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王妃リリー  作者: こじまき
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パリス様とともに国政改革に取り組もうと決めてから、午前中は書類に目を通したり陳情を受けたりする仕事の時間、午後は勉強会やお茶会の時間と、おおまかにわけている。


王妃の立場でできることは限られると思っていたけれど、パリス様は私にもたくさんの仕事を任せてくださっている。


あの孤児院は定期的に訪問しているし、陳情を内容や緊急度で仕分けして取りまとめたり、宮廷費の見直しも担当している。どれも、これまでの王妃がやってこなかったことだ。


以前遅刻やドタキャンという形であらわれていたパリス様の「ゆるさ」は、今は「前例にとらわれない柔軟さ」という形であらわれているらしい。


「今日は、先週分の陳情について、パリス様に報告する日でしたわね」

「ああ、そうだったな。仕事中にリリーの顔が見られるのは嬉しいよ。リリーは俺のエネルギー源だ」

「まあ…」


ベッドから起きる前にふと事務的な確認をしたつもりが、甘い会話に変わって、戸惑ってしまう。


ちゅ。


軽くキスをして、パリス様が「まずは朝イチのエネルギー補給」と、ニヤリと笑う。少し寝ぐせがついた金髪をいとおしく感じてしまい、私の頬が熱くなる。


朝の支度中にも、ベッドでの会話の内容がぐるぐる頭を回って、また恥ずかしくなってしまう。本当に、私ったらどうかしているわ。


朝食を済ませたら、パリス様は執務室へ移動して、レオナルドや大臣と執務。


私には執務室がないので、私室で陳情の書類をまとめ、約束した時間に執務室へ向かう。


「こちらが先週分の陳情です。たくさんありますけれど、早急に対処すべきものはこちらかと」

「なるほど、確かにな」


レオナルドも書類を確認しながら、「王妃様は、膨大な陳情に目を通し、的確に選別してくださるので助かります」とほめてくれる。


それは、本音なのかしら?


レオナルドがパリス様と私を捕らえるシーンが蘇る。


本気でほめてくれているのか、彼の心の中を知りたくて、私に向けられる笑顔をじっと見つめる。


困ったように「私の顔に何かついておりますか?」と聞かれて、「いいえ、ごめんなさい」と慌てて目をそらした。


妙な空気を代えたくて「予算削減も大切だけれど、新たな財源確保も急務ね」を話題を変える。


「おっしゃる通りです。今は鉱山の開発に力をいれております。それから東部に湯量の多い温泉が見つかったので、そちらを王立の湯治場にして観光客を呼ぶのも…」

「まあ、いいわね。以前隣国のラガーツの温泉に行ったことがあるわ。そこはね…」


当たり障りのない会話でその場を誤魔化し、レオナルドの本心を探るにはどうしたらいいだろうと考えを巡らせる私だった。

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