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みんな魔法少女になぁれ☆

 魔導霊装がアラートを発し、俺はすぐさま魔法少女に変身した。

 変身と同時に隔離空間が展開するも、黒い壁に阻まれそれ以上広がる様子がない。


 やはりこちらの予想通り、敵は結界による隔離空間の封鎖と戦力の分断作戦に出たらしい。

 

 ――――ヒゥンッ!!!!


 俺を巻き込むように風切り音が横切り、刹那周囲の建物が『ズズズ』と斜めにずり落ち白煙を巻き上げて一斉に倒壊した。


「キヒヒヒ! 今ので斬れないたぁ中々頑丈だなオマエ」


 目の前の空間が揺らぎ、カマキリと人間を足したような怪人が姿を現す。

 気配からして鉄壁のグラーギよりも明らかに格下だ。

 こっちの戦力を分断した上で大量投入した魔人で一気にカタをつけようってわけか。


 まあ、これを見越してタッツンが大量生産した誰でも変身可能な劣化版の簡易魔導霊装を聖十字教会と魔術師協会に配ったらしいから、仮に地球全体が同じ状況でも被害は最小限に食い止められるだろうが。



「その程度でいい気になるなよ雑魚が! そこで這いずってろ虫野郎!」


「ぬわぁっ!?」


 ステッキの先端をカマキリ怪人に向けて混沌魔法を発動。

 『ボフン!』とカマキリ怪人の身体が白煙に包まれ、煙が晴れるとそこには無力なナメクジに変化した怪人の姿があった。


 ナメクジに変化したカマキリ怪人を『ぷちゅっ』と踏みつぶして倒すも、黒い壁に変化はない。

 ちっ、壁を張ってるやつが別にいやがるなこれは。


 何か壁を破れるようなスキルとか無かったっけか。





犬飼(いぬかい) 晃弘(あきひろ) レベル30(☆)

 

 戦闘力三予六〇〇〇垓


 保有ソウル(端数省略)

 四予七〇〇〇垓(MAX)/七予(NEXT LEVEL)


 保有スキル

『不滅の身体Ex』『超霊闘気Ex』

『超感知Ex』『絶対防壁Ex』

『霊力波Lv一〇(MAX)』

『払魔闘術Lv一〇(MAX)』

『霊力弾Lv一〇(MAX)』

『超破霊拳Lv一〇(MAX)』

『呪怨封緘Lv八』『飛行Lv一〇(MAX)』

『空間移動』『混沌の種』『魔核破壊』

『魂魄開放Lv一』



 獲得称号

『ゴーストバスター』『カリスマ除霊士』『波ぁッの人』

『急成長』『人間卒業』『幽霊物件クラッシャー』

『死を乗り越えし者』『ほぼ不死身』『超人類』

『デビルスレイヤー』『都市伝説殺し』

『ジャイアントキリング』『呪怨払滅』『魂の救済者』

『呪いがナンボのもんじゃい!』『重力からの解放』

『ナマ言ってすんませんでした』『神へ至る一歩』

『鬼いちゃん』『混沌神』『現人神』

『星の破壊者』『世界の守護者』


 新称号

『魔法少女』

 魔法少女になった者に送られる称号。

 魔法少女に変身している間あらゆる能力が5倍になる。





 なんだよ、戦闘力三予六〇〇〇垓って。

 じょってのは確か一〇の二四乗のことだったか。もう数字がデカすぎて何が何やらわけがわからんぞ。


 この四日間の修業で各種感知スキルと防壁スキルが成長・統合して強力なExスキルになった以外は特に変化はないな。

 ……ん? そういやこの『空間移動』ってスキル、一度も使ったことなかったっけ。


 試しに遥か上空に転移するイメージでスキルを使ってみる。


「あだっ!?」


 俺の身体が遠くへ引っ張られていくような感覚がした直後、『ゴィンッ!』と上空を塞いでいる黒い壁にぶつかり、そのままピンボールの玉みたく弾かれてしまった。痛ってぇ……。


 念のため近くのドアに鍵を使って扉の城を経由して他の場所への移動を試みてみたが、入り口を黒い壁が塞いでおり通行不能になっていた。

 どうやら空間ごと完全に隔離されてしまっているようだ。


「くそっ、ムカついてるときに面倒なマネしやがって! こうなりゃ意地でも外に出てやる!」


 混沌エネルギー、一二〇%充填! 大規模転移術式構築開始!


 ステッキの先端を中心に無数の魔法陣が立体的に浮かび上がり、紫電を放ちながら高速回転して俺の身体が光に包まれていく……!



