VS 剛力のゴード
「我が一撃、貴様らに耐えられるかァ────ッ!!!!」
剛力のゴードが自身の背丈にも匹敵する大剣を下段の構えで後ろに大きく引いた。
ただそれだけの動作でも、推定全長一八〇〇メートル越えの巨体がそれを行えば大気がうねり家々の屋根が吹き飛んでいく。
「全員備えろ────っ!」
俺が叫ぶと足元に闇が広がり、俺たちが闇の中に飲み込まれた、その直後。
轟ォォォォ────────ッッッッ!!!!
天と地、すべてを薙ぎ払う圧倒的な暴力が俺たちの頭上で吹き荒れた。
「か、間一髪だったわぁ……」
闇の中から地上に這い出ると、町は地盤ごと抉られ、剣を振り抜いた先にあったものは遥か地平の彼方まで跡形もなく消し飛んでいた。
剣が振り抜かれる直前にエカテリーナが俺たちを闇の中に引き込んでくれなかったら、今頃俺以外全滅していただろう。
あれだけの巨体でありながら動きは素早く、扱う得物もまさに質量の暴力と呼ぶにふさわしい金属の塊。
いや、あれはもうサイズ的に鉱山そのものを振り回しているようなものだ。
デカイは強い。
そんな当たり前をとことんまで突き詰めた一つの究極が、今度は大上段に剣を構え直した。
「ほう、異相空間へ潜り込んで回避したか。中々小賢しい真似をする。ならば次はその異相ごと叩き切るまで!」
ゴードの剣が灼熱の光を帯びて煌々と燃え盛り始める。
あの巨体で魔法まで使うのかよ!?
「させるかァァァァ────────ッッ!!!!」
ステッキに混沌エネルギーをぶち込みゴードの足元に巨大な魔法陣を出現させる。
なんかステッキが規格外の燃料をぶち込んだエンジンみたくガタガタ震えてるけど、もうちょっとだけ耐えてくれ!
「いくぞオラァァァァ────ッ! 超混沌魔法、発 ☆ 動!!!!」
震えに震える魔法のステッキを天高く掲げて力の限り叫ぶと、ゴードの足元の魔法陣が一際強く輝き────!
「ぶわはははははっ!? な、なんだ急にくすぐったはははははは!」
ゴードが腹を抱え身をよじりながら笑い出した!
名付けて『強制こちょこちょ魔法』。
あらゆる耐性を貫通して相手に耐えがたいくすぐったさを与える、ただそれだけの魔法だ。
けど、戦闘中にやられたら相当嫌だろう。
「今だ! 畳み掛けろ!」
「言われなくてももう準備済みよ! みんな行くわよ!」
「よし来たっ!」
「デカイのブチかましてやりましょう!」
「塵一つ残さないわぁ!」
「お、おのれ卑怯なマネをぶはははははは!?」
俺たちは一気に空高く飛び上がり、遥か眼下に見下ろすゴードの頭上に向けて一斉にステッキを構えた。
レイラのステッキの先端が赤く輝き、全天を覆いつくすほどの魔法陣が展開して、超特大の火球が地上へ向けて落下していく。
「落陽炎界!」
「ぐぬおぉぉぉぉぉっ! なんのこれしきぃぃぃぃ!!!!」
脚を大きく開いたゴードが小惑星規模の火球を両手で受け止め、こちらへ押し返そうとしてくる。
大地にゴードの両足が食い込んで亀裂が走り、火球が放つ熱量により地上が溶岩の海と化した。
そこへエカテリーナがステッキを指揮棒のように振り更なる魔法を発動させる。
「常闇ノ惨宴」
「ぬうぅッ!?」
大火球が落とし込んだ陰影がゴードの全身を這いずり回り、その巨体を蛇のように絞め上げながら肉を喰らい血を啜る。
これにはたまらずゴードも膝を突き、大火球がゴードを溶岩の海へとさらに押し込んでいく。
「調子にィィィっひっひっひ、乗るなぶははははは!?」
ゴードの第三の腕が取り落とした大剣を掴み、どうにか火球を打ち返す。
その反動で大地にクレーターが穿たれ、火球が俺たち目掛けてカッ飛んでくる。
「マサっ!」
「おうよっ!」
タッツンがステッキを振るうと俺たちの頭上に魔法陣が現れ、ジェットエンジンを搭載した巨大ハンマーが3Dプリンターのように出力された。
それを受け取ったマサがジェットハンマーを振りかぶり、
「だらっしゃぁ────ッ!!!!」
直後、ハンマーのエンジンが点火。
ジェット加速に乗ってマサがハンマーを振り抜き、迫る火球を打ち返した!
インパクトの瞬間、ハンマーの打撃面に複雑な魔法陣がいくつも展開して、火球がさらに大きく、さらに熱量を蓄えて、先程の倍の速さで地上へ向けて落下していく。
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!?」
ゴードが断末魔と共に光の中へと消えた、その直後。
関東全域を覆いつくすほどの大火球が地表へぶつかり、めくれ上がった地殻が溶岩の津波となって全球を飲み込んだ!
つーか熱っちゃちゃちゃちゃちゃ!? 焼ける焦げる溶けるーっ!?
バ、バリア────っ!!!!
【スキル『魔法障壁Lv五』を習得】
ふひぃ……。危なかった。危うく消滅と再生の無限ループに陥るところだぞ。
ったく、みんなして無茶苦茶やりやがって。ご都合主義空間だからって惑星破壊までやるかよ普通。
『まだ終わってないマチョ!』
「なにっ!?」
俺の後ろに隠れていたマチョイヌが地上に穿たれた真っ赤に煮えたぎるクレーターの中心部を指さす。
そこには真っ黒に炭化した黒い球体が転がっていた。
球体の表面に罅が入り、中から無傷の魔核が空に向かって飛び上がっていく。
すると魔核を中心に失われたゴードの肉体がみるみる再生していくではないか。
「させるかぁぁぁッ! 魔ァ~慈ィ~火ァ~瑠ゥ~ッ! バスタァァァァァ────ッッ!!!!」
ステッキの先端から撃ち出した極大の光芒が天と地を繋ぐ柱となり、ゴードの魔核を光の中へ消し去っていく。
極光が地殻を貫き、地球の内部に封じ込められていた圧力が大量のマグマと一緒に開放され、圧力に耐えきれず大地に亀裂が走る。
そして────!
眩い閃光と同時、地球が大爆発した!
────ぱらぱぱっぱっぱっぱー♪
【レベルが 十一 上がった】
【スキル『魔核破壊』を習得】
【称号『星の破壊者』『世界の守護者』を獲得】
『星の破壊者』
一つの星を破壊した破壊の化身に送られる称号。
相手が自分よりも大きければ大きいほど攻撃の威力に補正がかかる。
『世界の守護者』
異世界からの侵略者から世界を守った者に送られる称号。
異なる世界の存在へ与えるダメージに三倍の補正。
どうせ隔離空間解除すれば全部元通りだしへーきへーき!




