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バローロの街

気がつけば俺は白い塔の下に佇んでいた。

目の前には中世ヨーロッパのような趣のある賑やかな街が広がっている。塔の周りには俺以外にもたくさんのプレイヤーと思わしき人が居る。

頭上に逆三角の緑のマーカーが出てるからわかる。新しく光りながら現れる人も居た。多分俺もあんな感じで現れたんだろうな。

それにしてもすごいな。

頬に触れる風の匂い、石のタイルを踏む感覚、道脇に生える草の一つ一つまで再現度が半端じゃない。

ACNやっぱ半端ねぇな!

でもこれだけは言わせてくれよ。

あの酒飲んでからここに飛ぶんじゃダメなの?あの感じなら飲んだっていいじゃんかよ!いや、むしろ飲まなきゃダメでしょうよ。あー、飲みたかったぁ〜。



後で社長には抗議メールを送り付けることにして、今はマップを確認しようか。

ここはバローロの街のポータルエリアで【白亜の塔】というらしい。

名前がまんま過ぎないか?

ポータルではログアウト、ログインが可能だ。逆にポータルじゃないと出来ない。

正確にはポータル以外でログアウトするとペナルティを受けるし、インする時は1番最後に訪れたポータルになる。

もちろん宿をとったり、テント張ったり、家を買えば話は別だ。

各街や特殊なエリアにポータルはあるらしいが最初の街のポータルがこの塔ってことだろう。

そしてここからゲームがスタートするわけだ。


今の俺の状態は初期装備の麻の服の上下に硬く荒い布を貼り合わせた布の靴、そして魔法使い系ジョブが貰える厚手のローブを来ていて背中には1メートルほどの長さのヒッコリーの杖がある。

この杖はこの街のNPCが売る装備の中ではまぁ上位に入るらしい。

服や靴は最底辺とのことだが。


そして現在の所持金は10000ヴィノ。

ヴィノはこの世界の共通通貨らしい。感覚的には円と同じでいいらしいが若干物価が違うので注意しろとの事だ。


取り敢えずポータルから離れ、近くの物陰ですぐさま茨の宝珠を収納から取り出して使用する。

収納のリストから宝珠を選択する。まぁリストには宝珠と財布しかないのだがな。

俺の手に宝珠が現れた。


〈アイテム:茨の宝珠を使用しますか?〉

〈 Yes/No 〉


迷わずYes of course!


〈ユニークスキル:茨を獲得しました〉

〈称号:茨の担い手を獲得しました〉

〈茨の担い手の効果によりステイタスにボーナスが加算されました〉


はい?


取り敢えずステイタスの確認をする。

念じると目の前にウィンドウが立ち上がった。これは基本的には周りの人には見えない仕様だ。


名前 グレイブ

種族 ヒューマンLv1

ジョブ サモナーLv1

HP (up)

SP (up)

魔気B(up)闘気E 霊気C(up)

筋力 5

耐久 10(5up)

敏捷 5

精神 5

器用 15(10up)

幸運 20(15up)

スキル

召喚魔法Lv- 水魔法Lv1 錬金魔法Lv1 鑑定Lv1 収納Lv- 茨Lv-(new)

称号 茨の担い手(ステイタスにランダムで5,10,15を加算 魔気,霊気上昇 new)

