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喪服の女 2

 翌日。


「ここで、間違いないよな……?」


 俺は渡された名刺に書かれていた住所を早速訪ねてみることにした。

 あんな意味深なご挨拶をされてしまっては、気になって放置できるはずもない。

 しかもそれが相当な美人からの招待とあれば、男なら喜んで行くしかないだろう。


 何故美人だなんて分かるかって? 

 そんなもん俺のセンサーに特大の反応があったからに決まってるだろ。ヴェールでは隠しきれない大人の色香ってヤツさ。

 あの少し影のある感じ、恐らく未亡人と見た。

 色々と持て余した未亡人。なんて素敵な響きだろう。


 と、そんなよこしまな期待をちょっぴり抱きつつも、どうせ連休中は暇だからと自転車を駆り出して自慢の健脚でえっちらおっちらやってきた訳なのだが……



「……どう見ても不動産屋って感じじゃねぇな」



 スマホのナビを頼りに辿り着いたその場所は、俺の住む梟町ふくろうちょうの外れにあった。


 位置的には昨日の廃病院の反対側の、小高い丘の上の林の中である。

 背の高い針葉樹の林道を抜けた先に建っていたのは、如何にも貴族が住んでいそうな、古びた洋館だった。


 門の外から見える庭には色とりどりの薔薇が咲き誇り、その優雅な香りがここまで漂ってきている。

 いったいどれだけ悪い事をすればこんな豪邸が建つというのか……


「ま、まあ、もし違ってたら道を聞けばいいだけだし……」


 意を決して門の前に立つと、インターホンを押した訳でもないのに門が勝手に開いた。

 こ、これは、招かれてる……のか?


「お、おじゃましま~す」


 なんとなく忍び足で敷地の中へ。

 門を潜り薔薇の咲く庭を中ほどまで進むと、背後で門の閉じる音がした。

 はいはい自動ドア自動ドア。オバケなんて怖くないやい!


 そのまま庭を通り過ぎ、白亜の噴水を正面に構える玄関の前に立つ。すると、またもや扉は勝手に開いた。


 ここまで来るともう何となく察しは付く。これ、入ったら閉じ込められるパターンの奴だ!

 しかし、すでに退路は断たれている。分かっていても進むしかない。


 つーわけで、レッツゴー。


 屋敷の中に入り数歩進むと、当然の如く背後でドアが勢いよく閉じて鍵が勝手に掛かる。

 ほらやっぱり閉じ込められたじゃないですかやだー!


 そしてここまでお客様が入ってきたのに、家主はおろか使用人の一人も姿を見せない。

 というか、この屋敷から生き物の気配を全く感じない。


 代わりに屋敷全体を覆うように、うっすらと「よくないモノ」の気を感じる。


「うーん。でも、幽霊屋敷にしては綺麗すぎるんだよなぁ」


 人の気配は無いのに、何故か手入れはちゃんとされている。どうにも妙だ。


 庭には落ち葉の一枚も落ちていなかったし、屋敷の中もとても清潔で明るい。

 ここが幽霊屋敷だなんて、霊感のない人間には到底信じられないだろう。

 少なくとも、一昨日までの俺なら絶対に信じない。


「これは……嵌められたかな?」


 そうでなければ試されているか、もしくはその両方か。

 あの喪服美女の正体が霊能力者で、霊に纏わる仕事をしていると仮定すれば、ここまでの流れに一応辻褄(つじつま)は合う。

 ここの幽霊を何とかできないくらいの奴なら会う価値もないし、悪霊を祓えるならそれはそれで面倒な仕事が一つ減る。と、そんな所だろう。


「へっ、そっちがそういう態度で来るなら俺にも考えがあんぞ」


 元々、今日もレベリングに行く予定だったんだ。そっちが勝手に場所を用意してくれるってなら、有難く使わせてもらうさ。

 その過程で屋敷がどうなろうと、俺の知った事じゃないがなァ! 



