつ変えずに「構わん。王妃殿が何をしようと勝手だ」とおっしゃって、そそくさと退出された。