残BP ZERO


茨の称号の効果が半端ないな。

初期のステイタス合計が30なのに今は倍の60あるよ。


あとBPのゼロが無駄にカッコよく表示されてる上点滅しててウザったい。


さてさてそれでは狩りに出ますか。

ひと狩りいこうぜ〜! なんてな。

サモナーとしてモンスターとか召喚するにも、茨のスキル確かめたりするにもこんな街の中じゃ不味いだろうからね。


街の入口が見えてきた。

そして脇にキャラバン? があった。

ここで思い出した、俺、回復薬持ってないじゃん。いや、初期だから薬草とかだろうか。

まあそこはいいとしても回復手段が無いってのは心許ないってものだ。それではキャラバンを覗いて狩りの準備と行こうか。

キャラバンのひとつに回復系のアイテムを扱ってるところがあった。

地面に板を置き厚手の枠のついた布を上に敷いており、緑や青色の液体の入ったガラス瓶が所狭しと並べられている。

大体ひとつ150ccといったところだろうか。

USA(合衆国)のスーパーのお菓子コーナーにありそうな程色とりどりな陳列である。

取り敢えず全財産の半分である5000ヴィノで買えるだけ買う。こういうのは勢いが大事なんだよ。


【回復薬】HPポーション レア度1 品質D

一般的な回復薬。

HPが少量回復する。

飲用した方が効果が大きいが苦味とエグ味が強く、舌が痺れるため振りかけることが多い。

軍では効果を重視する為飲用することが多く、戦後味覚障害に陥る軍人が多い。

連続使用不可。クーリングタイム10分。


【回復薬】SPポーション レア度2 品質D

やや高価な回復薬。

SPが少量回復する。

若干の甘みがあり飲用して使用する。

飲みすぎると中毒になる可能性があるため注意。

連続使用不可。クーリングタイム15分。


【回復薬】生命の飴 レア度2 品質C

やや高価な回復薬。

継続してHPが回復する。

効果時間10分間。

不味くはない。

もちろん美味しくもない。

連続使用不可。クーリングタイム1時間。


HPポーションは250、MPポーションは600、生命の飴は750V(ヴィノ)である。

安いのか高いのか、その他の物価を確認していないしどのくらい稼げるのか不明なので判断に困るところだ。

取り敢えずHPポーション、生命の飴は各2つ、MPポーションは5つ。

これできっちり5000V。


それしか買うつもりは無かったんだけどね。

2つほど隣には金、銀、錫、水銀、鉛などの金属の塊と棒状の石灰、まぁチョークの様なものが陳列されていた。

わざわざこれらを一緒に並ばせてるあたりに意図的なものを感じる。

あの社長が考えそうなものである。


これらは悪魔召喚に必要とされているものだ。いや、もちろん普通は金属として武器とか防具を作るんだろうけどね。

まぁチョークは後付け感があるけどね。

それに召喚に大切なのは星の巡りと曜日、時間帯なのだが……このゲームは時間は倍速だし今は殆ど昼夜逆転してるし、曜日は火、風、水、土、光、闇、無というありそうだがちょっとよくわからん曜日である。