「いくぜヒャッ波ぁ────ッ!!!!」



 開幕ブッパは基本。

 閉じ込められたなら建物ごと消してしまえば良かろうなのだァーッ!


 俺の両手からあふれ出た霊力の波動がすべてを光の中へと飲み込んでいく。

 やがて光の奔流が収まると、俺の背後のドアを残して幽霊屋敷はきれいさっぱり無くなっていた。



 ────ぱらぱぱっぱっぱっぱー♪



【レベルが 五 上がった】


【称号『幽霊物件クラッシャー』獲得】


『幽霊物件クラッシャー』

 幽霊物件の悪霊を建物ごと消し去った豪快な人間に贈られる称号。

 霊力攻撃の破壊力に大補正。



 風が吹いて、奇跡的に残っていたドアがバタン……と倒れる。


「よしっ、すっきりした!」


「よしっ、じゃないわよこの馬鹿!」


「あだっ!?」


 幽霊屋敷改め、新鮮な廃墟になった場所で、爽やかに晴れた五月晴れの空を眺めながら一仕事終えた達成感に浸っていると、突然背後から誰かに頭をハリセンで「スパァン!」と引っ叩かれた。

 振り返るとそこにいたのは、腰まで伸ばした濡れ羽色の髪のてっぺんに狐耳を生やした同い年くらいのメイドさんだった。


「えっ、誰……メイドさん?」


「どうしてくれるのよコレ!? 建物無くなっちゃったじゃない! あぁ、もう、ご主人さまになんて報告すればいいのよ!?」


「いや知らんし。ってか質問に答えろよ」


 気の強そうな瞳を釣り上げたまま、ぷいっとそっぽを向くキツネっ()

 なんかツンデレっぽいぞこの子。残念だなぁ、顔はめっちゃ可愛いのに。


 俺は素直で優しくて甲斐甲斐しくて、ついでにおっぱいも大きな幼馴染系ヒロインが好きなんだ。

 確かに爆乳ではあるけど、なーんか不自然なんだよなぁ……。


 なんというか、これ見よがしに大きく開いた胸元と谷間があざとすぎるし、揺れ方もわざとらしいほどプルンプルンだ。

 そして俺の質問に答える気もないらしい。


 じゃあ、用も済んだし帰るか。


「……って! 何勝手に帰ろうとしてんのよ!?」


「だって用は済んだし。質問にも答えてくれないならここにいる意味ないかなーって」


「私の用はまだ済んでない! 勝手に帰らないで!」


「じゃあ早く済ませろよな。俺も暇じゃないんだから」


「人様の屋敷一つ消しといて、なんでこんなに偉そうなのコイツ……!」


 そんなの、法的に俺が犯人であるという根拠がないからに決まってんじゃん。

 なにせ建物の破壊方法が『波ぁッ!』だもん。そんな非科学的な方法証明しようがない。

 仮に証拠映像があったとしても、霊感の無い人には建物が勝手に吹き飛んだようにしか見えないだろう。


 そもそも先に騙して幽霊屋敷に閉じ込めたのはそっちの方じゃないか。俺が謝る筋合いなんてこれっぽっちも無いぞ。


 

 ……それにしても、なんだか妙に懐かしい感じがするのはなぜだろう。

 打てば響くというか、初めて会ったはずなのにどうにもそういう気がしない。


 はて、これほど個性の強いツンデレメイドなら一度でも会えば絶対に忘れない自信があるのだが、いったい何時会ったのだったか……?



 うーむ、思い出せそうで思い出せない。

 これが世に言うデジャヴってやつか。あぁもう! モヤモヤする。


「あらあら、これはまた随分とすっきりしてしまったわね」


「ご、ご主人さまっ!」


 と、ここでまたも背後から声が。

 振り返ると、そこにはいつの間にか日傘を差した昨日の喪服の女が立っていて、キツネっ娘が慌ててその場にひざまずく。


 ……この人たちはいちいち俺の背後に回らないと死ぬ呪いにでもかかっているのか?


