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王妃リリー  作者: こじまき
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「おはようリリー」


目を覚ますと、目の前には陛下の顔。起き抜けで少ししわがれた低い声が、耳に心地よく響く。


「おはようございます、陛下」


夫婦の寝室で寝るようになってしばらく経つけれど、起きてすぐに陛下のお顔を拝見するのは、まだまだ慣れない。


朝イチからドキドキしてしまう。


「リリーはすぐ赤くなるな」

「申し訳ありません」

「謝る必要はない。そこが可愛い」


ふわりと陛下が微笑む。


陛下の浮気相手だった貴族令嬢たちの気持ちが、手に取るようにわかる。陛下にこんな風に微笑みかけられたら、なびかないはずがないわ。


冷静になりたくて「今日は侍女の希望退職についての打ち合わせがございますので、もう起きますわ」と体を起こすと、「待て」と腕を優しくひかれる。


陛下を振り返ると、何か言い淀んでいらっしゃる。


「どうなさいましたか、陛下」

「一緒に寝るようになってしばらく経つが、キスもしていないだろう。俺はリリーの心の準備が整うまで、待つつもりだが…」


「どうだ?」と目で聞かれて、また真っ赤になってしまう。


「…構いません。私は陛下の妻ですので」


もう消え入りそうな声しか出ない。


「妻だからという理由は寂しいな。リリーの気持ちが大切なんだが」

「…はい…あの…はい…」


気持ちを言葉にするのが恥ずかしくて、潤んだ目で陛下を見つめて頷くと…


ちゅ。


陛下の手に頬を挟まれ、ほんの軽いキス。「甘くて柔らかい」と低い声がつぶやく。


ちゅ。


もう一度キス。


ちゅ。


もう一度。


私、全身が心臓になってしまったんじゃないかしら。息が止まりそう。


「陛下…もう…息が止まりそうですわ」


ストップをかけると陛下は「キスで息が止まるなんて」と笑いながら、でも少し残念そうに私から離れた。何故だか私も少し寂しい。


「わかった。今はここまで。それから、陛下という呼び方はやめてくれ。パリスでいい。昔のように」

「かしこまりました、パリス様」

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