表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王妃リリー  作者: こじまき
2/32

2

気分が優れないけれど、まさか「死に戻ったので、気持ちを整理するために、自分の誕生祝いの式典を欠席したい」とは言えない。


侍女たちを引き連れて、会場へと向かう。


朝起きてから今まで、一度も夫である国王陛下パリス様にお会いしていないけれど、変だとは思わない。


だって私たち国王夫妻は、絵に描いたような政略結婚の仮面夫婦だから。


私の実家であるパインズバッハ公爵家は、このアズミア王国でもっとも由緒正しいとされる貴族。


パインズバッハ公爵家の当主、つまり私の父は、政治家の最高位である宰相を務めている。


その公爵が「娘を王妃に」と望めば、王家であっても拒否はできない。


お互いが好きか嫌いか、そんな感情は考慮されない。


それでも、幼いころから許婚として一緒に時間を過ごしてきただけあって、以前はそれなりに仲が良かった。


パリス様はおおらかで気さくで、私のつたない話を面白そうに聞いてくださったりして…


私にはそんな陛下を幼いながらに本気で愛していたし、ずっとおそばでお支えしたいと思っていた。


それが私の存在価値だと、信じて疑わなかった。


でも私たちの関係は、よそよそしくなってしまった。


今となっては理由もきっかけも思い出せないけれど、結婚する前からすでに冷え切っていたのは確かね。


いつごろからだったか、陛下は、手あたり次第に貴族令嬢に声をかけるようになった。


公務に遅刻したり、気分が乗らないからとドタキャンしてしまうこともたびたび。陛下はすっかり変わってしまわれた。


でも、変わってしまったのは私も同じ。陛下に見向きもされなくなった寂しさを埋めるように、侍女や護衛兵に当り散らし、ドレスや宝石を買いあさるようになったのだわ。


そんなことを思いながらホールへ続く外廊下を歩いていると、廊下の先に姿勢の良い立ち姿の若い男性が見えた。


少し眉をひそめながら、庭のほうをじっと見つめている。


その途端、心臓がゾワッと縮むような気がした。


銀色の髪、紫の目。生真面目そうな顔立ち。


レオナルド・エステルベルグ。


先祖代々の忠臣として名高い、エステルベルグ伯爵家の三男。


パリス様の幼馴染であり、忠実な騎士でもある。私とも幼いころからよく見知った間柄だ。


好奇心旺盛でお転婆だった私に、「気をつけて」と言いながら剣の構え方を教えてくれた。


頭の中に、レオナルドが国王陛下と私を捕らえる映像が流れる。


《国王パリス、王妃リリー、お前たちの国民に対する罪は重い…》


私たちを捉えたのはレオナルド。彼は貴族でありパリス様の側近でありながら、革命軍に参加していたのだわ。


幼馴染なら、パリス様や私を捕らえるのも容易い。


だって、全く警戒されていなかったのだから。


私はもうひとつ思い出して、思わず自分の首を撫でた。


《見ろ。あれがお前の罪だ》


泣きながら私の首を跳ねたのも、彼…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