「昨日ぶりね、坊や」


 と、喪服の女が凄艶せいえんな笑みを口元に浮かべる。


「突然の訪問にも関わらず盛大な歓迎どうも」


 なので俺も口元に笑みを浮かべ、招待主にお礼の言葉を口にした。

 もちろん嫌味だ。


「こ、こいつ……! どの口がそんな事を!」


麗羅(れいら)


「っ! し、失礼しました。……くっ!」


 キツネっ娘が嫌味に反応して噛みついてきたが、ご主人さまに視線で制されてモフモフの耳をぺたんと伏せて、俺に恨みがましい視線を投げかける。


 ところでお前、レイラって名前なんだな。どういう字だろう。

 名前の響きからしてやっぱりツンデレっぽい。

 ツンデレイラから視線を戻した喪服の女が、一つ息を吐いてから話題を戻す。


「どうやらお眼鏡には適ったようですね」


「ふふっ、賢い子は好きよ? お詫びと言ってはなんだけど、今度こそ本当に我が家へ招待するわ。ついていらっしゃい」


 フリルのついた日傘をくるりと回し、喪服の女は優雅に門の方へと歩き出す。

 美人からの自宅へのお招きとあらば、ここで断るなどという選択肢は男としてあり得ない。というか元々そのつもりで来たんだしな。

 やっぱり相当持て余してるのかなぁ! げへへ!


「ちょ、本気ですかご主人様!?」


「もちろん。実力は十分。まだまだ伸びしろもありそうだし、スカウトしない理由がないわ」


「で、でも、屋敷ごと全部吹き飛ばしちゃうような非常識な奴ですよ!?」


「問題ないわ。どうせここは、悪霊の力で維持されてた物件だもの。退治した後は廃墟になるだけだったのだし、解体費用が丸々浮いてむしろラッキーじゃない」


 確かに周囲を見渡せば、つい先程まで楽園のように美しかった薔薇の庭は、今や雑草と茨に覆われた廃墟然としたものへと変わり果てていた。

 やっぱり、ここはこの人の所有物件だったらしい。

 ともあれ、おとがめも無いみたいだしとりあえず一安心。


「だってよ。よかったなツンデレイラ」


「なによツンデレイラって!? どうして私が悪いみたいな感じになってるわけ!?」


「だってお前俺の事ずっと監視してたんだろ? なら止めなかったお前にも責任の一端はあると思うんだが」


 そうでなきゃあんなにタイミングよく現れたりはしないだろう。


「そ、それは……! で、でも、ご主人さまから手出しは禁止されてたし……」


「ふーん、じゃあご主人さまのせいだと言いたい訳だ」


「ち、違……っ!」


「ふふふ、あまり彼女をイジめないであげて? この子素直だから、ついつい意地悪したくなるのは分かるけど、ね?」


 ツンデレイラが狼狽うろたえだしたところで、ご主人さまからのストップがかかった。

 正直、いきなり引っ叩かれたり人の話を聞かなかったりでけっこう腹にきていたが、今日の所は美人のご主人様に免じてこのくらいにしといてやろう。


「なっ……! か、からかったわね!?」


「何を言うか。いきなり引っ叩かれた分の正当な仕返しだ」


「ご主人さま! 私、コイツ嫌いです!」


「奇遇だな。俺もいきなりハリセンで引っ叩いてくるような偽乳女は嫌いだよ」


「誰が偽乳よ誰がッ!」


 ツンデレイラの髪がザワザワと逆立ち、その周囲に無数の狐火が『轟ッ!』と燃え上がった。

 直後、ツンデレイラが腕を振り下ろすとその動きに合わせて俺に向かい炎の弾幕が殺到する。


「はっ、こんなもんかよ! うりゃりゃりゃりゃりゃ――――っ! 波ぁッ!」


 それらを全て連続霊力弾で相殺しつつ、すぐさま『波ぁッ!』で反撃。


 ツンデレイラは太もものレッグポーチから素早く呪符を抜き取り、取り出したそれを前方へばら撒く。

 五角形に広がった呪符を光の線が結び、五芒星の結界が俺の手から放たれた極光を受け止めた。


 ちっ! 思ったよりガードが堅い! ならコイツでどうだ!


