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VS ドッペルゲンガー

「「「魂 魄 開 放ッ!!!!」」」



 襲い掛かってきた八体の影を、俺とマサとタッツン、三人の魂の輝きが押し返す。


 マサは額に二本の角を持つ燃え盛る巨大な狒々の姿へ。


 タッツンは稲妻を纏った機械仕掛けの鎧武者へ。


 そして俺は光輪を背負った六腕人型の光へ変わり、怯んだ自分の影に倶利伽羅で斬りかかった。

 俺の倶利伽羅クリカラを黒刀で受けたドッペルゲンガーが手首を返して俺の刀を滑らせ、逆袈裟に斬り返してくる。


 背後で高速回転していた光刃を操り黒刀の攻撃を受け、無数の光刃を躍らせて斬りつければ、影もまた無数の影刃を操りそれに応戦してきた。


「兄ちゃんそこどいてーっ!」


「どわぁーっ!?」


 小春の声に仰け反った瞬間、『轟ォッ!』と俺の鼻先数ミリの位置で巨大な物体同士がぶつかりあって、その衝撃で俺は後ろに大きくブッ飛ばされた。


「そーらよっとォ!!!!」


「うおぉぉっ!?」


 マサが横からカッ飛んできた俺の腕を掴んで、砲丸投げの要領で俺の身体をブン回して遠くの方へ放り投げる。


「おおおおおおおりゃぁぁぁ────ッ!!!!」


 レイラとレイラのドッペルゲンガーが放った狐火弾幕が飛び交う危険地帯を紙一重でくぐり抜け、巨大な闇同士が蛇のように絡みつき喰らいあっているそのど真ん中へ突っ込んで光刃を閃かせる。


「痛ったぁ────いっ!!!! ちょっとぉ! 私にも当たったんですけどぉ!?」


「かすっただけだろ、つべこべ言うな!」


 影を操り自分のドッペルゲンガーを捕食しながら抗議の声を上げたエカテリーナを背後に置き去りにして、俺は魔神の核を目指してさらに速度を上げた。


 横合いから飛びかかってきたベルダさんのドッペルゲンガーを漆黒の雌獅子の雷牙が食い止め、そのまま取っ組み合いの猛獣バトルへもつれ込んだのを横目に、更に前へ。


 すると突然、魔神の核が浮かぶ離れ小島を巨大な氷の城が覆いつくし、魂を凍てつかせる地獄の冷気が俺の動きを鈍らせていく。

 つばの広い三角帽子を頭に被り、黒いローブを翻して俺にステッキの先端を向ける魔法少女。涼葉のドッペルゲンガーだ。


 手足の先から凍りついていく俺を狙い、遠くでタッツンの巨大ロボと斬り結んでいたドッペルゲンガーロボのビーム砲が飛んできた。

 くそっ! 霊力が凍っちまって動けねぇ!?


「なにやってんのよしっかりしなさい!」


「間一髪です~。今解凍しますね~」


 ビームが直撃する寸前、レイラと涼葉が俺の目の前に飛んできて結界を張りビーム砲の一撃を退ける。

 涼葉が小さく呪文を唱えると、凍りついていた身体が再び自由を取り戻した。


「私の偽物はお任せしても~?」


「ええ、涼葉さんは私のをお願い!」


 一瞬だけ視線を交わして俺の前から二人が飛び去って行った直後、超重量のステッキでブン殴られた小春がこちらに吹っ飛んできた。


「大丈夫か!?」


「痛たた……うん、骨は折れてないみたい」


「一応回復魔法かけとくわ」


 飛んできた小春を受け止め、ドッペルゲンガーの追撃を短距離転移を繰り返して躱しながら完全回復魔法をかけてやる。

 ちょっとでも傷が残ったら一大事だからな。念には念を入れて守護の魔法もかけておくか。


「うっし、こんなもんだろ」


「なんか戦う前より身体の調子いいんだけど!?」


「神のご加護ってやつさ。それよりアレやるぞ」


「わかった!」


 反転結界を仲間に付与。反転対象は重力。

 超荷重術式起動! いっけぇぇぇ────ッ!!!!


「「グラビティバスターッ!!!!」」


 ブラックホールと化したステッキの先端を氷の城に向け、発射!

 空間を歪め周囲のあらゆるものを吸い込みながら突き進んだ超質量物体は、地獄の冷気を放つ氷の城を粉々に粉砕して押しつぶし、最後はフッと溶けるように蒸発して消えた。


 反転結界の効果で俺たちはブラックホールに吸い込まれず逆に遥か彼方まで弾き飛ばされ、結界を張っていなかったドッペルゲンガーたちは光すら逃さぬ超重力の前に成す術もなく消え去った。