「行くぞオラァ! GO to キャンペ――――――――ンッッ!!!!」



 刹那、どこか遠くへと引っ張られるような感覚がして、俺は空間を飛び越え、ここではないどこかへと転移した。



 ◇



 漆黒の壁が地球全体を細かく切り分け完全に覆いつくす様子を上空から見下ろし、魔王軍四天王「魔剣」のベルダが口角を吊り上げ牙を剥く。


 今回ベルダが実行したのは、地球を反魔法障壁で五〇〇〇の区画に分割し、敵戦力を分散させ、それぞれの区画に転移させた殲滅師団の兵士たちにより各個撃破を狙う大規模分断作戦だ。


 グラーギの敗北から学び、数の暴力を生かすべく立案された今回の作戦。兵法において兵力の分散は愚策とされるが、すべての兵士が単騎で大国を落とせるほどの大戦力ならば話は変わってくる。


 仮に殲滅師団の兵士を倒せるほどの猛者がいたとしても、他の地域の占領が終わるまで隔離しておけばさしたる脅威にもなり得ないし、仮に反魔法障壁を破って外へ出てくるような相手ならばベルダ自身が相手をすればいい。


 半端な強者は閉じ込め無力化し、真の強者は血沸き肉躍る一騎打ちにて打ち倒す。まさに完璧な作戦だった。


 血管の浮き出た禍々しい黒鞘からベルダが魔剣をスラリと引き抜けば、刀身に埋め込まれた無数の瞳が『ギョロリ』と見開かれ、邪悪なオーラが立ち昇る。


 剣の切先を地上へ向けベルダが思念通信魔法を使い全軍に命令を下す。


「全軍作戦開始! この星を完膚なきまでに破壊するのだ!」


 しかし次の瞬間、ベルタの脳裏に返ってきた思念は兵士たちの猛々しいときの声ではなかった。


『な、なんだコイツら!? ぐわぁぁっ!?』


『くそっ! 楽な仕事じゃなかったのかよ!? ぎゃぁぁっ!!』


「ぐっ!? なんだ! 何が起きている!? 誰か状況を説明しろ!」


 無数の強い思念波が脳内で入り乱れハウリングを起こし、頭の中で反響する雑音にベルタが眉をひそめる。

 チャンネルを絞りこみ一つずつ戦況を把握しようと努めると、次第に状況が分かってきた。


『敵の隔離空間が展開しています! 敵多数! すべて魔法少女です!』


『こちらでも隔離空間の展開を確認! 魔法少女がこんなにいるなんて聞いてないぞチクショウ! ぐわぁぁっ!?』


「くそっ! 何がどうなっている!?」


 状況をまとめると、どうやら全ての閉鎖ブロック内で隔離空間が展開し、無数の魔法少女たちが一斉に襲い掛かってきたらしい。


 事前の調べでは魔法少女の数は五人までしか確認されていなかった。

 魔物たちの魔核を破壊した魔法術式の複雑さから見ても、特殊な霊装を使用しているのは一目瞭然であり、その複雑さから量産は不可能だろうと見立てていたが、どうやら読みが外れたらしい。


「くそっ! いったいどんな手品を使った!? あれほどの霊装をこの短期間に量産するなど!」


 ベルダが額に汗を浮かべると、特に厳重に封鎖した夜鳥羽市の一角から黄金のオーラを纏った獣が反魔法障壁を喰い破りベルダ目掛けて流星のようにカッ飛んできた!

 獣の爪とベルダの魔剣がぶつかり合い、互いに大きく後ろへ飛んで距離を取る。


 彼女の前に立ちはだかったのは黄金の装甲を全身に纏ったネコ科の肉食獣のようにしなやかな肢体を持つ女戦士だった。

 真っ赤なツインテールの上で猫耳がピコピコ動き、縦に開いた瞳孔が真っすぐにベルダを見据える。


「綺麗だ……」


 頬を紅潮させ、うっとりと呟く謎の女戦士。

 その顔はまさしく一〇〇年の恋に出会った乙女そのものだった。


「貴様ァッ! 何者だッ、名を名乗れッ!」


 警戒したベルダが魔剣を突きつけ吼える。

 すると女戦士はすぐにハッとしてかぶりを振り、ニヤリとギザギザの歯を剥き出しにして笑った。


「オレは熊谷雅也! 素敵な筋肉ですねお姉さん!」


「…………はい?」


「アンタの筋肉に一目惚れしちまったんだよ! そのしなやかさと強靭さを兼ね備えた黄金の筋肉! 並大抵のトレーニングじゃそうはならねぇ! 同じトレーニーとして最高に尊敬するぜ! なんつーエッチな腹筋だよ結婚してくれ!」


「け、けけけけけっこん!?」


 突然敵からプロポーズされてしまいベルダが目を白黒させてあたふたとたじろぐ。

 今まで数多くの敵と相まみえ、そのすべてを魔剣の錆にしてきたが、敵から求婚されたことなど今まで一度たりともなかったのだから当然の反応だった。


「じゃあ一騎打ちで勝負して俺が勝ったら結婚してくれ! 負けたら俺が勝つまで勝負しろ!」


「どうあがいても結婚じゃないか!? 言ってることが滅茶苦茶だぞ貴様!」


「恋に常識は通用しねぇ――――ッ!」


 ガギィィン! と、再び爪と刃が交わりヂリヂリと火花を散らす。


「くそっ! バカの相手などしていられるか! 二度と挑んでこれないようにバラバラに切り刻んで消滅させてやる!」



いざ、GO to トラベル!



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― 新着の感想 ―
[一言] 何かラブコメ始まった
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