「きゃあっ!?」


 こっそり尻からひねり出したホーミング霊力弾を大きく回り込ませ、ツンデレイラの背中に当てる。

 すると何かの術が解けたのか『ボフンッ!』と煙が出て、ツンデレイラの姿が一瞬見えなくなった。

 風に吹き散らされて煙が晴れると……。


「やっぱり偽乳だったんじゃねーか!」


「はぁ!? ……って、きゃ────っ!!!!」


 不自然な爆乳はどこへやら。

 貧乳を通り越してまな板と言って差し支えない、本来のレイラの姿がそこにあった。

 胸元が大きく開いたメイド服も、中身が消えた今となってはただただ哀れだ。


 ぷるぷると怒りと羞恥に震えながら、スカスカの胸元を押さえてツンデレイラがその場にうずくまる。


「ぶっは! やーいまな板まな板! つるぺた貧乳すっとんとん!」


「ぶっ殺ッ!!!!」


 ビームのように鋭い眼光が『ギンッ!』と俺を睨み返す。ヒエッ……。


「死ねぇ────ッ!!!!」


 直後、辺り一帯を覆いつくすほどの大量の狐火が『轟ッ!』と燃え盛り、俺に向かって矢のような勢いで降り注いできた。

 くそっ! 霊力波じゃこの数はカバーしきれねぇ!? 


「こんなふざけた死に方あってたまるかよッ! 波ぁぁぁ────ッ!!!!」


 相打ち覚悟で放った特大の霊力波と、迫りくる狐火の弾幕。

 お互いの技が直撃しそうになった、まさにその瞬間────!



