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お兄ちゃんにバレちゃった! マジカル★こはるんいきなり大ピンチ!?

 突然色彩が反転した謎の異空間に飛ばされた俺は、教室の窓を突き破ってきたドラゴンに襲われる。


 何度攻撃しても蘇る不死身のドラゴンに苦戦する俺を助けたのは────魔法少女に変身した妹の小春だった。


 ったく、宗助の問題が解決したと思ったら今度は小春かよ!

 どうやらまた厄介事に巻き込まれちまったらしい。


 相変わらず長続きしねぇな、俺の平穏な日常は!



 ☆



 ドラゴンの消滅に伴って色彩の反転した世界が元に戻り、壊れた校舎と俺の学ランも元通りになった。

 なるほど、ご都合主義空間か。


 小春もフリフリピンクの魔法少女衣装から中学のセーラー服に戻り、気まずそうに俺から目を逸らす。


「じゃ、じゃあ! 私学校行かなきゃ!」


『急ぐマチョ!』


「まあ待て、ここからだと走っても一五分はかかるだろ。ちょっとついてきな」


「……う、うす」


 小春を連れて昇降口まで歩き、臥龍院さんの鍵を使って中学校の昇降口と繋ぐ。


「ほれ、中学校の昇降口と繋いでやったから行きな」


「やば、マジじゃん。どうなってんの!?」


 ほんと便利だよなこの鍵。

 一度行ったことのある場所ならドアや入り口を通じてどこへでも行けるんだから。


「……怒らないの?」


「怒らねぇよ。相談くらいはしてほしかったけどな」


「ごめん……」


 小春がしゅんとして顔を伏せる。

 まったく、そんな顔するならもうちょっと早く相談して欲しかったよ。


「ほら、行った行った。事情は帰ってきてから聞くから」


「うん……。ありがと兄ちゃん」


『助かったマチョ!』


「おいマスコット、テメェは残れ」


『ふぎゅうっ!?』


 駆け足で去っていく小春の鞄に入り込もうとする二頭身のムキムキわんこの頭を「ムギュッ」と掴んで引き止める。


「テメェがウチの妹(かどわ)かした元凶だろ。なぁ、分かってんだぞコラ」


『ぐえ~っ!? もしかして全部見てたマチョ!? あだだだだ!? 中身飛び出ちゃうマチョ!?』


「頭からケツまで全部話してもらうぞクソがっ!」



 マスコットの頭を握りしめて眉間みけんに力を込めて()()()したらマスコットはすぐに口を割った。



 ★



 事の発端は異世界「プロンテイ」がまた別の異世界からの侵略者「魔王」の手に落ちたところから始まる。

 魔王軍の魔物たちは魔核まかくと呼ばれる器官を破壊しない限り無限に再生して襲い掛かってくる恐るべき相手だった。


 しかも異世界の法則によって守られている核は「プロンテイ」が誇る魔法技術では破壊不能で、地上のすべては瞬く間に魔王軍によって蹂躙じゅうりんされ、地上の支配権を失ったプロンテイの民は地下へと逃れた。


 いずれ来たる反撃の時に備え研究者たちは魔核の研究を進め、とうとう魔核を破壊するための特別な装備「魔導霊装」を開発するに至る。

 しかし「魔導霊装」には一つだけ致命的な欠点があった。

 魔導霊装には意思が存在し、その意志が認めた者しか装備できなかったのだ。

 そして残念なことにプロンテイの民は誰一人として魔導霊装の意思に選ばれなかった。


 プロンテイを支配した魔王は他の平行世界へもその魔手を伸ばし始め、先遣隊を送り込むため異世界へのゲートが開かれたその時、魔導霊装が今までにないほどの強い反応を示し……。



 ★



「で、辿り着いた先にいたのがウチの小春だったと」

 

『今からちょうど一週間前の夜だったマチョ』


「チッ……よりによってあの夜かよ」


 ったく、次から次から面倒事が勝手に押し寄せて来やがる。


『コハルの才能は素晴らしいの一言に尽きるマチョ。むしろ小春がいなかったらこの世界は既に先遣隊の手で破壊され尽くしていたかもしれないマチョ』


「いや、それはねぇな」


『どうしてそう言い切れるマチョ?』


「いるんだよ、世の中には絶対に敵対しちゃいけない相手ってのが……」


 異世界からの侵略者なんて臥龍院さんが黙ってるはずがない。

 けど、あの人もなんだかんだ忙しいっぽいし、今は小春だけで対処できてるから、ひとまず様子見してるってとこだろうな。


『それより、お兄さん何者マチョ? コハルの攻撃に巻き込まれて生きてるなんて絶対普通の人間じゃないマチョ。それに隔離空間へは魔法少女以外は絶対に入れない仕様になってるマチョ』


「……さぁな、お前には教えてやらねぇ」


『ひどいマチョ~!』


 本当に味方なのかもハッキリしてない変なマスコットにわざわざ自分の能力を教えてやる義理はない。

 隔離空間うんぬんのくだりは俺もよく分かんねぇしな!