しかもリアルなら3月25日(土)になった筈だがゲーム内では緑の月1日(無)となっている。

四季は一応あるようでそれを元に月を無理に対応させようとすると

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の月が

白、銀、黒、緑、青、灰、黄、赤、感謝、懺悔、改心、戒慎の月らしい。

色の対応も微妙だし、9月以降がおいおいおい…

あの人達のことを理解できるわけがないんだ、そうだ、考えるのをはよそう。どうせ無駄だ。

それに四季があると言ってもそれは四季がはっきりしているエリアだけらしい。

具体的に言うとバローロは軽く夏と冬がわかる程度で他にも常夏エリアや雪山エリアだのがあるらしい。

やっぱり考えてもよくわからん。

まぁ言いたいのは日にちが当てにならんしゲーム世界が少し四季すらも先取りしてる感じということだ。これらは勿論社長から聞いた話ではない。

あの性悪が親切に教えてくれるわけはない。

あったとしてもそれは地雷か何かだ。

これはキャラバンの子供から聞いた話だ。世迷い人だと言ったら色々教えてくれた。感謝。

しかし自分から「俺は世迷い人なんだよ」っていう台詞を吐くのはなかなか嫌だった。

いや、そのうち慣れるんだろうけどね。


しかし召喚、出来るのかねぇ。

まぁサモナーのやり方はたくさんあるっていってたしどうもそれっぽいんだよね。

なんかお誂え向きだし。

よし、ダメ元でやってみるか。

失敗したとしても金属とチョークがあって悪いことなどないだろうし。

まぁ、序盤に必要かと聞かれたら首を傾けざるを得ないけどね。


錫とチョークを買う。

店員さんは美人でキツめのお姉さんだった。


【素材】錫塊 レア度2 品質A

鉱石から分離、抽出した錫の塊。

錬金術により加工が行われていて純度も高い。


【素材】石灰棒 レア度1 品質C

石灰や石灰質を粉末にした後固めて棒状にした物。

文字や絵を書くときに使われる。

壊れやすい。


シュポンッ、チリーン

〈鑑定レベルが上がりました〉


ちくしょう、錫で2000、チョークで500使っちまった。

残りが2500だ。相場など全く知らんが痛い出費だと思われる。

あと鑑定がレベルアップした。

そこはよろしい。

恐らく品質のバラつきがないかと思い見える範囲全て鑑定したからだろう。結果は殆ど一緒だけどほんの少しだけバラつきがあって値段おなじだから1番いいのにした。

量も殆ど変わらなかったしいい買い物なのだろう。

そう思わなきゃやってらんないよ、全くもう。


ただしこのインフォ音何とかなんないかなぁ。

これ絶対シャンパン開けた音と乾杯でグラスぶつけた音だよねぇ。趣味全開すぎだろ、社長さんよォ。


さてとそれでは気を取り直して外に行こうか。




「身分証は?」


「へっ?」


どうやら街の外に出るには身分証と金が必要なようだ。

考えてみれば当たり前なのだが。

世迷い人だということも含め色々と話を聞く。

大体はギルドに所属して、そのギルドカードを見せるらしい。中でもこの街では冒険者ギルド、魔法ギルドは出入りする時にお金がかからないらしい。

しかし魔法ギルドはそう簡単に入れるものでは無いらしい。

ならば冒険者ギルドに入ってカードを作るしかないじゃないか。

……普通こういうのはチュートリアル的なのでやらないの?

いや、あの社長が個人個人好きなようにやれという意味を込めてやらなかったと言えばそれまでか。


ここで言っても仕方ない。教えて貰ったギルドまで移動しようか。




うん、それなりに大きいな。

うちの学園の第一体育館並だ。

まぁ、大半は倉庫やギルド職員の仕事場で普通の冒険者はこっちのバスケコート2面分程しか入れないのだが。

そのコートの大きさの所に依頼受付のカウンター、ちょっとした大きさの酒場、いや、酒は扱ってないらしいので食事処。そして二枚の大きなクエストボード。

さらに回復薬や武具、アイテムボックスのレンタルが出来る店のようなものもある。

これは長いカウンターの列に並びながらお上りさんのようにキョロキョロしていて分かったことだ。

もう15分は並んでいる。

それでもまだ半分程しか進んでいない。大体対応出来るカウンターの列が2つしかないのがおかしい。

このゲームで鯖分けはないから1万人程が新しくこの街に来るはずだ。

流石に深夜であるし、始まって1時間もせずに全員ログインしているとは思わない。それにしたっても列はないよ。

社長さーん。

ミカドコクレンさーん。

どうしてですかー?


「あぁーっ、くそ。

どけよテメェら、邪魔なんだよ」


ほーら、こういう輩が出てくるし。

全く何を考えてるんだか。


それで暴れてるのはどんなやつなんだか。緑マーカーだからプレイヤーなのは間違いない。

鑑定はっと。


紅蓮 Lv1

狼獣人 ファイター


どうしてこいつはLv1でこんなに大きな態度が出来るのだろう。


併設されてる食事処の店員より低レベルなんだぞ。

ちなみに店員さんがこれだ。


ガルマ Lv5

ドワーフ スラッシャー


スラッシャーとはなんだろうか。

そう思えば勝手にウィンドウが開く。


スラッシャー

斧士。力強い斧使い。


雑っ! 短っ!


斧か、もしかして食事処の壁に飾られてるあの鉄斧だろうか。

完全に戦斧である。

間違っても木を切るための道具には見えない。


ちなみに店長さんはもっとやばい。


ジョエル Lv???

ヒューマン ???


はーい、読めなーい。

つまり遥か格上〜。

または偽装とか隠蔽系のスキル持ち〜。


さてさてあの狼さんはどうなるかなぁーっと。

俺が並んでるのとは別の方の列に並んでる人達を犬を追い払うように手を払っている。

シッシッってね。

お前さんがそれをやるかいね。もはや呆れて、笑えもしない。

そんな時だった。


幾人かは面倒くさそうに前に譲ってやったがその子は退く気はサラサラないのだろう。

完全にシカトしながら並んでいる。

それを見て沸点低そうな狼さんがその子の肩を「おい、チビ」と煩い声を上げながら掴む。

そしたら振り返ったその子が肩に置かれた狼さんの手を 逆の手で掴んで捻って肘でかち上げたと同時に手を離し、逆時計周りでスピンして左足の踵を狼さんの腹に突き刺す。

ドゴッといい音がして狼さんは吹き飛び、開けっ放しになっているギルドの出入口にボッシュートして大通りで大空を仰ぎみている。

いや、気絶しているようで周りの住人に道の端に引き摺られて言った。

自分より遥かに大きくウェイトなら倍は軽くありそう相手を吹き飛ばすとは恐れ入った。

吹き飛ばすってのはかなり大変なのだ。

特に今は相手の腹を蹴った。あの時の相手の重心はもっと高い胸の辺りだっただろう。そこを外して放物線で打ち上げるのではなく、まっすぐ直線的に吹き飛ばすことはあの小さな足では至難と言ってもいいだろう。

