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今日の午後からは、王宮内の庭園でお茶会。雪が降っているので、東屋にテントをかけてストーブで暖をとりながら、雪見お茶会の趣向だ。
今日のメンバーは親戚・縁戚のみ。ごくプライベートなお茶会なので、話が弾む。
開口一番「ねーえ、王妃が舞踏会やお茶会でドレスを着まわしてるって話でもちきりよ」と言うのは私の義姉(パリス様のお姉さま)にあたるエレノア様。王族らしい優雅さと、無邪気なお嬢様然とした気さくさを合わせ持つ方だ。
貧乏貴族ならともかく、王妃がドレスを着まわすなどあり得ないとされているのだから、話題になるのは当然だろう。
「経費削減の一環で、公務に支障がない範囲で着数を減らしたのです。もしかして『ケチくさい』などと批判されておりましたか?」
「逆よ逆!あなたのマネするのが流行っているんですって。ほら、着回すときにリボンやベルトだけ付け替えたり、お母様方世代のドレスをモダンにリフォームしたりしてるでしょ?あれが今ブームなのよ」
「そうでしたか、安心いたしました。ちなみに、今日のドレスも着回しですわ」
「いいことだと思うわ。外出のたびにドレスを仕立てていたらきりがないもの」
「そうですわね…」と頷いたとき、テントの切れ目から、レオナルドと王都警備隊の隊長が何事か話し合っているのが見えて、心臓がドクンとはねた。
王都警備隊の隊長…レオナルドが陛下と私を捕らえにきたとき、後ろにいた…
もしかして、二人で国王への不満や革命軍について話しているのかもしれない…
「申し訳ありません、少し中座いたしますわ」
「あら、どこ行くの?」
エレノア様たちの声を背に、私はレオナルドたちのほうへ向かった。
音を立てないように、枝に触れないように、慎重に。ギリギリ声が聞こえるところまで移動して、身を隠した。
「…国王夫妻の贅沢三昧は目に余ると、若手貴族は不満たらたらだ」
「しかし、最近のご夫妻は真摯に公務に取り組んでおられる。以前のお二人とは違う」
「信じられない。お前買収でもされたのか?」
「違う!一番近くで見ていて、本当にそう感じるんだ。できることなら君にも見せてやりたいよ。君はあまり王宮にいなくて知らないだろうが、近衛隊の隊員などにも聞いてみるといい」
どうやら、隊長が不満を言い募っているのを、レオナルドがおさえているようだ。
レオナルド、本当に私たちを見直してくれているのね…
ありがとう。
見ていて。私は、私たちは、もう絶対にその思いを裏切ったりしないから。




