表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王妃リリー  作者: こじまき
23/32

23

パリス様が、犯人をこれ以上ないくらい怖い形相で睨みつける。あまりの迫力に、犯人はすっかり怯えているようだ。


王族に卵を投げつけるなんて、この国では弁解の余地なく不敬罪で死刑だ。この人は首を刎ねられるだろう。


でも…


「さきほど『今さら病院をつくっても』と言いましたね。なぜこのようなことをしたのか、理由を述べなさい」


私は気づいたら犯人に話しかけていた。


「リリー!このようなものに話しかけるなど、どうした!?」

「聞いてみたいのです」


犯人に視線を向けて話すように促すと、彼はぼちぼちと話し出した。


南部で暮らしていたが、飢饉で生活が苦しくなって幼い息子と2人で王都へきたこと。

職につけずに王都でも生活が困窮し、熱を出した息子を病院に連れていけなかったこと。

死んでいく息子を、ただ見ているしかできなかったこと。


「どうしておらたちが困っているときには、病院がなかっただ!あのときこの病院があれば、息子は助かったかもしれねぇ!もっと早く病院をつくってくれていたら…」


静まり返った会場に、彼の嗚咽だけが響く。


「もうおらには何もねぇ。不敬罪で死刑になってもかまわねぇだ。ただこの気持ちを…知って欲しくて…」


気づいたら、私もつられて泣いていた。


「パリス様、お願いがございます」

「…なんだ」

「私と、記念すべきこの病院の完成に免じて、彼の罪を赦してくださいませんか」


「何を言い出すんだ」という表情で、パリス様が私を見る。私は、両手でパリス様の手を握る。


「彼は、私たちが生み出してしまった被害者です。私たちが、もっと早く、自分たちがやるべきことに気づいていたら、こんなことにはなりませんでした」


しばらくして、パリス様が小さく頷く。私は、ステージの上で小さくなって泣いている犯人に向き直って、その手をとった。


「あなたの不敬罪を赦します。そして、お願いがあります。今まであなたたち家族をかえりみなかった、私たちの大きな罪をどうか赦してください」


彼は一層激しく嗚咽して、ガクガクと頭を上下に振った。息をのんで見守っていた聴衆に、ざわめきが広がっていく。


「不敬罪を赦すって、まじかよ…」

「しかも、王妃様があんな汚い平民の手を取って、赦しを請うなんて…」


私はまたパリス様の手を取り、聴衆に向き直った。


「あなた方の中にも、ここにいる彼と同じ経験をした人がいるかもしれません。あなた方にもお願いいたします。未熟な私たちですが、これからも力の限り国民のために働きます。どうか…どうか私たちを…」


言葉に詰まった私を、パリス様が助けてくれる。私が大好きな、低くよく通る声だ。


「これまでの我々を罪を赦し、これからの我々が、常に国民とともにあるよう、厳しい目を向け続けてくれることを望む」


パチ…パチ…パチパチパチ…


小さな拍手がさざ波のように広がっていき、地鳴りのような拍手を生んだ。


「私たちの国王陛下万歳!王妃様万歳!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 不敬罪を赦す事と息子の死を赦すこととは、等価だろうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