いやはや素晴らしい人がいたものである。


「レディに向かってチビとはなんだこの犬っころめが。

だいたい、汚く臭い男が気安く私に触れるな!」


なかなかに気難しいそうではあるかな。


レイン Lv???

クズリ獣人 グルメファイター


グルメファイター?

詳細はっと?

グルメファイター

美食戦士。特殊ジョブ。食事によりパフォーマンスが変化する。食事でも経験値を獲得する。どれだけ食べても太らず、常に健康体である。


なにこれ? いやほんとなんなの?

なかなかにぶっ壊れてるよね。

特に最後の1文とかさあ。

まぁ、NPCにそんなこと言ったって仕方ないけどさあ。

でもどうしてだろうか? 裏であの腹黒社長が高笑いしている場面が思い浮かんでしまうのは。


まぁ、珍しいジョブにあったな、と気を取り直して前を見る。

あと10分もせずに順番が来そうである。

それにしてもギルド職員はさっきの騒動ガンスルーなのね。なるほどそういうスタンスですか。

いや、レインさんだから、という可能性もあるかもな。

今日は人が多すぎて無理だけどいつか空いてる時に来て聞いてみるかな。



「ようこそ冒険者ギルドへ。

世迷い人の方でしょうか?」


「はい、その通りです。

身分証が欲しくてここへの登録をオススメされたのですが」


「なるほど、そういうことでしたか。

それでは当ギルドと加入について説明させていただきます。

こちら冒険者ギルドはモンスター、魔物の討伐等ーーー」


まぁ、よく聞く感じのでしたね。

お手伝い系からモンスターの討伐、更には商隊の護衛、賊の討伐まで様々な依頼を受けて上を目指してくださいな、って感じ。

ランクはアルファベットで1番上がAで最下層がHでした。特別なSとかは無し。

Aランクの冒険者はこのバローロの街の領主サーディナー伯爵が仕えるルーチェオスクリタ王国では1人だけだと言う。

ちなみに隣の帝国には2人いるそうだ。

この街では1人のBランクが最高だそうだ。

それが先程のレインさん16歳とのこと。

期せずして先程の疑問の一部が聞けた。


へ〜、あの子タメなのか。

すごいなぁ。


「あぁ、最後に1つだけお伝えしたいことが。

これからグレイブ様はHランクで始められるのですが本来スキップ制度がございまして、簡単な読み書きと戦闘技術が試され合格されると更に1つの依頼を受けて頂き、高評価でクリアとなりますと適切なCランク以下のランクになるのですが、見ての通り今はとても捌ける状況ではないのでもし希望されるようなら2週間以内に申しでて頂きたいのですが」


「あぁ、なるほどわかりました。

また少しして人が少なくなったらお願いしに来ますね」


「ご理解ありがとうございます。

それでしたら連絡が取りやすいように、世迷い人の方でしても宿に泊まることをおすすめ致します」


「ありがとうございます。

それではまた」


俺はそう言ってギルドを後にする。

……来た時より人増えてないか?

夕方になったら減ったりするのかなぁ? だいぶあやしいかんじだけど。


ちなみにギルドの登録、身分証になるカードの発行で残り少ない所持金の中から1000V取られた。

泣きたい。

さっさと門に向かい外で金になるものをゲットしなくては。


名前 グレイブ

種族 ヒューマンLv1

ジョブ サモナーLv1

魔気B 闘気E 霊気C

筋力 5

耐久 10

敏捷 5

精神 5

器用 15

幸運 20

スキル

召喚魔法Lv- 水魔法Lv1 錬金魔法Lv1 鑑定Lv2(up) 収納Lv- 茨Lv-

称号 茨の担い手

残BP ZERO


所持金1500V

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