貧乳ツンデレ狐巫女メイドとか属性盛りすぎィ!
超久しぶりですが連載再開です
「お前、なんでここに……!?」
「なんでもかんでも、家の庭を荒らされたら普通気付くでしょう?」
油断なくスカウトマンを睨みながら俺の質問に答えるツンデレイラ。
その両脇では熊かと思うほど巨大な二匹の白い狐の霊たちが、牙を剥いて唸り声を上げていた。
戦闘力計測不能。
つい昨日まで俺より低かったのにどうなってやがる!?
稲荷神社に狐の霊、それにあの巫女装束。
おそらくだが、レイラは稲荷神の力を借りているのかもしれない。
だから神社の異変に気付けたし、この領域内でなら本来の力を発揮できるとか、そんなところだろう。
それにしたってメイドで巫女さんとか属性盛りすぎかよ。
欲張りハッピーセットにも程があるだろ!
「ちっ、神憑きか……。意外と早かったじゃないか。けっこう結界術には自信があったんだけど」
「舐めすぎでしょアンタ。自分の力を過信しすぎると破滅するわよ?」
「……ハッ、いまさら失うものなんて何もないさ」
スカウトマンの声色から初めて余裕の色が消えた。
「あっそ。アンタには聞きたいことが山ほどあんのよ。楽に死ねると思わないことね」
「うひ~。痛いのは勘弁だぜ」
「怪人捕縛、急急如律令!」
レイラが懐から呪符を取り出し、指に挟んだそれを勢いよく投げつける。
呪符はあっという間に空中で燃え尽き、次の瞬間、スカウトマンの身体を突き破るように光の鎖が飛び出してその身体を雁字搦めに縛り上げてしまった。
「っ!? ────っ!」
光の鎖で縛られたスカウトマンが逃げようと必死にもがくが、鎖が身体に食い込んでびくともしない。
「無駄よ。心臓以外動かせないようにしたもの。いくら攻撃が効かなくても窒息には耐えられないでしょ?」
「────っ! ────っ!」
え、えげつねぇ……
相手の内側から拘束するなんて、あんなの絶対避けられないじゃん。
間髪入れずレイラが持っていたお祓い棒を正面に構えて呪文を呟いた。
すると地面から黒い腕が何本もぬるりと這い出てきて、スカウトマンの足を掴むとその身体を地面の下へズルズルと引きずり込んでいく。
と、次の瞬間、一陣の風が境内を吹き抜け、風に舞う無数の木の葉がスカウトマンの姿を一瞬だけ覆い隠した。
「なにをやっている」
しかし、瞬きほどの一瞬の間に起こった変化は劇的だった。
スカウトマンの首根っこを掴み、狐面を付けたブレザー姿の女が賽銭箱の上に立っていた。
敵の増援!? 戦闘力は……やっぱり測定不能。
鎖がバラバラに砕け散り、スカウトマンが首を「ゴキリ」と鳴らして手首をブラブラさせる。
「いやーメンゴメンゴ。油断した」
「任務は達成した。帰投するぞ」
任務……? なんのことだ?
けど、俺の知らないところでなんかヤバそうなやつらが蠢いているらしいことだけは、なんとなくわかる。
「ま、俺も『ツバ』はつけたし、今日のところは帰るとしますかね」
「逃がすと思ってるの!?」
「逃げる? 冗談だろ。帰るんだよ、堂々とな」
スカウトマンが腕を無造作に振う。
すると狐面の女子高生とスカウトマンの姿が一瞬で掻き消えてしまった。
「……チッ、逃げられたか。あーもう! 悔しいっ!」
お祓い棒をへし折らんばかりに悔しがるレイラ。
まあ全力を出せる領域内でこうもあっさり逃げられたら悔しいだろう。
ともあれだ。
「おいツンデレイラ」
「なによ!? つーかその呼び方やめなさいってば!」
「ありがとな。おかげで助かった」
「……ふ、ふん。別に、自分の庭を荒らされてムカついただけよ」
ケッ! ホント、素直じゃねぇ女。
「た、助かった……?」
「みたいですね……」
レイラの介入ですっかり空気になっていた二人が、本殿の屋根の上でへにゃへにゃと腰を抜かして座り込む。
「お前ら大丈夫か!? 怪我とかしてねぇか?」
「お、おおおおう! だ、だいじょびらじぇ!?」
「じぇ、じぇんじぇんビビってにゃんかにゃいれしゅ」
「噛み噛みじゃねーか」
ともあれ、無事でよかった。
屋根の上から二人をお米様抱っこで雑に担ぎ下ろすと、レイラが俺たちの顔を見て頭痛をこらえるように頭を抑えた。
「はぁ……。よりにもよってコイツらだなんて、どういう星のめぐり合わせよ……ったく」
「なんのことだよ」
「独り言! ……連れてくしかないか」
「だからなんのことだって!」
「うるっさいわね! いいから黙ってついてきなさい! 死にたくなければね!」
言うや否や、レイラが両手を胸の手前で「パン!」と合わせる。
すると神社の本殿の扉が開き、白い光が溢れだす。
心底嫌そうな顔のレイラに背中を押され、俺たちは光の中へと無理やり押し込まれた。