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「お父様、何故できないのですか!?お父様も貧民街は見たことがおありでしょう?この世のものとは思えぬ有様なのですよ?早急に対処せねば、暴動や病の流行など、より大きな問題を生みかねません」
宰相の執務室にお父様を訪ね、貧民街での上下水道整備と病院建設を掛け合ったが、「予算がない」とにべもなく断られた。
「リリー、国民のために働きたいと改心した最近のお前の頑張りには目を見張る。王妃として、立派なことだ。だが、アズミアの財政はカツカツなのだよ」
それなら私の宮廷費をもっと削ってもいいし、王妃個人で所有している領地を売ってもいいと交渉したが、それでは足りないそうだ。
でしたらパインズバッハ公爵家から援助してくださいと食らいついたが、「王都のインフラに公爵家の財産をつぎ込むことはできない」と、よくわからない貴族の事情を持ち出されてしまった。
やる気と身分だけでは乗り越えられない障害があるのね…
私室に戻ってお茶を準備してもらう間にも、ため息がこぼれる。
「今日は王妃様のお好きなクイーンメリーにいたしました」
「ありがとう」
いつもならお茶を出した後さっと離れていく侍女が、何か言いたげにそばに立っているので目を向ける。
「どうしたの?」と聞くと「最近の王妃様は…孤児院や貧民街を視察されたり贅沢を控えられたり…あの…これまでに増してご立派です。何か私にできることがあれば何なりとお申し付けください」と頭を下げる。
「これまでに増して」という言葉に侍女の配慮が見えて苦笑する。でもその言葉が本当にうれしく、「言葉は人を元気にする」と何かの本で読んだことが実感を持って胸に迫る。
「ありがとう、アビゲイル。あなたのその言葉だけで元気が出たわ」
「はいっ」
そこでふと思いつき、アビゲイルに質問してみた。
「ねぇアビー。あることをやるためのお金がどうやっても足りないのだけど、諦められないの。そんなとき、あなたならどうする?」
「えっ!?そ、そうでございますねぇ…」
急に質問されたことに驚きながらも、アビゲイルは考えを巡らせる。
「私なら、例えば服が欲しいなら、自分で作ったり、より安いもので我慢したり、中古を買ったりいたします」
それだわ!
「アビー、ありがとう!図書館に行くからついてきて!」
「は?…はい!」