 ……唯一、俺のドッペルゲンガーだけを残して。

 空間転移で逃げやがったか。


「ちっ、我ながらしぶてぇ野郎だな」


「…………」


 無言の偽物と睨み合う。

 と、ここで遠くまでふっ飛ばされていた仲間たちが続々と集まってきた。


「一秒でいい。アイツを止めてくれ」


「余裕ね。別に倒しちゃっても構わないんでしょう?」


「ハッ! やれるもんならな!」


 互いの顔は見ず、レイラと拳を突き合わせて、俺は空間転移で魔神の核の隣へ一気に飛んだ。


 それを見越して先回りで転移していたドッペルゲンガーの黒刀が、転移してきた俺の首筋を捉えた、その直後。


「魔神転装!!!!」


 純白の毛並みを持つ九尾の巫女へと変身したレイラの回し蹴りがドッペルゲンガーの首を刈り取り、彼方へと蹴り飛ばす。


「今だ影友さん!」


「待ってましたァ!!!!」


 魔神の核を影友さんが一口で飲み込むと、俺の全身がより一層強く輝きを放ち、世界が白く染まっていく────……



【レベルが 二〇 上がった】


【スキル『悪魔創造』『魔法創造』習得】


【称号『魔神』獲得】


【レベル一〇〇に到達】


【第二神化開始】



 ★



 光が収まると天を覆いつくしていた魔神の姿は跡形も無く消え去っていた。

 魔神の内なる宇宙から魔界へと戻ってきた麗羅たちの前に、魔人を取り込んだ晃弘が無言のまま立ちはだかる。


 魔神の力と魂を取り込んだことにより晃弘の見た目は大きく変化していた。

 背中には悪魔の翼、頭には黄金の二本角が生え、髑髏どくろを思わせる白い仮面の奥で赤い瞳がギラリと光る。



「お、おい。ヒロ……なのか?」



 先程までとは明らかに気配の違う幼馴染に、雅也が恐る恐る問いかける。



「GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』



 問いかけに対する返事は、獣の如き咆哮だった。

 どう見ても暴走している。

 魔神を取り込みさらにパワーアップした晃弘と、連戦で消耗しきった麗羅たち。勝ち目はゼロに等しかった。



「無事に取り込めたようね」



 刹那、喪服の女主人が晃弘の眼前に現れ、晃弘の頭を鷲掴わしづかみにした。

 たったそれだけで晃弘は身動きが取れなくなり、万力のような握力が髑髏どくろの仮面にひびを入れる。



「魔神との折り合いは自分でつけなさい」



 一言。聞き分けの無い子供に言い聞かせるように、喪服の女主人が呟いた直後、晃弘の脳天が握り潰され、血潮と脳漿のうしょうが花火のように飛び散った。


 潰された頭はジュワジュワと音を立てすぐさま再生して、その過程で背中の翼はみるみる小さくなっていく。

 5秒ほど時間をかけて潰された頭が元通りになると、白目を剥いて涎を垂らして気絶した晃弘がそこにいた。




 ★




「……で、またここかよ」


 気が付くと俺はいつぞやの不思議空間にいた。


 目の前には巨大な扉があり、周囲は深い霧で煙る泥沼。

 俺の立つこの小島だけが沼の中心にポツンと浮かんでいる。


「ってか熱っつ!? なんだこの熱気!」


 扉の奥から漏れ出る熱気で周囲の気温が凄まじい。

 例えるなら、真夏の鍛冶場だろうか。

 一度だけ爺ちゃんに連れられて見学しに行った刀鍛冶の鍛冶場がまさにこんな熱さだった。


「あああああっ! 狭い狭い狭い! それに全っ然ビューティーじゃないワ!」


 すると突然、扉の奥から王冠を被った髑髏のオブジェが飛び出してきた。

 もともと黒かったはずの見た目は焼けた鉄のように真っ赤になっており、近づくだけで肌がヒリヒリと痛い。


「ちょっとアナータ! あちしをこんな所に閉じ込めるたぁ、いい度胸じゃないのサ!」


 オネェ髑髏どくろが炎を吐きながら俺に詰め寄ってくる。

 熱っつぁ!? 燃える燃える!


「分かった! 分かったから近づかないでくれ!」


「だったらあちしに相応しい優雅でプリチーでアメイジングな部屋を用意なさい! 今すぐに! さあほら早くハリーハリーハリー!!!!」


「ぎゃぁぁ────っ!?」


 炎に炙られてすっかり黒焦げになりながら、俺は扉の奥へと追い立てられる。

 部屋を作れと言われても、どうしたもんかな。


「まあ、作りながら考えればいっか」


 ひとまず俺はそれぞれのオブジェを配置するため、部屋を7つに分けた。

 ここが俺の精神世界だというのはすでに分かっていたので、魔法を使う要領で念じれば、部屋は思った通りに形を変えて七つに分かれた。


 それぞれのオブジェが持つ力と、力の流れを考慮して……


 んで、ここをこうして……


 細かい装飾は実在する建造物から流用して……


 最後に遊び心をひとつまみ。


「こんなもんでどうよ!」


「ふぅん、いいじゃない。中々イイセンスしてるワねアンタ」


 新しい部屋を見渡しご満悦な様子のオネェ髑髏どくろ

 バロック様式の絢爛豪華な内装。その中央に『デンッ!』と存在感を発するウンコみたいな形の黄金の玉座が実にブリリアントな仕上がりとなっております。

 真っ赤に焼け付いていたオネェ髑髏もすっかり熱が冷めて、俺としても一安心だ。


「特にこの玉座。部屋の中央に星雲を置くなんてビューティーの心得があるワね」


「お気に召したならなによりだ」


 どう見ても黄金のウンコだけどな、その玉座。


「いいワ。アンタの美的センスに免じてここに収まってあげる。あちしの器になるんだから、常にビューティーでありなさイ。あちしに恥をかかせるようなことがあれば承知しないワよん」


 オネェ髑髏がウンコ玉座に収まるとサイケデリックな光が部屋を満たす。

 ドギツい色の光の乱舞に目がチカチカしてきた俺は、光から逃げるように部屋の外へ出た。


 すると身体がふわりと浮上して、ここではないどこかへと意識が引っ張られていく。

 どうやらそろそろ起きる時間らしい。


「ま、なにはともあれひとまず一件落着だな。あー疲れた……」



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[一言] 魔神がオネェ髑髏って あ、ドッペルゲンガー採用されてる
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