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王妃リリー  作者: こじまき
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嫌な夢のせいで気分が優れないけれど、まさか夢のせいで自分の誕生祝の式典を欠席するわけにはいかない。侍女たちとともに、会場へと向かう。


起きてから今まで、一度も夫である国王陛下…パリス様にお会いしていないけれど、変だとは思わない。


だって私たち国王夫妻は、絵に描いたような政略結婚の仮面夫婦だから。


私の実家であるパインズバッハ公爵家は、このアズミア王国でもっとも由緒正しいとされる貴族。パインズバッハ公爵家の当主、つまり私の父は、政治家の最高位である宰相を務めている。


その公爵が「娘を王妃に」と望めば、王家であっても拒否はできない。お互いが好きか嫌いか、そんな感情は考慮されない。


それでも、幼いころから許婚として一緒に時間を過ごしてきただけあって、以前はそれなりに仲が良かった。


パリス様は、もともと責任感が強く、剣術などの武芸や、政治経済や外国語の勉強にもそれはそれは熱心だった。


反面、おおらかで気さくなところもおありで、私のつたない話を面白そうに聞いてくださったりして…


私にはそんな陛下を尊敬していたし、ずっとおそばでお支えしたいと思っていた。それが私の存在価値だと、信じて疑わなかった。


でも私たちの関係は、よそよそしくなってしまった。今となっては理由もきっかけも思い出せないけれど、結婚する前からすでに冷え切っていたのは確かね。


いつごろからだったか、陛下は、手あたり次第に貴族令嬢に声をかけてナンパするようになったのだ。


公務に遅刻したり、気分が乗らないからとドタキャンしてしまうこともたびたび。陛下はすっかり変わってしまわれた。


でも、変わってしまったのは私も同じね。陛下に見向きもされなくなった寂しさを埋めるように、侍女や護衛兵に当り散らし、ドレスや宝石を買いあさるようになったのだわ。


そんなことを思いながらホールへ続く外廊下を歩いていると、廊下の先に姿勢の良い立ち姿の若い男性が見えた。少し眉をひそめながら、庭のほうをじっと見つめている。


茶色の髪、茶色の目の生真面目そうな顔立ち。あれは、陛下の側近のレオナルド…


その途端、私の心臓がゾワッと縮むような気がした。


頭の中に、レオナルドが国王陛下と私を捕らえる映像が流れる。


「国王パリス、王妃リリー、お前たちの国民に対する罪は重い…」


やっぱりこれは夢じゃない。どういうことなの?

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