「つーかよ、今はまだ先遣隊が送り込まれてる段階だから小春一人でもなんとかなってんだろうけどさ、これから先、敵はどんどん増えてくんだろ? ホントに大丈夫なのかよ?」


『今プロンテイで魔導霊装の二号機と三号機を製作中マチョ! 地球への本格的な大攻勢までには絶対間に合わせるマチョ!』


 なるほど、新しいカラーバリエーションの仲間が増える予定と。


「もう一度確認するけど、魔核ってのは魔導霊装でしか破壊できないんだよな?」


『今の所はそうマチョ。この世界の技術なら破壊可能かもしれないけど、詳しくは知らないからなんとも言えないマチョ』


「ってことらしいけど、影友さん的にはアレ、喰えそうだと思う?」


「無理だな。見た感じアレはこの世界の位相よりずっと高次元にあるナニカだ。今のおれじゃ多分消化できねぇ」


「そっか……」


「けど、おれとブラザーは根っこのとこで繋がってるから、ブラザーが魔核を破壊できるようになればおれも魔核を消化できるようになるかもしれねぇな」


 ふむ、なるほどね。

 タッツンなら魔導霊装作れたりとかしねぇかな。

 あとでちょっと相談してみよう。



 ★



 昼休み、エカテリーナの協力を得て空き教室を貸し切り、俺は朝起きた出来事を三人に話した。


「急に消えたと思ったら、まーた面白そうなことに巻き込まれてやんのな」


 俺の話を聞いたマサが面白がってニヤニヤ笑う。

 この野郎、他人事だと思って楽しんでやがる。


「巻き込まれずに済むならそうしたいわ!」


「嘘つけ。割としょっちゅう自分から首突っ込んでいくクセに」


 それは時と場合によるだろ。

 ダチや家族が困ってたら面倒でも助けるわ。


「ちょっと、厄介事に自分から首突っ込むのはやめてよね。ボーヤの身に何かあったら私の責任になるんだから」


 エカテリーナがやってらんないとばかりに半目で睨んでくる。

 可能な限り善処しますよ。可能な限りは、ね。


「で、どうだ。複製できそうか?」


「まあ、構造さえ解析できればなんとか」


『まあやるだけやってみるマチョ。どうせ無理マチョけど!』


 なぜか上から目線のクソマスコットから渡された魔導霊装(おもちゃ屋に売ってそうな魔法少女ステッキ)を持ってタッツンが修行場へと入ってゆき……。



「────くぅ~疲れました。とりあえず五本複製してみましたけどこれで足りますよね?」



 一秒とかからず戻ってきて、机の上に五本の魔法少女ステッキが並んだ。

 相変わらず仕事が早い。


『や、やややややヤベーマチョ!? マジで技術流出マチョ!? 本国にバレたら処刑確定マチョ!』


「ふっふっふ、いい勉強になりましたよ」


「これで一蓮托生だねマスコットくん(笑)」


 わなわな震えるマスコットの肩に手を置いて鼻で笑ってやる。

 小春を危ないことに巻き込みやがって。そこだけは絶対許さねーからなクソが。


『笑いごとじゃねーマチョ! あとマチョには「マチョイヌ」って名前がちゃんとあるマチョ!』


「あ、やっぱ犬なんだなお前。中々いい大胸筋してるとは思ってたけどよ」


 マサがおもむろに制服を脱いで、負けじと大胸筋をピクピク歩かせる。

 なぜ脱ぐ。キモいぞ。


『オメーも地球人にしては中々見どころある筋肉してるマチョ! この世界の人間は筋肉が足りないマチョ! みんなコイツくらい鍛えなきゃダメマチョ! 健全な魔力は健康な肉体に宿るマチョ!』


「「「それは嫌」」」


 全人類ゴリマッチョとか嫌すぎるわ!

 もしかしてプロンテイ人が魔導霊装に選ばれなかった理由ってまさか……。



 ソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッ!!!!



 すると突然、暑苦しい掛け声と共にマチョイヌの尻尾が赤く点滅発光を繰り返す。

 うるせー! 何事だ!?


『ば、馬鹿な! 早すぎるマチョ!?』


「どうした、大攻勢でも来たのか」


『そうマチョ! 観測隊からの情報によれば総数一〇〇〇万! 魔王軍の一〇分の一の大戦力マチョ! 奴ら本気でこの世界を落としに来たマチョ!』


 予想はしてたけど随分急だな。

 

「まあいい。タッツン、一本貰うぞ」


 魔法のステッキを手に取る。

 何故かは知らないがとても手に馴染んだ。

 よしよし、これなら行けそうだ。


「何一人で行くみたいな空気出してるんですか。僕も行きますからね?」


「一人でカッコつけようったって、そうはさせねぇかんな!」


「はぁ……もう、結局私まで戦う流れじゃないのコレ。やんなっちゃうわ」


 タッツンとマサがニヤリと笑い、エカテリーナもやってらんないとばかり溜息ためいきいて、それぞれステッキを手に取る。


 すると、ステッキの先端に付いた赤い宝石が強く輝き始めた。


『そ、そんな!? 全員適合者だなんてどんな確率マチョ!? ありえないマチョ!』


「別に魔導霊装は女の子専用ってわけでもねーんだろ? なら、兄の俺が適合したっておかしくねぇだろ」


「まあ、このステッキ複製したの僕ですし?」


「筋肉が共鳴してやがる……! そうか、お前も筋肉なんだなっ!」


「こんな棒きれ一本従えられないようじゃ闇の神祖の名折れよねぇ」


 それぞれが光輝くステッキを手の中で弄び頷く。

 一人だけ理由が意味不明だけどいつものことだから気にしてはいけない。


「行くぞオメーら!」


 ステッキを構えると、頭の中に力を開放するためのキーワードが浮かび上がってきた。行ける……!



「「「「マジカル★チェンジア────ップ!!!!」」」」



 

うっそー!? お兄ちゃんが魔法少女になっちゃった! すごい数の敵が押し寄せて来てるのに肝心のマチョは行方不明! 

これからいったいどうなっちゃうの〜!?


次回、魔法少女マジカル★こはるん 第3話

「魔法使うより殴ったほうが早い!」


次回も見てくれないとマジカルステッキでタコ殴りだゾ★(※嘘予告)


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― 新着の感想 ―
[良い点] TSロリッ子だとぉ!?(ロリだなんてひとこともいってないでもTSはするだろぉ!)
[一言] 次回予告で結末が予想できてしまった
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