「双方、そこまで」



 突如現れた執事によって俺の霊力波はいとも簡単に握りつぶされ、あわや直撃しそうだった狐火も、ろうそくの火を吹き消すみたく謎の力にかき消されてしまった。


 七〇過ぎくらいの、豊かな白髪の老紳士だ。


 やせ型だが背筋はしゃんと伸びていて、銀縁のモノクルの下から切れ長の瞳が鋭い眼光を放っている。


「麗羅さん、時と場所を弁えなさい。お客様もあまり従者とばかり戯れて主人を待たせぬようにお願いします」


「「は、はい。すいません……」」


 つ、強い……。何者だ、この爺さん。

 それにしても、まさか俺の霊力波が眉一つ動かさずに握りつぶされるなんて思ってもみなかった。

 やっぱ世の中、上には上がいるんだな。正直、調子に乗ってた。反省。


 張り詰めた空気を変えるように、執事が手を一拍鳴らし、柔和な笑みを浮かべる。


「さあ、ご主人様が車の中でお待ちです。お客様は車へ。麗羅さんは罰としてお客様の自転車をピカピカになるまで磨いて差し上げなさい」


「えーっ!? そんなぁ!」


「えーではありません! お客様に喧嘩を売るメイドなど言語道断! ……それとも、ご主人様直々に『お仕置き』してもらいますか?」


「ひぃっ!? せ、誠心誠意ピッカピカに磨かせていただきます!」


 お仕置きという言葉を聞いて一気に顔を青ざめさせたアホメイドが逃げるように俺の自転車の方へと駆けていった。


「……当家の従者が大変な失礼を」


「ほんとですよ! なんなんですかアイツ!」


「普段はとても素直でいい子なのですが、どうにもご主人様の事となると周りが見えなくなってしまうようで……」


「……まぁ、俺も屋敷丸ごとぶっ壊したのは確かですし。それでおあいこって事で」


「恐れ入ります。さあこちらへ。車内に冷たいドリンクも用意して御座います」


 人当たりの良い笑みを浮かべる老紳士に促されるまま、門の前に停まっていたリムジンに乗り込む。何気に人生初リムジンである。

 車内は適度に冷房が効いていて、照り付ける日差しに火照っていた身体に心地よかった。


「あら、終わったのね。どうだったかしら、うちのメイドは」


 美貌の女主人に招かれ、その向かい側のソファーに座る。

 すげぇ、車の中にソファーがあるぞ。しかもフカフカだ。

 俺が座るのを見計らったかのように、車が静かに発進する。


「お待たせしてすいません。……邪魔が入らなきゃ間違いなく俺が勝ってました」


 結構ギリギリだったけど。なんか悔しいから絶対に言わない。


「あらあら、……これは帰ったらまた()()かしらね」


 一瞬、怒気とも殺気とも違う異様な気配が女主人から立ち昇った……気がした。

 特訓という言葉から感じる濃厚なSの気配。ゾクゾクしちゃう!


「……ドリンクはいかが? ジュースもあるわよ」


「あっ、いただきます」


 冷え込んだ場の空気を誤魔化すように、女主人がワインサーバーから高そうなボトルを一本取り出して、二人分のシャンパングラスに深い赤色の液体が注がれる。

 こ、これは、ジュース……だよな?


「ただのぶどうジュースよ」


 女主人の音頭でグラスを掲げ、ジュースを一口。

 うっま! なにこれうっま!? なんかすっげーお貴族な味がする。

 おもわず「ルネッサーンス!」と言いそうになったのはもちろん内緒だ。


「さて、では改めて自己紹介から始めましょうか。私は臥龍院(がりゅういん)(みこと)。肩書きは色々とあるけど、最近は不動産屋で通してるわ」


「あ、どうも。犬飼晃弘(いぬかいあきひろ)っす。高校生っす。……で、ご本業は?」


「呪術師」


 じゅじゅちゅし。じゃなくて呪術師。そりゃまたなんとも……。


「うふふ、胡散臭いでしょ? まあ、実際やってる事と言えば、(いわ)く付きの物件や宝物(ほうもつ)を安く買い叩いて、無害にしてから人に売るだけのインチキ商売人よ」


 い、インチキ商売人て……。


「もしかして幽霊だらけの霊園の浄化なんかもやってたり?」


「ええ。あそこは私が管理してる霊園なのだけど……最近何故かこの街全体で、幽霊の数が増え続けているのよ」


「それはまた、どうして?」


「原因は不明。この地は元々、太い霊脈が何本も集結してる霊的にとても強い土地ではあるのだけど、こんな事今までになかったわ。彼らに直接聞こうにも皆霊界に還ろうと必死で話にならないし……」


 確かに昨日の奴らも全員「成仏ッ!」とか、「アーメンッ!」とか叫びながら突っ込んでくるだけだったしな。

 あれではとても話を聞くなど不可能だ。

 ともあれ、この街全体で幽霊が激増しているというからには、除霊の仕事も増えてるんだろう。


「……成程。それでスカウトですか」


「私たちみたいに霊を強制的に祓えるほど霊力の強い人間は数がとても少ないの。だから坊やの都合のいい時で構わないから少し力を貸してもらえると助かるのだけど。勿論、働きに見合うだけの報酬も用意するわよ」


 ふむ……。これは中々魅力的なお話なのではなかろうか。

 元々、何となく始めた幽霊退治、もといレベル上げだが、そこに報酬が出るようになればより一層やる気も出るというもの。

 俺の都合も優先してくれるみたいだし、バイト感覚でやってみてもいいかもしれない。


「わかりました。そういう事なら協力させてください」


「ありがとう、助かるわ」


『まもなく到着いたします』


 と、ここで車内に備え付けのスピーカーから執事の声が聞こえ、しばらくすると宣言通り車は滑らかに停車した。

 人生初リムジンもこれでおしまいか……。実に優雅で快適な時間だった。


「さぁ、着いたわ。行きましょう」


 執事がドアを開け、女主人の手を取りエスコートするのに続いて、俺も車から降りる。


 すると、俺は目の前に広がった光景に言葉を失った────



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