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王妃リリー  作者: こじまき
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病院は開設できた。同じような中古物件活用方式で、子どもが読み書き算盤を学ぶ学校や、大人向けの職業訓練施設も開設に向けた準備が進んでいる。懸案だった貧民街の上下水道工事も、王妃領が売却できたので予算が確保でき、ようやく着手したところだ。


庭のユリ園の中にしつらえたお茶会の席で「最近のリリーの活躍には目を見張るわ。19歳を迎えて、さらに精力的になったんじゃない?」と声をかけてくれたのは、義姉のエレノア様。


「本当に王妃様のなさりようは素晴らしいですわ」と同調したのは、エイデンバイン侯爵令嬢アイビスだ。アイビスは「国政改革に熱心な王妃様から、何かを学び取りたい」とお茶会に参加しているのだ。以前は王妃主催のお茶会の招待状が届くと「王妃様にいびられるとわかって参加するなんて…でも辞退なんてできないし」と、渋々参加する令嬢がほとんどだったが、最近はアイビスのように志願してくれる令嬢もいるのだ。


「でも気をつけた方がいいわよ」とエレノア様が身を乗り出す。


「なんですの?」

「リリーの悪い噂が広まってるみたいよ。レオナルドとの不義ですって」

「なんですって!?」


なんてこと。レオナルドとは誓って何もない。パリス様が浮気三昧だったときさえ、舞踏会などで外国の王族方や貴族に甘い言葉を囁かれても、不倫などというふしだらなことは露ほども考えなかった私だ。


それでも…噂が広まって「ふしだらな王妃」という烙印を押されてしまったら…


たとえ噂だけでも、国民や貴族からの批判の対象になりかねない。久々に処刑台の光景が蘇り、ゾッとする。


青ざめている私を見てエレノア様と「不安にさせてごめんなさいね?でも私は不義なんて信じてないわよ。パリスもあなたに夢中のようだし、あなたのほうも、ね」とからかうように笑う。エレノア様は生まれついての王族だからか、遠慮しながら話すということをなさらない。


「まぁ、リリーもあまり恥ずかしがらずに、パリスとの仲を周囲に見せつけてやることね。そうすれば噂は自然に消えるでしょ。そういえば、病院の開院記念式典ではステージ上で抱き合ったそうじゃないの」

「それは私も伺いましたわ。本当に仲が良くて羨ましいですわ」


エレノア様とアイビスがくすりと笑いながらこちらをみるので、私は赤くなって目を逸らした。

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